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第26章『新たな露』
第232話
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彼女の涙を止められるのはきっと私じゃない。
「白露、間違いないか?」
遅れてやってきた白露に目を向け問いかけると、真っ青な顔で少女を見つめていた。
《助けテ、くだサい》
《…何故そんな姿をしている?あの男はどうした?》
《私、モう…》
私に刀を向けて襲いかかっていた彼女の体を、白露は後ろから抱きしめた。
《悪かった》
腕に瘴気が絡みつくのもかまわず、白露はひたすら抱きしめ続けていた。
すると、彼女ははっとしたように白露の方へ首を向ける。
《……白?》
そう言葉を発すると同時に彼女の体はどんどん薄くなっていく。
《黒!》
白露が叫んだときにはもう姿が見えなくなっていた。
「…白露、ごめん」
《何故謝る?俺が無力なのが悪いのだ。あれだけ救いを求めているのに、何もできていない》
白露の悲痛な叫びを聞いて、ますます申し訳なくなる。
「あの子はおまえに助けを求めた。…どうしたい?」
《俺は…》
「口下手な私だけじゃ引き出せないか」
《どういう意味だ》
「…聞いていたんだろう、みんな。
それと先生。穂乃を先生の気配で隠してふたりでそこにいるの、ばればれだから」
先生が息を吐くと同時に、穂乃が目を潤ませてこちらを見つめていた。
《何故…》
『悪い!聞くつもりじゃなかったんだけど、通信設備の点検をしてたら聞いちゃったっていうか…』
「陽向たちがわざとじゃないことは分かってる。先生は瞬から聞いて来たんだろ?」
「茜が狙われているなら相当な手練れだろうと思ってな」
…半分嘘だ。
そんな強い敵がいるであろう場所に、他の誰かを連れてくることはない。
「白露」
《…なんだ》
「私も一緒に頑張るから、さっきの人を助けよう!」
《しかし、》
「私、霊力強いからきっと大丈夫!白露のことだって戻せたんだから、あの人のこともきっと戻せるよ。
それに…助けてって言うのは、すごく勇気がいることなんだよ?放っておくことなんてできない」
白露は困ったような表情をしていたが、恐る恐る穂乃に尋ねた。
《…俺の願いを叶えてくれるのか?》
「白露が望むなら私もちゃんと手伝いたい。あの人のこと、一緒に助けよう」
穂乃が伸ばした手を掴んだ白露は小さく呟く。
《こういったものを願いと呼ぶのか》
「ずっと会いたがってただろ?」
《…気づいていたのか》
「見ていてなんとなく」
対の式がいるとは予想していなかったが、短冊に願ったのもそのこと関連なのではと密かに思っていた。
「夜までに対策をたてよう。一旦この校舎に来たってことは、夜にもう一度現れる可能性が高い」
《…了解した》
幸い、今目立って蔓延っている噂はジャック・オ・ランタンのものだけだ。
寧ろ今対処しておかなければ噂に呑まれるかもしれない。
……それだけはどうしても避けたかった。
「白露、間違いないか?」
遅れてやってきた白露に目を向け問いかけると、真っ青な顔で少女を見つめていた。
《助けテ、くだサい》
《…何故そんな姿をしている?あの男はどうした?》
《私、モう…》
私に刀を向けて襲いかかっていた彼女の体を、白露は後ろから抱きしめた。
《悪かった》
腕に瘴気が絡みつくのもかまわず、白露はひたすら抱きしめ続けていた。
すると、彼女ははっとしたように白露の方へ首を向ける。
《……白?》
そう言葉を発すると同時に彼女の体はどんどん薄くなっていく。
《黒!》
白露が叫んだときにはもう姿が見えなくなっていた。
「…白露、ごめん」
《何故謝る?俺が無力なのが悪いのだ。あれだけ救いを求めているのに、何もできていない》
白露の悲痛な叫びを聞いて、ますます申し訳なくなる。
「あの子はおまえに助けを求めた。…どうしたい?」
《俺は…》
「口下手な私だけじゃ引き出せないか」
《どういう意味だ》
「…聞いていたんだろう、みんな。
それと先生。穂乃を先生の気配で隠してふたりでそこにいるの、ばればれだから」
先生が息を吐くと同時に、穂乃が目を潤ませてこちらを見つめていた。
《何故…》
『悪い!聞くつもりじゃなかったんだけど、通信設備の点検をしてたら聞いちゃったっていうか…』
「陽向たちがわざとじゃないことは分かってる。先生は瞬から聞いて来たんだろ?」
「茜が狙われているなら相当な手練れだろうと思ってな」
…半分嘘だ。
そんな強い敵がいるであろう場所に、他の誰かを連れてくることはない。
「白露」
《…なんだ》
「私も一緒に頑張るから、さっきの人を助けよう!」
《しかし、》
「私、霊力強いからきっと大丈夫!白露のことだって戻せたんだから、あの人のこともきっと戻せるよ。
それに…助けてって言うのは、すごく勇気がいることなんだよ?放っておくことなんてできない」
白露は困ったような表情をしていたが、恐る恐る穂乃に尋ねた。
《…俺の願いを叶えてくれるのか?》
「白露が望むなら私もちゃんと手伝いたい。あの人のこと、一緒に助けよう」
穂乃が伸ばした手を掴んだ白露は小さく呟く。
《こういったものを願いと呼ぶのか》
「ずっと会いたがってただろ?」
《…気づいていたのか》
「見ていてなんとなく」
対の式がいるとは予想していなかったが、短冊に願ったのもそのこと関連なのではと密かに思っていた。
「夜までに対策をたてよう。一旦この校舎に来たってことは、夜にもう一度現れる可能性が高い」
《…了解した》
幸い、今目立って蔓延っている噂はジャック・オ・ランタンのものだけだ。
寧ろ今対処しておかなければ噂に呑まれるかもしれない。
……それだけはどうしても避けたかった。
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