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9枚目
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「父親に突き飛ばされてできた傷です」
薄々感じてはいたけど、やっぱり訳ありなんだ。
ここで言葉を挟んだら消えてしまいそうな気がして、蓮の言葉の続きを待つ。
「両親は離婚しました。僕は父親に引き取られ、母親との面会は5年ほど前に途切れたきりです。
父とは生活が安定するまでの生活だと思っていました。……だけど先日、新しい家族を連れた母親を見かけました」
笑顔を保とうとしているけど、溢れる涙を止められないようだ。
「父は再婚して、家には新しい母親と浮気の結晶がいます」
「兄弟ってこと?」
「腹違い、ということになるんでしょうね。それを知ったとき、父親に詰め寄ったんです。
そのとき突き飛ばされ、この傷ができました」
「学校は?多分通ってるんだよね?」
「痣のことを知られ、中学の頃から執拗な嫌がらせを受けています。
高校は中学から遠い場所にしたのに、また痣のことがバレて……。調子が悪いとき、腕に力が入らないんです」
時折見せていた、手をぐーぱーする仕草。
あれは助けを求めている叫びだったのかもしれない。
「母と再会する日を楽しみに生きてきました。だけど、それももう二度とない。こんな化け物、気味悪いですよね。母親だってきっとそうだ。
だから僕は、もういいって思った。生きている意味も価値も、何もない。……これでも中島さんに会える時間だけが幸せでした。だから、この幸せを噛み締めながら終わりたいって思ったんです」
この子は世界の深淵を知ってしまった。
助けを求めても無駄、隠そうとしても知られてしまう。
この子の手札は、私より悪い。
気づいたときには抱きしめていた。
「ごめん。私、何も知らなかった」
薄々感じてはいたけど、やっぱり訳ありなんだ。
ここで言葉を挟んだら消えてしまいそうな気がして、蓮の言葉の続きを待つ。
「両親は離婚しました。僕は父親に引き取られ、母親との面会は5年ほど前に途切れたきりです。
父とは生活が安定するまでの生活だと思っていました。……だけど先日、新しい家族を連れた母親を見かけました」
笑顔を保とうとしているけど、溢れる涙を止められないようだ。
「父は再婚して、家には新しい母親と浮気の結晶がいます」
「兄弟ってこと?」
「腹違い、ということになるんでしょうね。それを知ったとき、父親に詰め寄ったんです。
そのとき突き飛ばされ、この傷ができました」
「学校は?多分通ってるんだよね?」
「痣のことを知られ、中学の頃から執拗な嫌がらせを受けています。
高校は中学から遠い場所にしたのに、また痣のことがバレて……。調子が悪いとき、腕に力が入らないんです」
時折見せていた、手をぐーぱーする仕草。
あれは助けを求めている叫びだったのかもしれない。
「母と再会する日を楽しみに生きてきました。だけど、それももう二度とない。こんな化け物、気味悪いですよね。母親だってきっとそうだ。
だから僕は、もういいって思った。生きている意味も価値も、何もない。……これでも中島さんに会える時間だけが幸せでした。だから、この幸せを噛み締めながら終わりたいって思ったんです」
この子は世界の深淵を知ってしまった。
助けを求めても無駄、隠そうとしても知られてしまう。
この子の手札は、私より悪い。
気づいたときには抱きしめていた。
「ごめん。私、何も知らなかった」
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