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第16章『消えゆくもの』
第138話
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時折現れる少女は何を隠しているのだろう。
誰かを救ってほしいという想いは感じられるが、毎回すぐに姿を消してしまうためほとんど会話できない。
他のメンバーには何も話していないが、いつかなんとかできるのだろうか。
《考え事か?》
「白露、いつの間に…。そうだ、瞬と陽向を見なかったか?」
《通ってきた道では会わなかった》
「そうか」
今度こそ追いかけるため部屋を後にする。
この日は結局先生を見つけられず、資料室で情報を漁るだけで終わった。
「お姉ちゃん」
「どうした?」
穂乃と帰宅した後、全く眠気がなかったのでそのまま起きていると声をかけられる。
「泡沫の噂、どうだった?」
「進展はない。もう少し詳しく知らないと回避するのは無理そうだ」
「実は、クラスの人が何日もご飯を食べてないんだ。ご飯なんか食べなくても生きていける、自分は大丈夫だって…」
「深刻だな。食べる気がなさそうならその人にこれを渡してくれ」
栄養補助食品と一緒に完成した弁当も渡す。
「今日のお弁当、私が用意しようと思ってたのに…」
「土曜日の午後活動は結構体力を使うから、自分の分を用意するついでだよ」
監査部の仕事は、たまに土曜日の午後に食いこむことがある。
緊急性が高い事件があった場合、報告や解決策を練るためだ。
「今日は朝からバイトなの?」
「いや。先生に診察させろって言われているんだ。少し早いけど行ってくる」
「いってらっしゃい」
「宿題、あれで大丈夫なはずだから」
「え、いつの間に…」
穂乃との約束を蔑ろにしない。
宿題の答え合わせと、間違えていた部分のヒントを書き残したメモを机に置いてある。
白露がついていてくれるなら、悪い相手が襲いかかることもないだろう。
旧校舎に入ると、いつもと雰囲気が違った。
「昨日は悪かった」
「それは気にしてない。寧ろ忙しいのに手伝ってもらってばかりで申し訳ない。それより…」
「気づいたか」
「喧嘩でもしたのか?それとも、別の怪異が原因か?」
先生はしばらく黙っていたが、重い口を開く。
「話を聞こうとしたら避けられた。部屋へも行ったが開けてもらえない」
「いないわけじゃないんだよな?」
「ああ。気配があるからな」
瞬は先生を困らせたいわけじゃない。
だが、今のままでは先生に誤解されてしまう。
本心を口にするのは怖いことだが、それでまた距離ができてしまうのは悲しい。
「先生、泡沫について知ってることをまとめておいてくれ」
「それはかまわないが…」
「瞬とは私が話をするよ」
上手くいくかなんて分からない。
それでも、ふたりのためにできることがあるなら全力でやりたいと思った。
「…走るなよ」
「分かってる」
誰かを救ってほしいという想いは感じられるが、毎回すぐに姿を消してしまうためほとんど会話できない。
他のメンバーには何も話していないが、いつかなんとかできるのだろうか。
《考え事か?》
「白露、いつの間に…。そうだ、瞬と陽向を見なかったか?」
《通ってきた道では会わなかった》
「そうか」
今度こそ追いかけるため部屋を後にする。
この日は結局先生を見つけられず、資料室で情報を漁るだけで終わった。
「お姉ちゃん」
「どうした?」
穂乃と帰宅した後、全く眠気がなかったのでそのまま起きていると声をかけられる。
「泡沫の噂、どうだった?」
「進展はない。もう少し詳しく知らないと回避するのは無理そうだ」
「実は、クラスの人が何日もご飯を食べてないんだ。ご飯なんか食べなくても生きていける、自分は大丈夫だって…」
「深刻だな。食べる気がなさそうならその人にこれを渡してくれ」
栄養補助食品と一緒に完成した弁当も渡す。
「今日のお弁当、私が用意しようと思ってたのに…」
「土曜日の午後活動は結構体力を使うから、自分の分を用意するついでだよ」
監査部の仕事は、たまに土曜日の午後に食いこむことがある。
緊急性が高い事件があった場合、報告や解決策を練るためだ。
「今日は朝からバイトなの?」
「いや。先生に診察させろって言われているんだ。少し早いけど行ってくる」
「いってらっしゃい」
「宿題、あれで大丈夫なはずだから」
「え、いつの間に…」
穂乃との約束を蔑ろにしない。
宿題の答え合わせと、間違えていた部分のヒントを書き残したメモを机に置いてある。
白露がついていてくれるなら、悪い相手が襲いかかることもないだろう。
旧校舎に入ると、いつもと雰囲気が違った。
「昨日は悪かった」
「それは気にしてない。寧ろ忙しいのに手伝ってもらってばかりで申し訳ない。それより…」
「気づいたか」
「喧嘩でもしたのか?それとも、別の怪異が原因か?」
先生はしばらく黙っていたが、重い口を開く。
「話を聞こうとしたら避けられた。部屋へも行ったが開けてもらえない」
「いないわけじゃないんだよな?」
「ああ。気配があるからな」
瞬は先生を困らせたいわけじゃない。
だが、今のままでは先生に誤解されてしまう。
本心を口にするのは怖いことだが、それでまた距離ができてしまうのは悲しい。
「先生、泡沫について知ってることをまとめておいてくれ」
「それはかまわないが…」
「瞬とは私が話をするよ」
上手くいくかなんて分からない。
それでも、ふたりのためにできることがあるなら全力でやりたいと思った。
「…走るなよ」
「分かってる」
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