夜紅譚

黒蝶

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第21章『夜の学校』

第184話

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「い、いってきます…」
「待て」
なんだか沈んだ様子の穂乃が気になってつい引き止めてしまう。
「どうしても行きたくないなら行かなくていい」
「そういうわけじゃないんだけど、その…夜の学校って怖いなって」
中等部には夜の学校で二泊するというイベントがあるらしい。
あまり気乗りしないのか、穂乃のテンションは下がりっぱなしだ。
「嫌な思いをしているんじゃないか?」
「それは本当に違うよ。ただ…」
「ただ?」
「監査部のお仕事があるから、ちょっと不安になっただけ。いつもみたいに水鉄砲で撃っちゃ駄目だし、もし戦わなきゃいけなくなったらどうしようって…」
成程、そういうことか。
「おまえが気にすることじゃない。それは私たちで対処できるから心配しなくていい。ゆっくり楽しんでこい。何かあったらすぐ連絡してくれ」
「うん。ありがとう」
視えない大勢を未知の存在から護るのはとても大変なことだ。
視えている人間たちは逃げてくれるだろうが、世の中には本当に全く視えない人間というのも存在する。
最近ようやく噂が片づいたばかりなのに、また別の噂が動き出しているのだから不安になるのも無理はない。
ただ、穂乃にはできるだけ普通の女子生徒の生活をしてほしいと願っている。
『先輩、今いいですか?』
「新しい噂についてか」
『流石ですね。実は現段階でもうすでにいなくなった生徒がいるみたいなんです。
存在が忘れられてしまう前に手を打ちたかったんですけど、厳しいみたいで…』
「分かった。もう少ししてから向かう」
穂乃に余計な心配をかけたくない。
それを分かっているから陽向も時間をずらし、気を遣って連絡してくれたのだろう。
「それで、どんな噂なんだ?」
「また百物語系です。相変わらず遊び半分で手を出す生徒が多いみたいで…」
今回は、百物語を完遂できなければ災厄がふりかかるという内容らしい。
「簡単に言ってくれますよね、ほんと」
「困ったものだな」
噂を流す方に悪意はないと思うが、災厄や厄災、呪われるなどの言葉がつく噂は必ずと言っていいほど強力になる。
「早めに片づけないとまずいですよね…。中学生って噂に興味持ってそうだし、そうじゃなくても怖いもの見たさでやりそうだし…」
「そうかもしれない」
私の周りの視えない人間たちの反応は様々で、やはり気になっている様子の生徒もいた。
このまま放っておけば必ずよくない方へ進んでしまう。
穂乃に見つからないようにしつつ調査を開始した。
「…夜仕事の時間だ」
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