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黒蝶

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その他

涙とアイスと・2

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「柚」
「おはよう、おじいちゃん」
おじいちゃんとの暮らしは平和だ。
勿論家事は全部自分でやっているし料理は当番制だけど、全く苦にならない。
宿題だって終わらせたし、なによりあの言葉を言われずにすむのはとてもいい。
「柚はよく手伝ってくれるんだな」
「おじいちゃんと色々するの、楽しい」
「そうか」
おじいちゃんはあまり口数が多い方ではないけど、私が嫌がっていないか必ず確認してくれる。
──だからか。ここにいていいんだって安心できるのは。
「今日は買い物行くか」
「いいの?」
「みっつまでなら好きなもの買っていいぞ」
「ありがとう」
本当は疲れているだろうに、今日もこうして私を連れ出してくれる。
何を買おうかと化粧品や雑貨を見ていると、おじいちゃんが店員さんに何かを尋ねていた。
私に聞かれたくないことかもしれないからと離れていたけど、用が済んだのかかごを持ってこっちに歩いてくる。
「決まったか?」
「こっちは自分で買うから、この本とシャーペン買ってもいい?」
「これだけでいいのか?」
「あとは使っているものがあるから」
すると、おじいちゃんは私が持っていた化粧品もかごに入れるよう言い、そのまま買ってくれた。
「よかったの?」
「みっつまでと言っただろう」
「ありがとう」
食材が入った買い物袋を持つと、おじいちゃんは私のために買ったものを持ってくれた。
こんなふうに誰かと一緒に歩くのは久しぶりで、心まで温まる気がした。


「ほれ」
「開けていいの?」
「ああ」
もらった箱から出てきたのは、クローバーの鍵がついたネックレス。
「綺麗……」
「こういうのが流行りなんだろ?」
店員さんに聞いていたのはこれのことだったのか。
「ありがとう」
自分のためだけの贈り物なんていつ以来だろう。
早速ネックレスを付けて台所に立った。
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