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第17章『名を奪う者』
第142話
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監査部の手伝いには行っているものの、ほとんど関わりがなくなってしまった高等部の生徒たち。
それでも語り継がれてしまっているらしく、何故か声をかけられる。
「あ、あの人が憲兵姫だよ」
「教員を論破したっていう、伝説の…」
「校長を黙らせたんだろ?すごい人がいるんだな…」
なんとなく居づらくなって、そのまま来た道を戻ろうとした。
…が、誰かに袖を掴まれる。
「詩乃ちゃん、ちょっといい?」
「どうした?」
瞬は周囲を見回し、誰もいない教室へ誘う。
真剣な表情で話された内容は、なんとなく予測していたものだった。
「先輩、聞きました?」
「名取さんの噂、だろ?瞬が教えてくれた」
名前を奪われた者は名取さんに成り代わられてしまうらしい、という噂が流行っているようだ。
瞬が集めてくれた情報によると、特に新入生が狙われているようだと。
「実は何人か学校を休んでるみたいなんですよね。まだ入学式が終わって3日なのに、流石にこの人数いないのは不自然だと思います」
陽向が見せてくれた表には複数の生徒の名前が書かれていて、家族に連絡しても存在が消えているような返答が返ってきたらしい。
「こっちの黒丸が新入生か?」
「はい」
名前の横に黒丸がついている生徒の方が多い。
…これだけの新入生が短期間で消えているというのはやはり不可解だ。
「消えても気づかれにくいって思ったんですかね?」
「その可能性もあるな」
【次は名前を奪われる】…あの少女の言っていた意味がよく分かった。
「先輩、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
「なんでもない。ただ、新入生にとって4月は大事だろ?早くどうにかしたいと思っていただけだ」
中入生もそうだろうが、高入生の大変さはよく知っている。
周囲は知らない人間だらけ、当然教員も見たことがない相手ばかり…。
その中で友人を作るというのはかなり難しいことだ。
私は初めから捨てていたが、人間関係を築きたい生徒たちからすればかなり困ったことになる。
「閉じ籠もってる生徒に会えればそれが1番なんですけど、厳しいですよね…」
リストの生徒たちを見てひとつ気づいたことがある。
「桜良から離れないように」
「あ、そっか!それもそうですね」
「あと…このふたりなら接触できそうだ。さり気なく聞いてみるよ」
「は、はい…?」
これだけ話しても意味が分からないだろう。
そのうち説明することになるし、早めに確認したかったため急いでバイト先に向かった。
「お疲れ様でした」
帰り支度をしている少女に声をかける。
「橋本さん、少しいいかな?」
「は、はい…」
高等部1年、定時制の生徒。
彼女からなら話を聞き出せるかもしれない。
怖がらせないようにしながらなんとか聞いてみた。
「学園生活で困ったことはないか?」
それでも語り継がれてしまっているらしく、何故か声をかけられる。
「あ、あの人が憲兵姫だよ」
「教員を論破したっていう、伝説の…」
「校長を黙らせたんだろ?すごい人がいるんだな…」
なんとなく居づらくなって、そのまま来た道を戻ろうとした。
…が、誰かに袖を掴まれる。
「詩乃ちゃん、ちょっといい?」
「どうした?」
瞬は周囲を見回し、誰もいない教室へ誘う。
真剣な表情で話された内容は、なんとなく予測していたものだった。
「先輩、聞きました?」
「名取さんの噂、だろ?瞬が教えてくれた」
名前を奪われた者は名取さんに成り代わられてしまうらしい、という噂が流行っているようだ。
瞬が集めてくれた情報によると、特に新入生が狙われているようだと。
「実は何人か学校を休んでるみたいなんですよね。まだ入学式が終わって3日なのに、流石にこの人数いないのは不自然だと思います」
陽向が見せてくれた表には複数の生徒の名前が書かれていて、家族に連絡しても存在が消えているような返答が返ってきたらしい。
「こっちの黒丸が新入生か?」
「はい」
名前の横に黒丸がついている生徒の方が多い。
…これだけの新入生が短期間で消えているというのはやはり不可解だ。
「消えても気づかれにくいって思ったんですかね?」
「その可能性もあるな」
【次は名前を奪われる】…あの少女の言っていた意味がよく分かった。
「先輩、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
「なんでもない。ただ、新入生にとって4月は大事だろ?早くどうにかしたいと思っていただけだ」
中入生もそうだろうが、高入生の大変さはよく知っている。
周囲は知らない人間だらけ、当然教員も見たことがない相手ばかり…。
その中で友人を作るというのはかなり難しいことだ。
私は初めから捨てていたが、人間関係を築きたい生徒たちからすればかなり困ったことになる。
「閉じ籠もってる生徒に会えればそれが1番なんですけど、厳しいですよね…」
リストの生徒たちを見てひとつ気づいたことがある。
「桜良から離れないように」
「あ、そっか!それもそうですね」
「あと…このふたりなら接触できそうだ。さり気なく聞いてみるよ」
「は、はい…?」
これだけ話しても意味が分からないだろう。
そのうち説明することになるし、早めに確認したかったため急いでバイト先に向かった。
「お疲れ様でした」
帰り支度をしている少女に声をかける。
「橋本さん、少しいいかな?」
「は、はい…」
高等部1年、定時制の生徒。
彼女からなら話を聞き出せるかもしれない。
怖がらせないようにしながらなんとか聞いてみた。
「学園生活で困ったことはないか?」
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