在庫処分

黒蝶

文字の大きさ
上 下
11 / 26
じんわり系

家族

しおりを挟む
「メグちゃん、どうしたの?」
「れんがいないの」
「れん……ああ、あのぬいぐるみね。確かに見てないわ」
近所に住むメグちゃんは、ぬいぐるみの国を作っている。
といっても、本人には人に見えているようだ。
だから私も、その優しい世界があると信じることにしている。
「最後に会ったのはどこ?」
「分からない。昨日寝るときは枕元にいたよ」
「なら、メグちゃんが学校に行ってる間探してみる」
「いいの?」
「勿論」
「ありがとう」
この子の顔を曇らせたくない。
メグちゃんの部屋の隅を調べると、腕がちぎれた状態のれんを見つけた。
ふわふわの猫のぬいぐるみ……どうやったらこんな千切れ方をするのか。
「早く治さないと」
鞄から裁縫道具を取り出し、急いでリボンを仕上げる。
こうすればきっと傷を隠せる。
ご両親の帰りが遅いメグちゃんにとって、れんは唯一心許せる存在だ。
誰にも言えない秘密も話していると笑っていた。
……見つけられてよかった。
「ただいま」
「おかえりなさい。それと……はい」
『メグ、ただいま』
「れん!」
メグちゃんはれんを抱きしめ、ぽろぽろと涙を零す。
「痛いことされてない?」
『うん。お姉さんが治してくれたから平気だよ』
「お姉さんが治してくれたの?」
「うん」
「ありがとう!れん、もう痛くないって」
「そっか」
ぎゅっと抱きしめて頭を撫でている。
「これからもずっと一緒だよ」
『うん!』
私にはれんの声は聞こえていない。
だけど、喜んでもらえたならよかった。
ふたりと一緒に夕飯を食べて、いつもどおり玄関の鍵を閉める。
明るい笑顔で送り出してくれる姿を見て、私まで温かい気持ちになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...