夜紅譚

黒蝶

文字の大きさ
上 下
171 / 309
第16章『消えゆくもの』

番外篇『つもった寂しさ消すように』

しおりを挟む
「瞬」
「……なに?」
「来い」
先生は時々強引だ。
だけど、僕が嫌がることはしない。
「その前に、ちょっとだけいい?」
「なんだ」
「…この前はごめん。先生もいなくなっちゃうんじゃないかってどうしても不安になっちゃって…。
どうしても寂しいって気持ちを消せなかったんだ。面倒くさくてごめん」
僕の前からはいつも人がいなくなった。
だったらもう独りでいいって思ってたはずなのに、大事なものが増えていく度考え方が変わったみたいだ。
我ながら面倒くさい性格だと思う。
これじゃあまた先生に迷惑をかけてしまう…だけど、詩乃ちゃんの言うとおり、ちゃんと話さないまままた遠くなるのは嫌だ。
「……はあ」
大きなため息を吐かれて、体がびくびくしてしまう。
流石に怒られるか、呆れられるか…そう思っていたのに、先生からかけられたのは優しい言葉だった。
「おまえは溜めこみすぎだ」
「え…?」
「知ってる。寂しがり屋なところも、素直になれないところも。…あと、不器用なところも」
「怒ってないの?」
やっぱり不安になって、何回も同じことを訊いてしまう。
「怒ってない。ただ、食事はしっかり摂らないと倒れるぞ」
「…そうだね」
そういえば、しばらくご飯を食べていなかった。
食べることを忘れたら暴走しやすくなるから気をつけるようにって言われていたのに、気を抜いたらつい忘れてしまっている。
「何がいい?」
「え?」
「おやつ」
「……ホットケーキ。ホイップクリームとチョコソースのやつ」
「準備室行くぞ」
「うん」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

花が落ちても

頼守 シロロ
ライト文芸
樺恋と言う、自分の名前が嫌いだった。 女の子はきらきらふわふわしているもの。 だから、そんな名前が似合わない私こそが異物だと分かっていた。 血の繋がらない二人の兄は、そんな自分とは違うのだ。 とどのつまり、無自覚なシスコンとブラコンの健全な人間ドラマ。

鎌倉讃歌

星空
ライト文芸
彼の遺した形見のバイクで、鎌倉へツーリングに出かけた夏月(なつき)。 彼のことを吹っ切るつもりが、ふたりの軌跡をたどれば思い出に翻弄されるばかり。海岸に佇む夏月に、バイクに興味を示した結人(ゆいと)が声をかける。

しぇいく!

風浦らの
ライト文芸
田舎で部員も少ない女子卓球部。 初心者、天才、努力家、我慢強い子、策略家、短気な子から心の弱い子まで、多くの個性がぶつかり合う、群雄割拠の地区大会。 弱小チームが、努力と友情で勝利を掴み取り、それぞれがその先で見つける夢や希望。 きっとあなたは卓球が好きになる(はず)。 ☆印の付いたタイトルには挿絵が入ります。 試合数は20試合以上。それぞれに特徴や戦術、必殺技有り。卓球の奥深さを伝えております。

café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu
ライト文芸
café R のオーナー・莉子と、後輩の誘いから通い始めた盲目サラリーマン・連藤が、料理とワインで距離を縮めます。 連藤の同僚や後輩たちの恋愛模様を絡めながら、ふたりの恋愛はどう進むのか? ※小説家になろうでも連載をしている作品ですが、アルファポリスさんにて、書き直し投稿を行なっております。第1章の内容をより描写を濃く、エピソードを増やして、現在更新しております。

未熟な蕾ですが

黒蝶
キャラ文芸
持ち主から不要だと捨てられてしまった式神は、世界を呪うほどの憎悪を抱えていた。 そんなところに現れたのは、とてつもない霊力を持った少女。 これは、拾われた式神と潜在能力に気づいていない少女の話。 …そして、ふたりを取り巻く人々の話。 ※この作品は『夜紅の憲兵姫』シリーズの一部になりますが、こちら単体でもお楽しみいただけると思います。

外れ婚約者とは言わせない! 〜年下婚約者様はトカゲかと思ったら最強のドラゴンでした〜

秋月真鳥
恋愛
 獣の本性を持つものが重用される獣国ハリカリの公爵家の令嬢、アイラには獣の本性がない。  アイラを出来損ないと周囲は言うが、両親と弟はアイラを愛してくれている。  アイラが8歳のときに、もう一つの公爵家で生まれたマウリとミルヴァの双子の本性はトカゲで、二人を産んだ後母親は体調を崩して寝込んでいた。  トカゲの双子を父親は冷遇し、妾腹の子どもに家を継がせるために追放しようとする。  アイラは両親に頼んで、マウリを婚約者として、ミルヴァと共に自分のお屋敷に連れて帰る。  本性が本当は最強のドラゴンだったマウリとミルヴァ。  二人を元の領地に戻すために、酷い父親をザマァして、後継者の地位を取り戻す物語。 ※毎日更新です! ※一章はざまぁ、二章からほのぼのになります。 ※四章まで書き上げています。 ※小説家になろうサイト様でも投稿しています。 表紙は、ひかげそうし様に描いていただきました。

処理中です...