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第21章『夜の学校』
第185話
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「先輩とふたりだとやっぱ締まります」
「そうか?」
夜の旧校舎、誰にも出くわさないことを祈りつつ見回りをする。
新校舎へも行くつもりだが、もう少ししてからじゃないと穂乃と鉢合わせてしまうだろう。
穂乃が巻きこまれないようにするには、もうひとつやっておかなければならないことがある。
「…白露」
《気づいていたのか》
「おかしな噂が広まっていて、私たちはそれに関する調査をしている。…穂乃を頼む」
《了解した》
「これを持っていってくれ」
《この力は…すさまじいな》
「誰にも怪我してほしくないから」
《お人好しだな》
白露はそう言うと、そそくさと行ってしまった。
「白露、俺たちのこと黙っててくれますかね?」
「見つからないようにしているのは知ってるだろうから、きっと上手く立ち回ってくれる」
白露は察するのが上手い。
申し訳ないが、今回はその性格を理解してのことだった。
「そういえば、中等部の研修って何をやるんだ?」
「毎年違うから一概にこうとは言えませんけど、毎年あるのはキャンプファイヤー的なやつですね」
「的なやつ?」
「でっかい火を囲むんじゃなくて、自分たちが火起こししたちっちゃい焚き火を囲むんです。
殆どの生徒は参加するんですけど、俺は不良生徒なので遠くからこっそり見てました」
「…そうか」
敢えて追及しなかったが、最後のは半分嘘だろう。
「先輩はそういうのなかったんですか?」
「学校行事は基本参加してなかったから、そういうものはよく分からないんだ。
何かあった気もするけど、大人数のなかにいるのも嫌で欠席した」
「…その頃から戦ってたんですよね」
「まあ、少しだけな」
視えない人間の普通を望んだことはないが、どういう感じなのかは知りたい。
そういうことは本で読んだり陽向や穂乃たちから聞いたことでしか知識がないから、監査部に入りたての頃苦労したのを思い出す。
「何考えてたんですか?」
「監査部に入りたての頃、見回り計画を寝るのに苦戦したことがあったのを思い出してた」
「先輩でも苦戦することってあるんですね…」
「私は無敵じゃないからな」
苦笑しつつ新校舎へ足を運ぶと、何やらひそひそ話す声が聞こえた。
「──で、そこの蔵を開けた人間は呪われるらしい」
「なにそれ、怖!」
「けど、どうせおとぎ話だろ?俺らで調べに行かね?」
「面白そう…!」
確実にまずい話をしている。
扉を開こうか迷っていると、陽向がそっと声をかけた。
「失礼します。点検に来ました」
全員寝たふりをしているのを見て微笑ましくなる。
…しかし、蔵というのはどこにあるもののことを言っていたんだろう。
「そうか?」
夜の旧校舎、誰にも出くわさないことを祈りつつ見回りをする。
新校舎へも行くつもりだが、もう少ししてからじゃないと穂乃と鉢合わせてしまうだろう。
穂乃が巻きこまれないようにするには、もうひとつやっておかなければならないことがある。
「…白露」
《気づいていたのか》
「おかしな噂が広まっていて、私たちはそれに関する調査をしている。…穂乃を頼む」
《了解した》
「これを持っていってくれ」
《この力は…すさまじいな》
「誰にも怪我してほしくないから」
《お人好しだな》
白露はそう言うと、そそくさと行ってしまった。
「白露、俺たちのこと黙っててくれますかね?」
「見つからないようにしているのは知ってるだろうから、きっと上手く立ち回ってくれる」
白露は察するのが上手い。
申し訳ないが、今回はその性格を理解してのことだった。
「そういえば、中等部の研修って何をやるんだ?」
「毎年違うから一概にこうとは言えませんけど、毎年あるのはキャンプファイヤー的なやつですね」
「的なやつ?」
「でっかい火を囲むんじゃなくて、自分たちが火起こししたちっちゃい焚き火を囲むんです。
殆どの生徒は参加するんですけど、俺は不良生徒なので遠くからこっそり見てました」
「…そうか」
敢えて追及しなかったが、最後のは半分嘘だろう。
「先輩はそういうのなかったんですか?」
「学校行事は基本参加してなかったから、そういうものはよく分からないんだ。
何かあった気もするけど、大人数のなかにいるのも嫌で欠席した」
「…その頃から戦ってたんですよね」
「まあ、少しだけな」
視えない人間の普通を望んだことはないが、どういう感じなのかは知りたい。
そういうことは本で読んだり陽向や穂乃たちから聞いたことでしか知識がないから、監査部に入りたての頃苦労したのを思い出す。
「何考えてたんですか?」
「監査部に入りたての頃、見回り計画を寝るのに苦戦したことがあったのを思い出してた」
「先輩でも苦戦することってあるんですね…」
「私は無敵じゃないからな」
苦笑しつつ新校舎へ足を運ぶと、何やらひそひそ話す声が聞こえた。
「──で、そこの蔵を開けた人間は呪われるらしい」
「なにそれ、怖!」
「けど、どうせおとぎ話だろ?俺らで調べに行かね?」
「面白そう…!」
確実にまずい話をしている。
扉を開こうか迷っていると、陽向がそっと声をかけた。
「失礼します。点検に来ました」
全員寝たふりをしているのを見て微笑ましくなる。
…しかし、蔵というのはどこにあるもののことを言っていたんだろう。
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