道化師より

黒蝶

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11枚目

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あれから少しだけ変わったことがある。
「中……結さん」
「こんにちは蓮。今日も会えてよかった」
まず、名字で呼ぶのはやめてほしいとお願いした。
どうしても距離を感じてしまうからというのと、周囲の人間に見られたときよそよそしさがあると説明できない気がしたから。
「写真、撮ってもいい?」
「はい」
2枚撮らせてもらって保存する。
それからすぐ手を伸ばした。
「今日はとんかつを用意したんだけど、食べに来ない?」
「……行きたいです」
もうひとつの変化は、一緒に夕飯を食べる取り決めをしたこと。
独りで食べないこともあると聞いたため、せめて一緒にいる時間くらいは寛いでほしいと思った。
「家の人達は帰り遅いの?」
「はい。もしかしたら帰らないかもしれません」
家族3人で出掛けることが多いんだと、寂しそうに答えてくれた。
この子の周りにまともな大人はいない。……こんなことしかできない私も含めて。
「じゃあ、もし帰ってこなかったら明日はお泊り会しようよ。仕事、早く片付く予定だから」
「いいんですか?」
「勿論。あ、できればご飯を作っておいてもらえたら嬉しい……かな」
「分かりました」
この子、料理もできるのか。
前回来てくれたときは洗濯をしてくれたし、本当にありがたい。
もう少し話していたいけど、今は仕事場にも戻らなければならない。
「また後で」
「はい。また……」
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