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第26章『新たな露』
第231話
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「相棒がいたってことか?」
私の問いに白露は小さく頷く。
いくら契約があるとはいえ、何故そこまで劣悪な状況で狂わずにいられたのか疑問だった。
その答えを、これからの白露の話で知ることになるだろう。
《契約の本代には世話になったが、それ以降の人間はくだらない。…それでもあいつは、人間を攻撃すべきでないと俺を止めた》
「その子はどうなったんだ?」
《あいつは俺と違って霊力を喰わないからな。…今も捕らえられているだろう》
時折見せる寂しげな様子もぼんやり月を眺める姿も、対の式について思い出していたのかもしれない。
「どうしたい?」
《…俺が決めていいのか?》
「話を聞く限り、その式はいい子でいただけで逃げたがってるように思う。助けに行きたいなら私にも手伝わせてほしい」
《…あいつは自由になれたら海が見たいと話していた。だが、もしあいつが堕ちていたら…》
「相手の状況が分かるのか?」
対の式はシンクロしていることもある。
何かを感じるから白露が焦っているのかもしれない。
《この星光刀はあいつのものと対になっている。黒い刀身と鞘…それと、姿も黒い》
「その刀、星光刀っていうんだな」
《…あいつが持っているのは月闇刀、闇のなかに一筋の光を灯すような一撃を放つ。だが、本質は護りに特化している》
星光刀と月闇刀…やはり名前からして対になっている。
「どこにいるか分かるか?」
《…最近、気配が近づいたのを感じた》
「捨てられた可能性があるってことか?」
白露は力なく頷くばかりで、とても悲しそうにしている。
だが、他に気になることがあった。
「…その子って、あの子か?」
《あれは…》
生徒に近づいている邪気。
あの量は明らかに人間じゃない。
「ちょっといってくる」
いつの間にか生徒から離れたそれは、真っ直ぐ瞬の方へ走り出した。
「詩乃ちゃん?」
「おはよう。それと、彼女とは私が話す」
瞬の胸ポケットにいる茜を指さしながら、相手ははっきり言った。
《ウ、アア……逃げテ、くだサイ》
泣きながら刀を抜く彼女に何ができるだろうか。
朝に出し切れる力は少ない。
まだ傷が痛むし、無理をすれば耐えられないだろう。
…それでも。
「早く行け、瞬!先生のところまで逃げろ」
瞬が走り出すと同時に、その刃を札で止める。
《持ち帰ル?…私にハデきまセん》
「止まってくれ。じゃないと、おまえを傷つけることになる」
彼女の体を覆う邪気が濃くなり、胸を押さえて苦しみはじめた。
《お願い、しマス。……タスケテ》
私の問いに白露は小さく頷く。
いくら契約があるとはいえ、何故そこまで劣悪な状況で狂わずにいられたのか疑問だった。
その答えを、これからの白露の話で知ることになるだろう。
《契約の本代には世話になったが、それ以降の人間はくだらない。…それでもあいつは、人間を攻撃すべきでないと俺を止めた》
「その子はどうなったんだ?」
《あいつは俺と違って霊力を喰わないからな。…今も捕らえられているだろう》
時折見せる寂しげな様子もぼんやり月を眺める姿も、対の式について思い出していたのかもしれない。
「どうしたい?」
《…俺が決めていいのか?》
「話を聞く限り、その式はいい子でいただけで逃げたがってるように思う。助けに行きたいなら私にも手伝わせてほしい」
《…あいつは自由になれたら海が見たいと話していた。だが、もしあいつが堕ちていたら…》
「相手の状況が分かるのか?」
対の式はシンクロしていることもある。
何かを感じるから白露が焦っているのかもしれない。
《この星光刀はあいつのものと対になっている。黒い刀身と鞘…それと、姿も黒い》
「その刀、星光刀っていうんだな」
《…あいつが持っているのは月闇刀、闇のなかに一筋の光を灯すような一撃を放つ。だが、本質は護りに特化している》
星光刀と月闇刀…やはり名前からして対になっている。
「どこにいるか分かるか?」
《…最近、気配が近づいたのを感じた》
「捨てられた可能性があるってことか?」
白露は力なく頷くばかりで、とても悲しそうにしている。
だが、他に気になることがあった。
「…その子って、あの子か?」
《あれは…》
生徒に近づいている邪気。
あの量は明らかに人間じゃない。
「ちょっといってくる」
いつの間にか生徒から離れたそれは、真っ直ぐ瞬の方へ走り出した。
「詩乃ちゃん?」
「おはよう。それと、彼女とは私が話す」
瞬の胸ポケットにいる茜を指さしながら、相手ははっきり言った。
《ウ、アア……逃げテ、くだサイ》
泣きながら刀を抜く彼女に何ができるだろうか。
朝に出し切れる力は少ない。
まだ傷が痛むし、無理をすれば耐えられないだろう。
…それでも。
「早く行け、瞬!先生のところまで逃げろ」
瞬が走り出すと同時に、その刃を札で止める。
《持ち帰ル?…私にハデきまセん》
「止まってくれ。じゃないと、おまえを傷つけることになる」
彼女の体を覆う邪気が濃くなり、胸を押さえて苦しみはじめた。
《お願い、しマス。……タスケテ》
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