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第23章『飛べない雛鳥』
第206話
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「え、なんですかその珍獣!?」
元気にばたばた動き回る姿を見て、陽向は驚いた様子で観察している。
「珍獣というか…まあ、珍獣ってことになるのか」
先生が授業をしている間、一旦私が面倒を見ることにしたのだ。
さっき起きたばかりなのに、目を離すと危なっかしい。
《??》
机から落ちそうになった体を受け止めると、陽向が教えてくれた。
「桜良に聞いてきたんですけど、元々は鳥の妖の一族だったみたいです。
それが色々な場所で派生して、鬼やら鹿やら魚やら…沢山の種族に紛れて暮らすようになったみたいです」
「そうせざるを得なかった理由があったってことか」
ばらばらに暮らさなければ助からないほどの事情とはなんだろう。
《ん?》
「そういえば、この紙におまえの名前の候補が書いてある。これがいいってものはあるか?」
先生が書いた半紙を並べると、とてとて歩いて片方に乗った。
「分かった。それなら今日からおまえの名前は茜だ」
《…ん》
「この子、んだけで意思疎通とろうとしてるんですね」
「もしかすると、まだそれ以外上手く話せないのかもしれない」
相手はマスコットサイズなのだ、小さな子どもくらいの知能でも不思議ではない。
「先生たちにも説明しておかないとまずいですよね」
「先生が知っていることと照らし合わせる必要がありそうだな」
全員が揃うのを待って、小さな妖こと茜の話をすることになった。
「蒼より茜の方がしっくりきたんだね」
「そうらしい。それで、茜の種族についてだけど──」
話そうとした瞬間、新校舎から爆発音がして硝子が飛び散った。
嫌な予感がして逃げ惑う生徒と反対方向へ走ると、うずくまっている人影がある。
「白露!」
不安そうに声をあげる穂乃に何も言葉を返せないほど傷が痛むようだ。
「穂乃、少しだけどいてくれるか?」
「お姉ちゃん…」
「何があったが、分かる範囲で教えてくれるか?」
白露に治癒の札を巻きながら、顔を青くした穂乃に話を聞いてみる。
「よく分からないの。突然何かがやってきて、ここにはないって言って消えちゃって…。あの人は誰なの?」
《うう……》
傷の状態がよくないのかもしれない。
とにかく旧校舎まで運ぼうと立ちあがる。
「穂乃も一緒に来るか?」
「うん…」
白露の体が思ったより軽くて驚いた。
この体にどれだけの苦悩が蓄積されているのだろう。
「先輩、お疲れ様で、す……え、白露?」
「説明は後だ。腕と腹部の傷を診る」
先生ほど器用なわけではないが、何もしないよりずっといいはずだ。
治療しようとすると、茜がとてとて歩いてきた。
《……!》
茜は小さな手をめいっぱい伸ばし、白露の方へかざす。
すると、まばゆい光が白露を包みこんだ。
元気にばたばた動き回る姿を見て、陽向は驚いた様子で観察している。
「珍獣というか…まあ、珍獣ってことになるのか」
先生が授業をしている間、一旦私が面倒を見ることにしたのだ。
さっき起きたばかりなのに、目を離すと危なっかしい。
《??》
机から落ちそうになった体を受け止めると、陽向が教えてくれた。
「桜良に聞いてきたんですけど、元々は鳥の妖の一族だったみたいです。
それが色々な場所で派生して、鬼やら鹿やら魚やら…沢山の種族に紛れて暮らすようになったみたいです」
「そうせざるを得なかった理由があったってことか」
ばらばらに暮らさなければ助からないほどの事情とはなんだろう。
《ん?》
「そういえば、この紙におまえの名前の候補が書いてある。これがいいってものはあるか?」
先生が書いた半紙を並べると、とてとて歩いて片方に乗った。
「分かった。それなら今日からおまえの名前は茜だ」
《…ん》
「この子、んだけで意思疎通とろうとしてるんですね」
「もしかすると、まだそれ以外上手く話せないのかもしれない」
相手はマスコットサイズなのだ、小さな子どもくらいの知能でも不思議ではない。
「先生たちにも説明しておかないとまずいですよね」
「先生が知っていることと照らし合わせる必要がありそうだな」
全員が揃うのを待って、小さな妖こと茜の話をすることになった。
「蒼より茜の方がしっくりきたんだね」
「そうらしい。それで、茜の種族についてだけど──」
話そうとした瞬間、新校舎から爆発音がして硝子が飛び散った。
嫌な予感がして逃げ惑う生徒と反対方向へ走ると、うずくまっている人影がある。
「白露!」
不安そうに声をあげる穂乃に何も言葉を返せないほど傷が痛むようだ。
「穂乃、少しだけどいてくれるか?」
「お姉ちゃん…」
「何があったが、分かる範囲で教えてくれるか?」
白露に治癒の札を巻きながら、顔を青くした穂乃に話を聞いてみる。
「よく分からないの。突然何かがやってきて、ここにはないって言って消えちゃって…。あの人は誰なの?」
《うう……》
傷の状態がよくないのかもしれない。
とにかく旧校舎まで運ぼうと立ちあがる。
「穂乃も一緒に来るか?」
「うん…」
白露の体が思ったより軽くて驚いた。
この体にどれだけの苦悩が蓄積されているのだろう。
「先輩、お疲れ様で、す……え、白露?」
「説明は後だ。腕と腹部の傷を診る」
先生ほど器用なわけではないが、何もしないよりずっといいはずだ。
治療しようとすると、茜がとてとて歩いてきた。
《……!》
茜は小さな手をめいっぱい伸ばし、白露の方へかざす。
すると、まばゆい光が白露を包みこんだ。
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