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第15章『バレンタインの災難』
第123話
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赤い紙に、赤い紙人形。
あなたの代わりに紙人形が邪魔者を消してくれます。
「…大層な噂だな」
「噂自体は随分前からあったみたいなんですけど、前はストーカーとか暴力を振るうとか、そういった相手で使われてたみたいです」
「それを悪用する人間が現れたってことか」
あれだけの量の赤紙があるということは、それを叶える存在がいるということになる。
「まだ不確定要素が多いな」
「俺もそう思います。そもそも、そんなことをして何になるって話になりません?
人間を食べたいだけなら恋愛限定にしなくていいわけだし…」
「まだ謎だらけだな」
陽向が苦笑しながら見覚えのある赤い紙をひらひらさせる。
「流石に試してみるわけにはいきませんよね…」
「人間が消えたら困る。そもそも、名前を書かれた人間がどうなるかも謎だな」
「たしかに。怪我とかですかね…ちょっと調べてみます」
「私はバイト先で聞いてみるよ」
大学まで噂が広まる前に食い止められればなんとかなるはずだ。
邪魔をしないよう外へ出て、そのまま喫茶店へ向かった。
「お疲れ様でした」
「いつもありがとう。本当に助かったよ」
「いえ」
不意に周囲から聞こえてきた話が気になって仕方ない。
「ねえ、赤い紙人形の話聞いた?」
「聞いた聞いた!恋の障害になるものを取り除いてくれるらしい、みたいなやつでしょ?」
「あいつの名前書いちゃいなよ」
「それは流石になあ…。悪いことを書いたら紙人形にされるって話もあるじゃん」
…成程、行方不明者が出てくる可能性もあるわけか。
或いは存在それ自体を忘れられてしまっているのかもしれない。
ただ、消えた人間たちが行き着く先はやはり分からなかった。
「先輩の方も空振りでしたか…」
「ああ。あれ以上詳しいことは分からなかった」
喫茶店でもらったフライドポテトを食べながら作戦会議をする。
…とはいえ、まだ噂の全容を掴めていないためできることは見回りだけだ。
「じゃあ、不審者が出たら即連絡するってことで」
「ああ」
一先ず手分けして校舎中を見回ってみる。
人がいない旧校舎はとても静かで過ごしやすい。
陽向には新校舎の方を頼んでおいたが大丈夫だろうか。
色々考えているうちに、気づけば恋愛電話の近くまで来ていた。
「…!陽向、聞こえるか?」
『何かありました?』
「もし先生を見つけたら、旧校舎の保健室にいるよう伝えてくれ」
『了解です。多分職員室なんで走ってきます!』
その黒猫は見覚えがある。
傷だらけでぐったりしているが、片手におさまるほど小さい。
「すぐ連れていくからな」
小走り程度なら怒られないだろう。
…このままではどうなるか分からない状態なのだから。
あなたの代わりに紙人形が邪魔者を消してくれます。
「…大層な噂だな」
「噂自体は随分前からあったみたいなんですけど、前はストーカーとか暴力を振るうとか、そういった相手で使われてたみたいです」
「それを悪用する人間が現れたってことか」
あれだけの量の赤紙があるということは、それを叶える存在がいるということになる。
「まだ不確定要素が多いな」
「俺もそう思います。そもそも、そんなことをして何になるって話になりません?
人間を食べたいだけなら恋愛限定にしなくていいわけだし…」
「まだ謎だらけだな」
陽向が苦笑しながら見覚えのある赤い紙をひらひらさせる。
「流石に試してみるわけにはいきませんよね…」
「人間が消えたら困る。そもそも、名前を書かれた人間がどうなるかも謎だな」
「たしかに。怪我とかですかね…ちょっと調べてみます」
「私はバイト先で聞いてみるよ」
大学まで噂が広まる前に食い止められればなんとかなるはずだ。
邪魔をしないよう外へ出て、そのまま喫茶店へ向かった。
「お疲れ様でした」
「いつもありがとう。本当に助かったよ」
「いえ」
不意に周囲から聞こえてきた話が気になって仕方ない。
「ねえ、赤い紙人形の話聞いた?」
「聞いた聞いた!恋の障害になるものを取り除いてくれるらしい、みたいなやつでしょ?」
「あいつの名前書いちゃいなよ」
「それは流石になあ…。悪いことを書いたら紙人形にされるって話もあるじゃん」
…成程、行方不明者が出てくる可能性もあるわけか。
或いは存在それ自体を忘れられてしまっているのかもしれない。
ただ、消えた人間たちが行き着く先はやはり分からなかった。
「先輩の方も空振りでしたか…」
「ああ。あれ以上詳しいことは分からなかった」
喫茶店でもらったフライドポテトを食べながら作戦会議をする。
…とはいえ、まだ噂の全容を掴めていないためできることは見回りだけだ。
「じゃあ、不審者が出たら即連絡するってことで」
「ああ」
一先ず手分けして校舎中を見回ってみる。
人がいない旧校舎はとても静かで過ごしやすい。
陽向には新校舎の方を頼んでおいたが大丈夫だろうか。
色々考えているうちに、気づけば恋愛電話の近くまで来ていた。
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『何かありました?』
「もし先生を見つけたら、旧校舎の保健室にいるよう伝えてくれ」
『了解です。多分職員室なんで走ってきます!』
その黒猫は見覚えがある。
傷だらけでぐったりしているが、片手におさまるほど小さい。
「すぐ連れていくからな」
小走り程度なら怒られないだろう。
…このままではどうなるか分からない状態なのだから。
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