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第15章『バレンタインの災難』
第126話
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「告白、ですか?」
「ああ」
「いやいや、ないですよ!」
「でもひな君、誰かが下駄箱にラブレターを入れてたって言ってなかった?」
「そういえば…。けど、名前が書かれてなかったから返信のしようがないんです。同級生は除外できるんですけど、後輩全員から探すのは無理だなって…」
たしか、陽向と桜良の仲はクラスから同学年全域に広まり、学年公認カップルのような言われ方をしていたはずだ。
「誰かが私の名前を書いたらしい。結ばれたい相手はおそらくおまえだ」
「ひな君と結ばれる?無理じゃない?桜良ちゃんがいるのに…あ」
「そういうことだ」
納得したように頷く瞬の隣で陽向は首を傾げている。
「私たちはよく一緒にいるだろう?名前を書いた相手は、私とおまえが恋人同士だと勘違いしている」
「そっか、だから先輩が狙われたんですね」
桜良じゃなくてよかった。
相手は怪力なうえ、言葉が通じない。
言葉を操るのを得意とする桜良では怪我ではすまない可能性がある。
「だから、しばらく私と一緒にいる時間を増やしてほしい」
「桜良に標的がうつらないようにってことですよね」
「ああ」
私が関わりを持っている男性は、陽向と先生、瞬、白露…あとは御蔭さんくらいだ。
この中で誰にでも姿が見えるのが陽向と先生だけだが、ぜんばいという相手の発音から先輩と呼んでいることが仮定できる。
「やばい人に目をつけられたんだね。…それじゃあその間、僕が桜良ちゃんの様子を見に行くよ。
穂乃ちゃんと白露に頼ってばっかりいられないしね」
「桜良に心配かけたくないから、できるだけばれないようにな」
「分かってる。あとはふたりのお手伝いをさせて。…猫さんをあんなふうにした相手、許せないから」
瞬は真っ直ぐ私を見てはっきり告げた。
…そういえば、結月ともそこそこつきあいがあると聞いている。
「それなら、今夜はおひらきにしよう」
「どうして?」
「体を休めておかないと、今得体が知れない相手と戦っても勝てないから。
先生のところへ行って、予備の杖があるか確認しないといけないしな」
「そっか…」
半分嘘だ。今の瞬は怒りで力を暴走させてしまう可能性がある。
陽向は察したのか、何も言わずに荷物をまとめはじめた。
「じゃあ、俺は桜良のところへ行きますね。監査部が忙しくなるってことにしておきます」
「分かった。話を合わせる」
「それじゃあ、お疲れさまです」
言い方は悪いが、陽向に粘着している相手を探し出す必要がありそうだ。
私だけを狙ってくれるならそれで構わないが、誤魔化しきれなくなったとき桜良が襲われるのは避けたい。
「…白露にも注意するよう話しておくか」
「ああ」
「いやいや、ないですよ!」
「でもひな君、誰かが下駄箱にラブレターを入れてたって言ってなかった?」
「そういえば…。けど、名前が書かれてなかったから返信のしようがないんです。同級生は除外できるんですけど、後輩全員から探すのは無理だなって…」
たしか、陽向と桜良の仲はクラスから同学年全域に広まり、学年公認カップルのような言われ方をしていたはずだ。
「誰かが私の名前を書いたらしい。結ばれたい相手はおそらくおまえだ」
「ひな君と結ばれる?無理じゃない?桜良ちゃんがいるのに…あ」
「そういうことだ」
納得したように頷く瞬の隣で陽向は首を傾げている。
「私たちはよく一緒にいるだろう?名前を書いた相手は、私とおまえが恋人同士だと勘違いしている」
「そっか、だから先輩が狙われたんですね」
桜良じゃなくてよかった。
相手は怪力なうえ、言葉が通じない。
言葉を操るのを得意とする桜良では怪我ではすまない可能性がある。
「だから、しばらく私と一緒にいる時間を増やしてほしい」
「桜良に標的がうつらないようにってことですよね」
「ああ」
私が関わりを持っている男性は、陽向と先生、瞬、白露…あとは御蔭さんくらいだ。
この中で誰にでも姿が見えるのが陽向と先生だけだが、ぜんばいという相手の発音から先輩と呼んでいることが仮定できる。
「やばい人に目をつけられたんだね。…それじゃあその間、僕が桜良ちゃんの様子を見に行くよ。
穂乃ちゃんと白露に頼ってばっかりいられないしね」
「桜良に心配かけたくないから、できるだけばれないようにな」
「分かってる。あとはふたりのお手伝いをさせて。…猫さんをあんなふうにした相手、許せないから」
瞬は真っ直ぐ私を見てはっきり告げた。
…そういえば、結月ともそこそこつきあいがあると聞いている。
「それなら、今夜はおひらきにしよう」
「どうして?」
「体を休めておかないと、今得体が知れない相手と戦っても勝てないから。
先生のところへ行って、予備の杖があるか確認しないといけないしな」
「そっか…」
半分嘘だ。今の瞬は怒りで力を暴走させてしまう可能性がある。
陽向は察したのか、何も言わずに荷物をまとめはじめた。
「じゃあ、俺は桜良のところへ行きますね。監査部が忙しくなるってことにしておきます」
「分かった。話を合わせる」
「それじゃあ、お疲れさまです」
言い方は悪いが、陽向に粘着している相手を探し出す必要がありそうだ。
私だけを狙ってくれるならそれで構わないが、誤魔化しきれなくなったとき桜良が襲われるのは避けたい。
「…白露にも注意するよう話しておくか」
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