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26枚目
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「今日の授業、めっちゃ面白かったね!」
「ね!まさかあの先生があんな発言するとは思わなかった」
そんな会話を聞いて、少しだけ罪悪感を覚える。
学生の本分は勉強だと言われてしまったら、何も言い返せない。
「蓮は買い食いってよくする方?」
「たまに少し食べる程度です」
「なら、ああいうのは?」
アイスクリームの露店だろうか。
見たことがないもので心に刺さった。
どれを買おうか迷っていると、結さんが優しく微笑んだ。
「すみません。こっちのとこっちのアイスをください」
「ありがとうございます」
写真を撮らせてもらえて満足そうにしている彼女は、やはり僕の天使だ。
「どっちがいい?」
「できればバニラがいいです」
「分かった。なら私はこっちにするね」
結さんが見ていた雑誌に抹茶風味のアイスが載っていたのを知っている。
彼女にだって少しでも長く楽しんでほしい。
「美味しいね」
「はい」
食べ終わる頃には学生たちがいなくなっていてほっとした。
「結さんは、アイスが好きなんですか?」
「うん。小さい頃に施設近くのお店の人が持ってきてくれたことがあって、みんなで食べたんだ。
そのとき食べられなかった味を、今こうやって噛み締めてる」
抹茶が好きだってことさえ知らなかった。
写真家の顔に、美味しいものを頬張る顔……そして、死んだ目をしているときの顔。
僕が知らない部分も含めて、その全てが中島結という人を作っているのだろう。
「そろそろ戻ろうか」
「はい」
「ね!まさかあの先生があんな発言するとは思わなかった」
そんな会話を聞いて、少しだけ罪悪感を覚える。
学生の本分は勉強だと言われてしまったら、何も言い返せない。
「蓮は買い食いってよくする方?」
「たまに少し食べる程度です」
「なら、ああいうのは?」
アイスクリームの露店だろうか。
見たことがないもので心に刺さった。
どれを買おうか迷っていると、結さんが優しく微笑んだ。
「すみません。こっちのとこっちのアイスをください」
「ありがとうございます」
写真を撮らせてもらえて満足そうにしている彼女は、やはり僕の天使だ。
「どっちがいい?」
「できればバニラがいいです」
「分かった。なら私はこっちにするね」
結さんが見ていた雑誌に抹茶風味のアイスが載っていたのを知っている。
彼女にだって少しでも長く楽しんでほしい。
「美味しいね」
「はい」
食べ終わる頃には学生たちがいなくなっていてほっとした。
「結さんは、アイスが好きなんですか?」
「うん。小さい頃に施設近くのお店の人が持ってきてくれたことがあって、みんなで食べたんだ。
そのとき食べられなかった味を、今こうやって噛み締めてる」
抹茶が好きだってことさえ知らなかった。
写真家の顔に、美味しいものを頬張る顔……そして、死んだ目をしているときの顔。
僕が知らない部分も含めて、その全てが中島結という人を作っているのだろう。
「そろそろ戻ろうか」
「はい」
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