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第25章『アイス・グラウンド』
第222話
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「え、そうなんですか!?」
「間違いない」
私の言葉に先生は頭を抱えた。
「ほぼ確定だ。夕方調べていたら、この学年の生徒が卒業後次々と不審死したり行方不明になっているらしい」
「いじめの加担度合いで変わっているのかもしれないな」
だが、それならそれで問題がある。
「主犯がふたり生き残ってるの、偶然だと思うか?」
「どういうことですか?さっきから話が見えないんですけど…」
陽向に噛み砕いて説明すると、渋い顔でアルバムを見つめる。
「つまり、下衆野郎が原因で怒り狂ってるってことですね」
「そういうことになるな。ただ、俺は当時この学年に関わっていないから詳しいことはよく分かっていない」
「…どのみち最悪ですね。けど、ひとつ知りたいことがあります」
「何か引っかかることでもあったのか?」
陽向は些細なことかもしれないと前置きして疑問を口にした。
「体育祭にそこまで熱量を持っていた理由、全然分からなくないですか?」
言われてみればそうだ。
学校行事にあまり参加していなかったからかもしれないが、他人を害してしまうほどの力を持った理由はそれだけなんだろうか。
「他のことが溜まって体育祭で爆発したのかもしれない」
「……分かったかもしれない。何故今になって現れたのか」
「え!?」
「白川さんという人、お姉さんがいたんじゃないか?今穂乃のクラスに実習に来ている先生の名前だ。
それと…もし生き残っている主犯が結婚しているとしたら、名字が変わっていてもおかしくない」
先生は察したようにはっとした顔でこちらを見つめる。
まだ確信したわけじゃないが、仮説を口にした。
「加害生徒の生き残りは、結婚して子どもがいるんじゃないか?」
「そっか、だから今になって積もった恨みが今になって爆発したってことですね!」
もしこの仮説が合っているなら、お姉さんを護るためというのもあるのかもしれない。
半暴走状態でとどまっているならなんとか助けられないだろうか。
「先生、場所は特定できそうか?」
「分からない。ただ…おそらく、力が弱まりつつある」
どうにか成仏に持っていくのが先か、噂に呑まれるのが先か。
「明日には脚色された噂が出回りはじめるはずだ。いつもみたいに時間をかけてはいられないぞ」
「俺、桜良のところへ行きます。ついでに情報探ってきますね」
「頼む」
もう時間がない。
朝になるのを待って、中学棟へ向かった。
「白川先生、おはようございます。少し話を聞かせてもらえませんか?」
「私はかまわないけれど…あなたは?」
「監査部の者です。妹のこよみさんについて話を聞かせてほしいんです」
「間違いない」
私の言葉に先生は頭を抱えた。
「ほぼ確定だ。夕方調べていたら、この学年の生徒が卒業後次々と不審死したり行方不明になっているらしい」
「いじめの加担度合いで変わっているのかもしれないな」
だが、それならそれで問題がある。
「主犯がふたり生き残ってるの、偶然だと思うか?」
「どういうことですか?さっきから話が見えないんですけど…」
陽向に噛み砕いて説明すると、渋い顔でアルバムを見つめる。
「つまり、下衆野郎が原因で怒り狂ってるってことですね」
「そういうことになるな。ただ、俺は当時この学年に関わっていないから詳しいことはよく分かっていない」
「…どのみち最悪ですね。けど、ひとつ知りたいことがあります」
「何か引っかかることでもあったのか?」
陽向は些細なことかもしれないと前置きして疑問を口にした。
「体育祭にそこまで熱量を持っていた理由、全然分からなくないですか?」
言われてみればそうだ。
学校行事にあまり参加していなかったからかもしれないが、他人を害してしまうほどの力を持った理由はそれだけなんだろうか。
「他のことが溜まって体育祭で爆発したのかもしれない」
「……分かったかもしれない。何故今になって現れたのか」
「え!?」
「白川さんという人、お姉さんがいたんじゃないか?今穂乃のクラスに実習に来ている先生の名前だ。
それと…もし生き残っている主犯が結婚しているとしたら、名字が変わっていてもおかしくない」
先生は察したようにはっとした顔でこちらを見つめる。
まだ確信したわけじゃないが、仮説を口にした。
「加害生徒の生き残りは、結婚して子どもがいるんじゃないか?」
「そっか、だから今になって積もった恨みが今になって爆発したってことですね!」
もしこの仮説が合っているなら、お姉さんを護るためというのもあるのかもしれない。
半暴走状態でとどまっているならなんとか助けられないだろうか。
「先生、場所は特定できそうか?」
「分からない。ただ…おそらく、力が弱まりつつある」
どうにか成仏に持っていくのが先か、噂に呑まれるのが先か。
「明日には脚色された噂が出回りはじめるはずだ。いつもみたいに時間をかけてはいられないぞ」
「俺、桜良のところへ行きます。ついでに情報探ってきますね」
「頼む」
もう時間がない。
朝になるのを待って、中学棟へ向かった。
「白川先生、おはようございます。少し話を聞かせてもらえませんか?」
「私はかまわないけれど…あなたは?」
「監査部の者です。妹のこよみさんについて話を聞かせてほしいんです」
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