クラシオン

黒蝶

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ぼろぼろ

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「自分を、消す...?」
話している意味がよく分からず、つい言葉を繰り返してしまう。
目の前の少年は俯きがちに話しはじめた。
「僕には、とんでもなくすごい妹がいたんです。優しくて可愛くて、非の打ち所がない子でした」
「...比べられて育った?」
少年は気丈に振る舞っているが、必死に強がっているように見える。
「ただ、妹は病弱だったんです。だからこそ、両親からの愛情もひとり占めできた」
「何をやっても、ご家族から愛をもらえなかった...そういうことかな?」
彼はただ力なく微笑んだ。
それが肯定を意味することくらいすぐ分かる。
「数ヵ月前、妹は死にました。そのとき僕は少しだけ安心してしまったんです。...最低でしょ?
でも、僕に目を向けてくれると信じてた。向いてほしいっていつもどこかで願ってた」
願ってたということとふりふりの服装...つまり、彼の願いは叶わなかったのだ。
「その日から、僕は妹のようになるよう命令されました。
はきたくもないスカートを強要されて、勉強は常にやらないといけないスポーツもしっかりやらないといけない...。双子の妹の代わりになるように言われたのは、ただ辛かったです」
少年の瞳には覇気がない。
時折やってくる自らの死を望むものと同じ目の色をしているような気がする。
「でもそれも、今日で終わらせます。...僕はただ、僕自身を見てほしかったのに」
鞄から出てきたのはよくない薬だ。
それこそ、飲んでから15分ほど苦しんで死ぬような猛毒...。
『自分という存在を許してもらえなければ、それは死に直結する。だから、相手のいいところをきちんと見つけないといけないよ』
あの人が言っていたことを、これから実行できるだろうか。
「君は君のままでいいんだ。...偽物の愛なんかより、そっちの方がずっと大切なことだよ」
「愛されたことがある人には分からない!僕にはもう、これしか道が残ってないんです。
...お店には迷惑をかけないから邪魔しないでください」
強引に瓶を奪い、目の前で料理してみせる。
「何をして、」
「これは生だと猛毒になりますが、調理法によって解毒できます」
「...健康で生まれたんだからとか言うのはやめてくださいね。元気で生まれてくれればそれでいいなんて嘘だから」
そんな説教をするつもりはない。
元気に生まれたから愛がもらえるわけでもないことはなんとなく理解している。
この身を以てよく知っていると言えないのは残念なことだが、逆も然りだろう。
「...君自身を捨ててまで、偽物の世界に縋りつこうとする人たちの愛がほしいんですか?
それが愛してもらえていると呼べるものなのでしょうか?」
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