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第27章『裏取引』
番外篇『ふたりの露と秋明り』
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「あの、私でよければ手伝いましょうか?」
《いいのかい?》
「はい!困っている人をほうっておくわけにはいきませんから。ね、ふたりとも」
祭りに来て、突然手伝いの申し出をする主様に驚いた。
初代以外にこんな主を見たことがなかったからだ。
《それでは、私たちで店番をします》
「ありがとう。よろしくね」
夜紅から聞いてはいたけれど、本当にこの方の霊力は強い。
そして、本人には自覚がないようだ。
《倉庫に在庫を取りに行くのを手伝ってもらえるかい?》
「はい!」
……それからどれくらい時が流れただろう。
《いらっしゃいませ》
《勘定はそこへ置いていってくれ》
お店がひと段落したところで、白の様子を見る。
なんだか以前より逞しくなったような、感情の変化が分かりやすくなったような…。
これが今の主様のお力なのかもしれない。
《食べないのか?》
《クレープ、というものでしたね。こんなにも可愛らしい食べ物があったなんて…》
書物で知った気になっていたけれど、やはり実際見ないと分からないことも多い。
《主様をひとりにしてよかったのですか?》
《もし狙われたとして、これだけ賑わっている場所で戦えると思うか?》
《それもそうですね》
倉庫からなかなか戻ってこない主様が心配になるけれど、この感情はかなり久しぶりに抱いたもので不思議な感覚に陥る。
《どうした?》
《少し、昔のことを思い出しただけです。それと、甘くて柔らかいなと思いまして…》
《……そうか》
白は無愛想にしていたけれど、やはり私が知る彼と変わっていない。
《白は素敵な主様に出会えたんですね》
《それはおまえもだろ。…今まで何もできなくて、本当に悪かった》
《何故あなたが謝るのです?私だって、あなたを助けられませんでした》
白は以前の下郎に手酷く捨てられた。
《いいのかい?》
「はい!困っている人をほうっておくわけにはいきませんから。ね、ふたりとも」
祭りに来て、突然手伝いの申し出をする主様に驚いた。
初代以外にこんな主を見たことがなかったからだ。
《それでは、私たちで店番をします》
「ありがとう。よろしくね」
夜紅から聞いてはいたけれど、本当にこの方の霊力は強い。
そして、本人には自覚がないようだ。
《倉庫に在庫を取りに行くのを手伝ってもらえるかい?》
「はい!」
……それからどれくらい時が流れただろう。
《いらっしゃいませ》
《勘定はそこへ置いていってくれ》
お店がひと段落したところで、白の様子を見る。
なんだか以前より逞しくなったような、感情の変化が分かりやすくなったような…。
これが今の主様のお力なのかもしれない。
《食べないのか?》
《クレープ、というものでしたね。こんなにも可愛らしい食べ物があったなんて…》
書物で知った気になっていたけれど、やはり実際見ないと分からないことも多い。
《主様をひとりにしてよかったのですか?》
《もし狙われたとして、これだけ賑わっている場所で戦えると思うか?》
《それもそうですね》
倉庫からなかなか戻ってこない主様が心配になるけれど、この感情はかなり久しぶりに抱いたもので不思議な感覚に陥る。
《どうした?》
《少し、昔のことを思い出しただけです。それと、甘くて柔らかいなと思いまして…》
《……そうか》
白は無愛想にしていたけれど、やはり私が知る彼と変わっていない。
《白は素敵な主様に出会えたんですね》
《それはおまえもだろ。…今まで何もできなくて、本当に悪かった》
《何故あなたが謝るのです?私だって、あなたを助けられませんでした》
白は以前の下郎に手酷く捨てられた。
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