道化師より

黒蝶

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8枚目

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「……お母さん?」
帰り道、写真で見るだけになっていた母を見つけて追いかける。
データに残ったままの姿で元気なのを確認する。
「おまたせ!早く帰ろう」
「お母さん、ただいま」
「おかえり。お父さんのいうこと、ちゃんと聞いた?」
「うん!」
「すごくいい子にしてたよ」
……そうか。そうなんだ。
僕を置いていったのは、生活が大変だからじゃない。
僕という子供が邪魔になったからなんだ。
感情のままに持っていた写真を破り捨てる。
【落ち着いたら会いに行くから待ってて。約束よ】
……嘘つき。子供の僕を騙したんじゃないか。
ますます生きている理由がなくなった。
なんだ、これでよかったんじゃないか。
「……あそこでもいいかな」
自分のさいごの場所を考えるのが楽しくてしかたない。
それしかなくならない楽しみがない。


翌日、誰も来ないことを確認して屋上のフェンスに足をかける。
の空がとても綺麗で今しかないと思った。
だが、飛びこえようとした瞬間誰かに腕を掴まれる。
「危ないよ」
「今日は来ない日じゃなかったんですか?」
中島さんは息を切らしながら僕の腕を掴む。
「もう疲れたんです」
僕はみんなみたいに上手く息ができない。
どこにも居場所なんてない。
誰も僕のことなんて見ていないだろうに。
「なら、君が疲れた理由を聞かせてくれない?」
「え?」
「私たちはまだ、お互いのことを名前くらいしか知らない。
だから、もうちょっと蓮のことを教えてほしいって思ったんだ。その腕の傷のことも」
知られていたなんて思わなかった。
少し迷ったが、どうせ飛ぶつもりだったんだ。
話してからでも遅くないだろう。
「……この傷、小さい頃にできたんです」
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