在庫処分

黒蝶

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切なめ系

最終地点

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「温かい飲み物はいかがですか?」
「いただきます」
男は女にマグカップを渡し、向かい側から様子をうかがう。
「ごちそうさまでした。今夜も大変美味しかったです」
「……お粗末さまでした」
女は一気に飲み干し、満面の笑みを浮かべる。
男は無言で席を立ち、静かに手を差し伸べた。
「ありがとうございます」
「……どうしても、行ってしまいますか?」
「はい。あなたに会えたからもういいんです」
「すみません。冗談です」
ふたりの進む先には、電車の降り口。
「お気をつけて」
「ごめんなさい」
「いえ。あなたの願いを叶えるためなら応援します」
「ありがとうございます」
女は一礼して駅に降り立つ。
そんな姿を見送った後、男はその場にしゃがみこんだ。
余命幾ばくもないその身を、ただの寂しがりに見せたまま。
「……上手く笑えたかな?」
季節がひとつ過ぎ去るのさえ耐えられないほど弱っている体を動かし、更に先の駅へ進む。
そこが天寿を全うするための場所──男のさいごの目的地だ。
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