ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第34話

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「…んじゃ、もう1回確認しておこうと思います」
今日は合同行事の最終確認会議だ。
資料は届けてもらっていたし、訂正もなかったからなんとか間に合わせられた。
書記をさせてもらいながら議事録を完成させていく。
「受付に置くおもちゃってどういうのがいいでしょう?」
「壊れにくい素材ならどんなのでもいいと思うよ。来てくれた人に渡せるものがあるといいんだろうけど、今から用意するのは難しいし…そこは臨機応変ってことにしておこうか」
「備品が足りていなかったんですけど、ホワイトボードのレンタルはどうなりましたか?」
「大丈夫。業者に連絡して、イベント3日前には届くようにしてもらったから」
監査部長さんはすごい。書類を暗記してきているのか、質問されて答えるまでの時間が短かった。
「それじゃ、今日はここまでにしておきます。追加で欲しいものがあれば申し出てください」
なんとかメモをとり終えて部長さんに渡すと、にっこり笑顔で受け取ってくれた。
近くに座っていた穂さんも笑いかけてくれる。
「桜雪ちゃん、お疲れ様。で、陽向」
「なに?もしかして、穂…早くふたりきりになりたいって思ってる?」
ふたりきり…その言葉にどきっとしてしまった。
穂さんの顔が赤くなった気がしたけれど、筆談用のノートを取り出して他のものを片づける。
「な、違…真面目な話をしようと思ったのに、もういい」
「ごめんごめん。それで、何か必要なものでもあった?」
「できれば子どもたちが待つときに使えるように、トランプとか折り紙を多めに用意してほしいんだ。
この余った予算から500円分くらいなら買い足せないかなって…」
「それいいかも。知り合いにおもちゃ屋さんいるからちょっと聞いてみる。八坂さんは欲しいものなかった?」
首を縦にふったものの、訊いてみたいことがあったのを思い出す。
ただ、今質問することはできない。
「それちょっと借りていい?」
ゆっくり頷くと、ノートに何か書いてすぐ返してくれた。
「じゃあ、俺はもう行くから。戸締まり頼んでいい?」
「分かった。彼女さんのところ?」
「うん。これくらいで怒る人じゃないけど、ずっと待たせたら悪いから」
片手をふって出ていく後ろ姿を目に焼きつけて、メモ用紙をよく見てみる。
【穂のことで困りごとがあるならいつでも連絡して】
連絡先と一緒にそんなメッセージが書かれていた。
「桜雪ちゃん、これからバイト?もし時間があるようなら一緒にご飯食べない?」
「【ご迷惑でなければ一緒に食べたいです】」
「決まり。近くならどこがいいかな…」
穂さんは色々調べながら、私が片づけるのを待っていてくれた。
一緒にいると楽しい…楽しいけど、迷惑をかけたくない。
自分で自分が分からなくなりそうで少し怖くなった。
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