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27枚目
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「いいお湯だったね」
「はい」
蓮の腕の傷をつい見てしまったけど、気づかれなかったらしい。
大きなものの他に、小さめのものが見え隠れする。
まるで、自分でつけたような──
「結さん?」
「その傷、もしかして自分でつけたのかなって」
「……すみません。汚いですよね」
「そんなことない。おそろいだなって思ってただけなの」
いつも手首につけているリストバンドを外すと、似たような形状の傷が露わになる。
蓮はかなり驚いた様子だったけど、顔を見ながら笑った。
「自分なんかって思っちゃうよね。だけど他人を傷つける勇気はないからこうするしかない」
「分かります。誰かを傷つけたいわけじゃない。だけど痛みに耐えるにはこうして誤魔化すしかない」
やっぱりこの子、昔の私みたい。
そんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、居場所がなくて自分には何もないという感情は理解できる。
できてしまう。
助けを求めても無駄だった。だからもう求めない。……そう思っていたのに。
「どうせ誰も理解してくれないって思っていたのに、君だけは私を見てくれた。写真を通してもそうだし、この傷もそう。
だから、今こうやって一緒にいられるのがすごく嬉しいんだ」
「僕もです。気味悪がられるだけだと思っていたので」
今この瞬間が生きてきて1番幸せかもしれない。
そんなことを考えながら蓮の髪を乾かす。
こんなときがいつまでもは続かない。
……壊れるくらいなら壊してしまおう。
「はい」
蓮の腕の傷をつい見てしまったけど、気づかれなかったらしい。
大きなものの他に、小さめのものが見え隠れする。
まるで、自分でつけたような──
「結さん?」
「その傷、もしかして自分でつけたのかなって」
「……すみません。汚いですよね」
「そんなことない。おそろいだなって思ってただけなの」
いつも手首につけているリストバンドを外すと、似たような形状の傷が露わになる。
蓮はかなり驚いた様子だったけど、顔を見ながら笑った。
「自分なんかって思っちゃうよね。だけど他人を傷つける勇気はないからこうするしかない」
「分かります。誰かを傷つけたいわけじゃない。だけど痛みに耐えるにはこうして誤魔化すしかない」
やっぱりこの子、昔の私みたい。
そんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、居場所がなくて自分には何もないという感情は理解できる。
できてしまう。
助けを求めても無駄だった。だからもう求めない。……そう思っていたのに。
「どうせ誰も理解してくれないって思っていたのに、君だけは私を見てくれた。写真を通してもそうだし、この傷もそう。
だから、今こうやって一緒にいられるのがすごく嬉しいんだ」
「僕もです。気味悪がられるだけだと思っていたので」
今この瞬間が生きてきて1番幸せかもしれない。
そんなことを考えながら蓮の髪を乾かす。
こんなときがいつまでもは続かない。
……壊れるくらいなら壊してしまおう。
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