夜紅譚

黒蝶

文字の大きさ
上 下
214 / 309
第20章『近づく足音』

第178話

しおりを挟む
桜良たちが朝食を用意してくれていたおかげで、穂乃たちにも食べてもらうことができた。
「ありがとう。助かったよ」
「いえ……」
「桜良、一生懸命作ったんですよ」
「陽向だって手伝ってくれたでしょ」
ふたりの微笑ましい会話を聞きながら、監査部の仕事へ向かった穂乃の姿を思い浮かべる。
疲れてはいない様子だったが、何か悩んでいるのかもしれない。
「白露」
周りに誰もいないことを確認して呼び出すと、仏頂面で現れた。
《何の用だ?》
「これ、よかったら使ってくれ。間違った方へは使わないだろ」
もしなんでも願いが叶うなら、白露の悩みも解決できるかもしれない。
《…考えておく》
放課後になってから短冊の中身を確認する作業に取り掛かったが、特に問題は見つからなかった。
「大丈夫そうだな」
「まだ半分しか確認できてませんけど、残りの半分に何もないことを祈りましょう」
「そうだな」
流石に笹を燃やしてしまうわけにもいかず、目視での確認以外に方法がなかった。
このまま何事もないことを祈ったが、そういうわけにもいかないらしい。
【赤い短冊に願い事を書くと叶う可能性が高い】
「…次から次へ変化していくとはな」
「まったくです。折角御蔭さんのおかげでどうにかおさまりそうだったのに…」
冗談半分で書き換えられたのかもしれないが、色々なものが視える私たちからすればそこそこ実害が出る。
「赤だけないっていうのは変だし、今回ばかりは別のもので誤魔化すのは難しそうですね」
「そうだな。そのうえ調べる短冊が増えたとなると…」
「とてもじゃないけど潰しきれませんよね」
特に物騒な願いは見当たらなかったが、見落としがあるかもしれないし後で結びにやってくる人もいるかもしれない。
「あ、先生!噂、聞きました?」
「厄介なことになったな」
「ですね。流石に全部調べるのは無理ですよ…」
「…夜になったら、巨大な虫が現れるらしい」
「どういうことだ?」
「今日の予知日記の内容だ」
そんなものが何の前触れもなく現れるはずがない。
だが、あの大量の笹に結ばれた短冊のなかにそんな願いがあったとすればどうだろう。
「そいつを倒すしかなさそうだな」
「ああ」
そのまま夜になるのを待ち、中庭を散策する。
風の音ひとつしないのに、目の前の笹が大きく揺れた。
「…あれか、先生が言ってたのは」
巨大な虫…たしかに見た目は蜂や虻に近いように見える。
ブンブン羽音をさせながら飛んでいるかと思えば、いきなり針のようなものを飛ばしてきた。
「…誰か聞こえるか?相手は巨大な針を飛ばして攻撃してくる。今いるのは中庭の笹の前だ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

処理中です...