14 / 27
切なめ系
最終地点
しおりを挟む
「温かい飲み物はいかがですか?」
「いただきます」
男は女にマグカップを渡し、向かい側から様子をうかがう。
「ごちそうさまでした。今夜も大変美味しかったです」
「……お粗末さまでした」
女は一気に飲み干し、満面の笑みを浮かべる。
男は無言で席を立ち、静かに手を差し伸べた。
「ありがとうございます」
「……どうしても、行ってしまいますか?」
「はい。あなたに会えたからもういいんです」
「すみません。冗談です」
ふたりの進む先には、電車の降り口。
「お気をつけて」
「ごめんなさい」
「いえ。あなたの願いを叶えるためなら応援します」
「ありがとうございます」
女は一礼して駅に降り立つ。
そんな姿を見送った後、男はその場にしゃがみこんだ。
余命幾ばくもないその身を、ただの寂しがりに見せたまま。
「……上手く笑えたかな?」
季節がひとつ過ぎ去るのさえ耐えられないほど弱っている体を動かし、更に先の駅へ進む。
そこが天寿を全うするための場所──男のさいごの目的地だ。
「いただきます」
男は女にマグカップを渡し、向かい側から様子をうかがう。
「ごちそうさまでした。今夜も大変美味しかったです」
「……お粗末さまでした」
女は一気に飲み干し、満面の笑みを浮かべる。
男は無言で席を立ち、静かに手を差し伸べた。
「ありがとうございます」
「……どうしても、行ってしまいますか?」
「はい。あなたに会えたからもういいんです」
「すみません。冗談です」
ふたりの進む先には、電車の降り口。
「お気をつけて」
「ごめんなさい」
「いえ。あなたの願いを叶えるためなら応援します」
「ありがとうございます」
女は一礼して駅に降り立つ。
そんな姿を見送った後、男はその場にしゃがみこんだ。
余命幾ばくもないその身を、ただの寂しがりに見せたまま。
「……上手く笑えたかな?」
季節がひとつ過ぎ去るのさえ耐えられないほど弱っている体を動かし、更に先の駅へ進む。
そこが天寿を全うするための場所──男のさいごの目的地だ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける
緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。
中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。
龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。
だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。
それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。
そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。
黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。
道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる