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本当の仲間
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「同じ思いを持っている人たちに、声をかけてみるってことですか?」
「俺はそういうのがいいと思います。話を聞く気がない相手に頑張って説明する時間があるなら、その時間を練習や楽しい演奏をするにはどうすればいいかを考える時間に使ってほしいんです。
音楽にも部活動にも詳しくないけど、一方的に話して終わりな人の相手をすると疲れるだろうから」
少年は不安げな表情を浮かべていたが、やがて何かを決意したようにゆっくり頷く。
「...あの場所は、色々な人の目に留まるまたとない機会です。
でも、合奏というのは心がばらばらだといい音は出ない...それじゃあ意味がないんです」
「集めるのは大変だと思うし、会場を見つけるのも苦戦すると思う。
だけど、全然意見を聞いてくれない人たちと綺麗な音色は奏でられないんじゃないかな?」
少年ははっとした表情で大きく首を縦にふる。
「そうですね。仲間って口だけで言う人たちより、ちゃんと心と心でぶつかれる人たちと演奏がしたい。
色々な人たちに声をかけてみようと思います。会場は小さくなるかもしれないけど、最後になるんだし...もっとみんながやりたい曲を一緒に楽しみたいので」
少年は漸く笑顔を見せた。
ずっと眉に皺がよっていたので心配だったが、今の表情はとても柔らかい。
「俺にできることはあんまりないと思うけど、何か手伝えることはあるかな?」
「万が一外でやろうって話になったり、ライブハウスでってなると、多分気軽に食べられるものがあるといいと思うんです。
何かいいものはありませんか?」
「そうだな...やっぱりフライドポテトかな。大学芋とか唐揚げとか、あとは焼き鳥とかもいいかもしれないね。
多分、箸を使わなくてもいいものの方がいいと思うんだ」
「ありがとうございます。参考になりました」
ポケットに目をやると、砂時計の砂が落ちきっていた。
周りをよく見ている彼ならきっと大丈夫だ。
「どうか、あなたは周りの話を聞けるあなたのままでいてください」
「色々お世話になりました」
「こちらこそ、色々なお話をありがとうございました」
使わなくなったという楽譜を受け取り、一礼して見送る。
沢山練習したのか、自分で書きこんだ跡が残っていた。
こういった印が残るのは少し羨ましい。
1冊の古い本を見つめながら、そんなことを考えていた。
『君にはこれをあげよう。大丈夫、──ならきっと全部作れるようになるよ』
...俺には、まだまだ作り方が分からない料理や理解するのが難しい感情が沢山あります。
「俺はそういうのがいいと思います。話を聞く気がない相手に頑張って説明する時間があるなら、その時間を練習や楽しい演奏をするにはどうすればいいかを考える時間に使ってほしいんです。
音楽にも部活動にも詳しくないけど、一方的に話して終わりな人の相手をすると疲れるだろうから」
少年は不安げな表情を浮かべていたが、やがて何かを決意したようにゆっくり頷く。
「...あの場所は、色々な人の目に留まるまたとない機会です。
でも、合奏というのは心がばらばらだといい音は出ない...それじゃあ意味がないんです」
「集めるのは大変だと思うし、会場を見つけるのも苦戦すると思う。
だけど、全然意見を聞いてくれない人たちと綺麗な音色は奏でられないんじゃないかな?」
少年ははっとした表情で大きく首を縦にふる。
「そうですね。仲間って口だけで言う人たちより、ちゃんと心と心でぶつかれる人たちと演奏がしたい。
色々な人たちに声をかけてみようと思います。会場は小さくなるかもしれないけど、最後になるんだし...もっとみんながやりたい曲を一緒に楽しみたいので」
少年は漸く笑顔を見せた。
ずっと眉に皺がよっていたので心配だったが、今の表情はとても柔らかい。
「俺にできることはあんまりないと思うけど、何か手伝えることはあるかな?」
「万が一外でやろうって話になったり、ライブハウスでってなると、多分気軽に食べられるものがあるといいと思うんです。
何かいいものはありませんか?」
「そうだな...やっぱりフライドポテトかな。大学芋とか唐揚げとか、あとは焼き鳥とかもいいかもしれないね。
多分、箸を使わなくてもいいものの方がいいと思うんだ」
「ありがとうございます。参考になりました」
ポケットに目をやると、砂時計の砂が落ちきっていた。
周りをよく見ている彼ならきっと大丈夫だ。
「どうか、あなたは周りの話を聞けるあなたのままでいてください」
「色々お世話になりました」
「こちらこそ、色々なお話をありがとうございました」
使わなくなったという楽譜を受け取り、一礼して見送る。
沢山練習したのか、自分で書きこんだ跡が残っていた。
こういった印が残るのは少し羨ましい。
1冊の古い本を見つめながら、そんなことを考えていた。
『君にはこれをあげよう。大丈夫、──ならきっと全部作れるようになるよ』
...俺には、まだまだ作り方が分からない料理や理解するのが難しい感情が沢山あります。
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