ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第46話✓

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「…というわけで、付き合うことになったんだ」
『そうか』
いつも相談に乗ってもらっていたりっ君にだけは報告しておこうと思って、部屋に入ってすぐ連絡した。
『八坂の体調は大丈夫そうなのか?』
「顔色もよくなってたから大丈夫だと思う。家まで送ったしね」
あれから桜雪を家まで送り届けて、また明日と話してわかれた。
『おまえは大丈夫なのか?』
「どういう意味?」
『…いや、なんでもない』
「なにそれ」
言葉を濁すなんてりっ君らしくない。
ただ、それが俺を気遣ってのことなんだろうってことは分かる。
「俺は元気だよ」
『ならいい。何かあったら連絡しろ。いいな?』
「分かった。それじゃあ、」
『みい』
「なに?」
『…くれぐれも無理するなよ』
電話はそこで切れた。
どうしてりっ君があんなことを言ったのか…その答えは、直後に届いたメールで自覚する。
【お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか?
この度、黒川がソロライブを主催することになりました。
恩人であるあなたをゲストに迎えたいと考えているのですが──】
文章をそこまで読んで、持っていたスマホを落としてしまう。
折角楽しい気分で過ごせていたのが台無しだ。
……息が苦しい。
いつも持ち歩いている薬を飲んで30分、なんとか落ち着いた。
しびれを感じる右手を強く握って天を仰ぐ。
「…こんな日になるはずじゃなかったのに」
心が凍てつくのを感じながら、ぼんやり目を閉じる。
こんな状態で明日も片づけを手伝いに行って、上手く笑えるだろうか。
……どんなに気分が落ちこんでいても朝はくる。
「おはよう!…あれ、ネクタイピン新品?」
「うん。普段は校則違反になるからつけられないけど、今なら多少目を瞑ってもらえるかなって…」
桜雪がくれたネクタイピンが輝いて見える。
時々お守り代わりに握りながら、残っていた片づけを終わらせた。
「昨日大変だったのに来てくれて助かったよ」
「大変だったのは俺じゃないから…。けど、後で連絡してみるつもり」
桜雪がどうしているのか気になるし、なんとなく気分転換がしたかった。
「…で、付き合うことになった?」
「なったよ」
「おお…あ、これ俺からプレゼント」
陽向は自分のことみたいに喜んでくれた。
渡されたプレゼントはお菓子で、俺も用意していたものを渡す。
「俺からもプレゼント」
「ありがとう」
寒空の下、友人と別れてバイト先までの道をのんびり歩く。
店についたところで、雪降る町を収めた写真と短いメッセージを送った。
【おはよう。今日は雪が綺麗だね】
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