夜紅譚

黒蝶

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第27章『裏取引』

第246話

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一つ目から聞いた場所へ足を踏み入れると、かなり酷いにおいがした。
「こいつを倒せばいいんだな?」
「ああ。それが条件だって」
瞬に茜を預け、先生とふたりで周囲を探索する。
「岡副たちには声をかけなかったのか?」
「本当は先生たちにも言わずにひとりでどうにかするつもりだったんだけど、厳しそうだと思ったんだ。…ごめん」
「俺はかまわない。あいつも楽しそうにしていたし、問題ないだろう」
先生は様々な道具を持っていて、それが先程の言葉が事実であることを物語っていた。
「先生もはしゃぐんだな」
「そんなわけじゃない。あいつが持てって言うからやっただけだ」
おもちゃの剣を背負い、般若面の左半分をかぶったまま慎重に進む先生は勇者のようだ。
巨大な角が目に入り、近くの岩場に身を隠す。
「…ここだな」
《アア、なント心地良イ…》
半分狂ったような気配に息を呑む。
どうやら、青い薔薇の効果が悪い方に出てしまったようだ。
「使い方を間違えたな」
「間違えたどころじゃなさそうな気がするんだけど…。どれくらい喰らったらああなるんだ?」
「推定50本以上といったところか」
青い薔薇のエキスは珍しいだけじゃない。
使いようによっては猛毒になる。
だから一つ目にも使用用途を訊かれたのだろう。
「どこから攻めようか」
「あのタイプは、角が弱点であると同時に触れられただけで怒りをぶつけてくる」
「あの角、折ったらもう生えてこないのか?」
「どうだろうな。だが、あの鹿のような角が夜市に並んでいるのを見たことがある」
「高く売れるし一石二鳥ってことか」
あまりに野蛮な内容の会話に苦笑しつつ、どうにか気を引く方法を考える。
今宵は満月、私の力が1番弱まる日だ。
「先生はここでトラップを作っててくれ」
「それはかまわないが、」
先生の言葉を最後まで聞かずに更に近づくと、巨大な妖は攻撃を仕掛けてくることもなくそっぽを向いた。
このまま近づければなんとかなると思ったが、流石に甘かったようだ。
足元の小枝を踏んだ瞬間、拳が飛んできた。
既のところで避けきり、少し距離をとる。
《誰だおマエ!?》
「この場所の治安を護りに来た。これ以上街を荒らすなら出ていってもらえないだろうか?」
当然こんな話に乗ってくれるような相手ではなく、勢いよく拳が飛んできて体が宙を舞う。
いつもの相手より動きが速い。
持っていた水を周りに散らして撹乱する。
《どコニ消えタ…》
やはり目がよく見えていないようだ。
音をたてずに弓を組み立てるのは難しい。
「…どうしたものか」
先生が罠をはり終わるまで、どうにか逃げ切るしかない。
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