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「いらっしゃいませ」
「いつものものをください」
久しぶりにやってきた妖精は、この近くに人間がいることを教えてくれた。
「多分ここにもやってきます。...表情が全く変わらなかったの。転んでも風がふいてきても、眉ひとつ動かないのはおかしいような気がして...」
今回のお客様はかなり心を閉ざしているようだ。
「成程。ありがとうございます」
なんとか対策をしておかなければ、相手に寛いでもらうのは難しいだろう。
ハーブを摘み、急いでブレンドティーを作る。
妖精にも物を渡して準備をしていると、やがて大雨の中少女が傘もささずに現れた。
「いらっしゃいませ。お客様、よろしければ浴室をお使いください」
「...結構です」
「しかし、着替えを持っているんでしょう?その鞄に入っているのは、サイズ的に着替えですよね...?
だったら、きちんと体を温めた方がいいと思います。風邪を引いてしまいますから」
「...それじゃあ、お願いします」
浴室の場所を案内してから、洗濯機も使うように伝える。
流石にお客様の...ましてや女性ものをやるわけにはいかない。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
一礼してその場を離れたものの、やはり相手に堅さを感じた。
必要最低限の会話しかしない、恐らく寝ていない少女。
彼女が望むのは一体どんなことなのだろうか。
『表情に出さない人は出そうと思えば出せるけど、表情に出せない人というのは心が踏みにじられている可能性が高い。
...もしそういった相手に無理矢理話を聞けば、大変なことになるから、気をつけるように』
もしこれからおころうとしていることがあの人が言っていたとおりだとしたらどうなるだろう。
もしかすると、何も話してもらえずに終わるのかもしれはい。
だが結局、接客しかできることがなかった。
「ドライヤーはこちらにありますので、ご自由にお使いください」
「...ありがとうございます」
少し大きい音を出しながら少女を熱風が襲う。
今はこうしてゆっくりしてもらうことを最優先しようと考え、飲み物をお出ししようとしたそのときだった。
彼女の体はゆっくり傾き、そのまま床に倒れこむ。
「お客様、大丈夫ですか?」
「へ、平気です。いつものことだから...」
ふらつく体を支えながら、一先ず奥の空き部屋へと案内する。
「今は横になっておやすみくださいませ」
一礼して、一旦部屋を後にする。
彼女の顔色はそんなによくないが、恐らく寝不足が原因だろう。
或いは、どこでも気が抜けない事情があるのか...。
一体どう接するのが正解なのか、残念ながら今はまだ手探り状態だ。
「いつものものをください」
久しぶりにやってきた妖精は、この近くに人間がいることを教えてくれた。
「多分ここにもやってきます。...表情が全く変わらなかったの。転んでも風がふいてきても、眉ひとつ動かないのはおかしいような気がして...」
今回のお客様はかなり心を閉ざしているようだ。
「成程。ありがとうございます」
なんとか対策をしておかなければ、相手に寛いでもらうのは難しいだろう。
ハーブを摘み、急いでブレンドティーを作る。
妖精にも物を渡して準備をしていると、やがて大雨の中少女が傘もささずに現れた。
「いらっしゃいませ。お客様、よろしければ浴室をお使いください」
「...結構です」
「しかし、着替えを持っているんでしょう?その鞄に入っているのは、サイズ的に着替えですよね...?
だったら、きちんと体を温めた方がいいと思います。風邪を引いてしまいますから」
「...それじゃあ、お願いします」
浴室の場所を案内してから、洗濯機も使うように伝える。
流石にお客様の...ましてや女性ものをやるわけにはいかない。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
一礼してその場を離れたものの、やはり相手に堅さを感じた。
必要最低限の会話しかしない、恐らく寝ていない少女。
彼女が望むのは一体どんなことなのだろうか。
『表情に出さない人は出そうと思えば出せるけど、表情に出せない人というのは心が踏みにじられている可能性が高い。
...もしそういった相手に無理矢理話を聞けば、大変なことになるから、気をつけるように』
もしこれからおころうとしていることがあの人が言っていたとおりだとしたらどうなるだろう。
もしかすると、何も話してもらえずに終わるのかもしれはい。
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ふらつく体を支えながら、一先ず奥の空き部屋へと案内する。
「今は横になっておやすみくださいませ」
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彼女の顔色はそんなによくないが、恐らく寝不足が原因だろう。
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