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第15章『バレンタインの災難』
第127話
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ふたりとわかれた後新しい杖を受け取りに行ったが、結月はまだ眠っていた。
《それで、何があった?》
「実は──」
先程までの出来事を話すと、白露は小さく息を吐いた。
《おまえは目をつけられやすいのだな》
「どうだろう。考えたこともなかった」
恋愛感情に鈍い私は苦笑することしかできない。
「穂乃は顔に出やすいから、今は言わないでほしい」
《…たしかにそうだな》
「桜良を心配させないことが最優先事項だから頼む。あと、もし穂乃に悪い虫がついたら、」
《害をなす存在なら容赦しない》
「それじゃあ頼む」
一先ず弁当のおかずを作り、一旦仮眠をとる。
単位を落とさなければいいのだから、間に合わなければリモートで講義を受ければいい。
「…少し休むよ」
若干足に痛みを感じたが、気の所為だと思うことにした。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
穂乃を見送った後もうひと眠りしようかと思ったが、結月が気になって眠れそうにないのでそのまま支度する。
大学棟へ向かう途中、陽向から連絡が入った。
「どうした?」
『なんかちょっとやばそうなものを見つけたので、時間があるときに来てもらっていいですか?』
「分かった、すぐ行く」
杖を使いながら裏道をくぐり抜けると、なにやら校門あたりが騒がしい。
「なにこれ、悪質…」
「誰か恨まれてるとか?」
「変質者とかだったら普通にやばくね?」
集団の間をぬって進むと、そこには真っ赤なペンキらしきもので殺すと書かれていた。
ただ、それより気になるものがある。
「ちょっと通してください!」
「え、監査部来たんだけど」
「任せようぜ。俺らじゃ分からないし」
生徒たちがはけた後、陽向が真っ青な顔で落書きを見つめる。
「先輩、これなんですけど…」
「ハートだな。それもここだけ塗料や絵の具で描かれたものじゃない」
気づいた生徒はいただろうか。
…恐らく私たちにしか視えないものだろう。
「真っ赤なハートなのに禍々しいのは呪いの系統がはたらいている可能性がある」
「俺相手ってことですよね。なんでそこまで…」
「心配ない。桜良に対する想いが揺らぐことはないだろう?」
「万にひとつもないです」
「恋愛成就の呪いだと思うが、他人の想いを強引に書き換えてまで一緒に過ごしたいものなのか…」
陽向は困ったように笑みを浮かべる。
「あーあ、そんなファンがいるなんて知らないんですけど…」
「やばそうなものってこれだったのか?」
塗料を落としながら問いかけると、陽向は首を横に振る。
「こっちです」
可愛らしい封筒とは裏腹に、中にはびっしり文字が書かれたルーズリーフが入っていた。
《それで、何があった?》
「実は──」
先程までの出来事を話すと、白露は小さく息を吐いた。
《おまえは目をつけられやすいのだな》
「どうだろう。考えたこともなかった」
恋愛感情に鈍い私は苦笑することしかできない。
「穂乃は顔に出やすいから、今は言わないでほしい」
《…たしかにそうだな》
「桜良を心配させないことが最優先事項だから頼む。あと、もし穂乃に悪い虫がついたら、」
《害をなす存在なら容赦しない》
「それじゃあ頼む」
一先ず弁当のおかずを作り、一旦仮眠をとる。
単位を落とさなければいいのだから、間に合わなければリモートで講義を受ければいい。
「…少し休むよ」
若干足に痛みを感じたが、気の所為だと思うことにした。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
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大学棟へ向かう途中、陽向から連絡が入った。
「どうした?」
『なんかちょっとやばそうなものを見つけたので、時間があるときに来てもらっていいですか?』
「分かった、すぐ行く」
杖を使いながら裏道をくぐり抜けると、なにやら校門あたりが騒がしい。
「なにこれ、悪質…」
「誰か恨まれてるとか?」
「変質者とかだったら普通にやばくね?」
集団の間をぬって進むと、そこには真っ赤なペンキらしきもので殺すと書かれていた。
ただ、それより気になるものがある。
「ちょっと通してください!」
「え、監査部来たんだけど」
「任せようぜ。俺らじゃ分からないし」
生徒たちがはけた後、陽向が真っ青な顔で落書きを見つめる。
「先輩、これなんですけど…」
「ハートだな。それもここだけ塗料や絵の具で描かれたものじゃない」
気づいた生徒はいただろうか。
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「あーあ、そんなファンがいるなんて知らないんですけど…」
「やばそうなものってこれだったのか?」
塗料を落としながら問いかけると、陽向は首を横に振る。
「こっちです」
可愛らしい封筒とは裏腹に、中にはびっしり文字が書かれたルーズリーフが入っていた。
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