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第11話
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「おまたせ。今着ているものはこのかごに入れて、これに着替えて。
俺は向こうの部屋にいるから、終わったら声かけてね」
とにかく一礼することしかできない。
スウェットのようなものをはいてジャージを羽織る。
上着は汚れていたけれど、上の服は汚れていなくてほっとした。
「……」
ぶかぶかのジャージの袖を捲くって、夏霧さんがいる部屋の扉をノックする。
「あ、終わった?ズボン、洗濯しちゃうね」
流石にそれは悪いと思って止めようとしたけど、いいからと笑って洗濯機に入れられた。
右足首が痛くなってきて、近くのテーブルに手をついてしまう。
「そうだった。先に手当てしないと」
夏霧さんは慣れているのか、あっという間にテーピングまでしてくれた。
「…【ありがとうございます】」
「どういたしまして。そうだ、ご飯は…出前でもいい?今から作ってると遅くなっちゃうから」
私が首を縦にふると、広告を何枚か持ってきてくれた。
「色々食べてみて美味しいところを探してるんだけど、この辺に来てまだそんなに経ってないから知らないお店も多いんだ。
桜雪ちゃんはどういうお店が好き?俺は食べられないものは特にないから、好きなものを選んでほしいな」
夏霧さんの優しさを感じながら、そっと1枚の広告を手にとる。
それはテイクアウト専門店のもので、声が出ない私が気軽に行けるような場所ではない。
「【このお店のとんかつ弁当が食べたいです】」
「分かった。それじゃあ俺は焼肉弁当にしようかな」
夏霧さんか連絡してくれている間にお金を用意する。
お礼をするつもりが今日もまた助けられてしまった。
「あと10分くらいでくるみたいだよ。食べて少ししてから家まで送らせて」
そこまでやってもらうわけにはいかない。
そう思っていたのに、心を読まれているような言葉が返ってきた。
「迷惑になるからなんて考えないで。俺は寧ろ桜雪ちゃんに頼られたいんだ。
どう言葉にすればいいか分からないけど、一緒にいると楽しいし…やっぱり、もっと知りたいって思う」
この人は本当に優しい人だ。
とにかく感謝の気持ちを伝えて、また今度お礼をしよう。
「【ありがとうございます。夏霧さんは優しい方ですね】」
「…ねえ。そろそろその夏霧さんっていうのやめてみない?なんだか距離を感じるんだ。画数多いし、ね?」
にこりと笑う彼に、言葉を紡いだメモを見せる。
「【ありがとうございます、穂さん】」
「わ…なんだろ、今すごく嬉しかった。桜雪ちゃんには人を幸せな気持ちにする魔法が使えるんだね」
慌てて首を横にふると、インターホンが鳴り響く。
「受け取ってくるね」
穂さんの笑顔になんだか緊張してしまうけど、彼と話していても苦になっていない。
こんなに楽しく過ごせるのは、沢山気を遣ってもらっているからだろう。
届いたお弁当を食べながら、どんなことをすればお礼になるか考えた。
俺は向こうの部屋にいるから、終わったら声かけてね」
とにかく一礼することしかできない。
スウェットのようなものをはいてジャージを羽織る。
上着は汚れていたけれど、上の服は汚れていなくてほっとした。
「……」
ぶかぶかのジャージの袖を捲くって、夏霧さんがいる部屋の扉をノックする。
「あ、終わった?ズボン、洗濯しちゃうね」
流石にそれは悪いと思って止めようとしたけど、いいからと笑って洗濯機に入れられた。
右足首が痛くなってきて、近くのテーブルに手をついてしまう。
「そうだった。先に手当てしないと」
夏霧さんは慣れているのか、あっという間にテーピングまでしてくれた。
「…【ありがとうございます】」
「どういたしまして。そうだ、ご飯は…出前でもいい?今から作ってると遅くなっちゃうから」
私が首を縦にふると、広告を何枚か持ってきてくれた。
「色々食べてみて美味しいところを探してるんだけど、この辺に来てまだそんなに経ってないから知らないお店も多いんだ。
桜雪ちゃんはどういうお店が好き?俺は食べられないものは特にないから、好きなものを選んでほしいな」
夏霧さんの優しさを感じながら、そっと1枚の広告を手にとる。
それはテイクアウト専門店のもので、声が出ない私が気軽に行けるような場所ではない。
「【このお店のとんかつ弁当が食べたいです】」
「分かった。それじゃあ俺は焼肉弁当にしようかな」
夏霧さんか連絡してくれている間にお金を用意する。
お礼をするつもりが今日もまた助けられてしまった。
「あと10分くらいでくるみたいだよ。食べて少ししてから家まで送らせて」
そこまでやってもらうわけにはいかない。
そう思っていたのに、心を読まれているような言葉が返ってきた。
「迷惑になるからなんて考えないで。俺は寧ろ桜雪ちゃんに頼られたいんだ。
どう言葉にすればいいか分からないけど、一緒にいると楽しいし…やっぱり、もっと知りたいって思う」
この人は本当に優しい人だ。
とにかく感謝の気持ちを伝えて、また今度お礼をしよう。
「【ありがとうございます。夏霧さんは優しい方ですね】」
「…ねえ。そろそろその夏霧さんっていうのやめてみない?なんだか距離を感じるんだ。画数多いし、ね?」
にこりと笑う彼に、言葉を紡いだメモを見せる。
「【ありがとうございます、穂さん】」
「わ…なんだろ、今すごく嬉しかった。桜雪ちゃんには人を幸せな気持ちにする魔法が使えるんだね」
慌てて首を横にふると、インターホンが鳴り響く。
「受け取ってくるね」
穂さんの笑顔になんだか緊張してしまうけど、彼と話していても苦になっていない。
こんなに楽しく過ごせるのは、沢山気を遣ってもらっているからだろう。
届いたお弁当を食べながら、どんなことをすればお礼になるか考えた。
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