道化師より

黒蝶

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プロローグ

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この世界は絶望に満ちている。
どれだけ頑張ったところで変えられないものがある。
どれだけもがいても埋められないものがある。
「死んじゃえば?」
「……」
この人たちはどれくらい本気で言っているんだろう。
本気だったとして、どうしてここまで言われないといけないんだろう。
「なあ、無視すんなよ!」
「………………して」
「あ?」
「じゃあ、今すぐ殺してください」
こんな返しをすると思っていなかったのか、周囲にいた人間たちは全員沈黙した。
なんて呆気ないんだろう。
自分の言葉に責任を持てないなら言わなければいいのに。
僕がここにいる意味なんて何もない。
生きる価値なんてない。
……この苦しみは、誰とも分かりあえることなく終わるのだから。
さっさとその場を離れ、唯一の友だちを抱きしめる。
「もうそろそろいいかな。いいよね?」
僕なりにもがいてみたつもりだったが、何も実ることなく終わった。
……そんなことはどうでもいい。
出てきてしまった教室を思い浮かべながら笑顔を作る。
これで騙されてくれるならそれでいい。
もう何も望まない。
だからひとつだけ。
──僕に安らかな眠りをください。
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