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第21章『夜の学校』
第187話
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「あの日記ってかなりの確率で当たりますよね?」
「ああ。だからここで張っていれば大丈夫なはずだ」
先生が言っていた蔵の番12というのは、若干禍々しい気配を放っている場所だった。
普通の人間ならあてられて体調を崩すかもしれない。
「あれですかね、木が折られたってやつ」
「間違いなさそうだな」
「雨風でやられたってわけじゃなさそうですね」
「そうだな」
大きめな枝が折られたんだと思っていたけど、先生の言葉どおりスコップか何かでつつかれた部分がぼっきり折れていた。
「人為的だからこんなに呪いが充満してるんですかね…」
「陽向は平気か?」
「はい!俺、こういうの効きづらいんで」
そうだった。陽向は桜良のローレライに近い声にも負けない。
それなら他の呪いなんてはねのけてしまうだろう。
「瞬は耐性がないんだろうな」
「ないのが普通ですよ。俺たちがちょっと特殊なだけです」
「それもそうか」
特に何もおこらなさそうだったため離れようとすると、足音が複数こちらに近づいてきた。
「ねえ、さっきの人って憲兵姫じゃなかった?」
「まじ?あの人たちって毎日見回りして飽きないのかな?」
「やりがい?みたいになってんじゃね?」
「私たちにはよく分からないね」
「…よし、開けるよ」
鍵に手がかけられたのとほぼ同時に陽向が走りだす。
「教室で過ごすように言われてるはずだけど、何してるの?」
「げっ……」
「今何もせずに戻ったら見逃してあげるから、さっさと教室に戻ってくれないかな?」
陽向はあくまで優しく声をかける。
生徒たちは逃げようとした足を止め、小さく頷いた。
「ここ、本当に危ないから遊び半分で近づかない方がいいよ」
「…分かりました」
女子生徒ふたりと男子生徒ひとりが離れた瞬間、かちゃりと何かを回す音がした。
「離れろ!」
止めに入ったが、もう遅い。
「な、なんだ、やっぱり何もおこらない…」
「何をしているんだ、すぐ閉めろ」
「先輩かなにか知らないけど、そんな偉そうな態度でいいんですかね?」
小馬鹿にしたような嘲笑いにつられるように、他の生徒たちも嘲笑いだした。
「ただの噂にびびるんですね」
「憲兵姫なんて言われてるけど、言ってることただの乙女と変わらないじゃん」
「折角だし入ってみようぜ」
扉を開けようとした手を強めに掴む。
「……後悔することになるぞ」
「やだ、脅し?」
「そういうのもういいんで」
…やや治安が悪い学級があるとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
しかし、鍵を開けた生徒が一言も話さなくなったのに気づいていないのだろうか。
「先輩、やばそうですね」
「…ああ。見回りの先生に報告しておこう」
「そうですね」
陽向も止められないと感じたらしく、言葉を発さない生徒のみを連れてその場を離れる。
「あの子たち、どうなりますかね?」
「…さあな」
「ああ。だからここで張っていれば大丈夫なはずだ」
先生が言っていた蔵の番12というのは、若干禍々しい気配を放っている場所だった。
普通の人間ならあてられて体調を崩すかもしれない。
「あれですかね、木が折られたってやつ」
「間違いなさそうだな」
「雨風でやられたってわけじゃなさそうですね」
「そうだな」
大きめな枝が折られたんだと思っていたけど、先生の言葉どおりスコップか何かでつつかれた部分がぼっきり折れていた。
「人為的だからこんなに呪いが充満してるんですかね…」
「陽向は平気か?」
「はい!俺、こういうの効きづらいんで」
そうだった。陽向は桜良のローレライに近い声にも負けない。
それなら他の呪いなんてはねのけてしまうだろう。
「瞬は耐性がないんだろうな」
「ないのが普通ですよ。俺たちがちょっと特殊なだけです」
「それもそうか」
特に何もおこらなさそうだったため離れようとすると、足音が複数こちらに近づいてきた。
「ねえ、さっきの人って憲兵姫じゃなかった?」
「まじ?あの人たちって毎日見回りして飽きないのかな?」
「やりがい?みたいになってんじゃね?」
「私たちにはよく分からないね」
「…よし、開けるよ」
鍵に手がかけられたのとほぼ同時に陽向が走りだす。
「教室で過ごすように言われてるはずだけど、何してるの?」
「げっ……」
「今何もせずに戻ったら見逃してあげるから、さっさと教室に戻ってくれないかな?」
陽向はあくまで優しく声をかける。
生徒たちは逃げようとした足を止め、小さく頷いた。
「ここ、本当に危ないから遊び半分で近づかない方がいいよ」
「…分かりました」
女子生徒ふたりと男子生徒ひとりが離れた瞬間、かちゃりと何かを回す音がした。
「離れろ!」
止めに入ったが、もう遅い。
「な、なんだ、やっぱり何もおこらない…」
「何をしているんだ、すぐ閉めろ」
「先輩かなにか知らないけど、そんな偉そうな態度でいいんですかね?」
小馬鹿にしたような嘲笑いにつられるように、他の生徒たちも嘲笑いだした。
「ただの噂にびびるんですね」
「憲兵姫なんて言われてるけど、言ってることただの乙女と変わらないじゃん」
「折角だし入ってみようぜ」
扉を開けようとした手を強めに掴む。
「……後悔することになるぞ」
「やだ、脅し?」
「そういうのもういいんで」
…やや治安が悪い学級があるとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
しかし、鍵を開けた生徒が一言も話さなくなったのに気づいていないのだろうか。
「先輩、やばそうですね」
「…ああ。見回りの先生に報告しておこう」
「そうですね」
陽向も止められないと感じたらしく、言葉を発さない生徒のみを連れてその場を離れる。
「あの子たち、どうなりますかね?」
「…さあな」
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