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閑話『それぞれの平穏』
寒空の下で
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「瞬」
「あ、先生」
「あ、じゃない。声をかけていたの、気づかなかったのか?」
「ごめん。なんだかちょっと静かだからぼんやりしてた」
いつもなら、ひな君なり誰かの声がする。
それが全く聞こえないというのは不思議なことで、どう時間を使えばいいか分からなくなっていた。
「受験の子の付添はもうないの?」
「そもそも引き受けてない」
「なんで?」
「…飛行機だの車だの、そういうのは得意じゃないんだ。昔から」
意外だった。結構一緒にいるのに、先生についてまだ知らないことが多い気がする。
「僕も飛行機は苦手だけど、車もなの?」
「……エンジン音が大きい」
そう呟いた先生がなんだか可愛くて、ついからかってしまいそうになる。
だけど、足元をつんつんする小さな雪だるまを視て、そんなことも言っていられなくなった。
《……》
「また来たの?今夜は天体観測するから、申し訳ないけど…」
子犬みたいなきゅるきゅるした目で見られて、どうしても断れなくなる。
「しかたないな…はいこれ」
《感謝感謝》
「友だちと仲良くね」
小さな雪だるまが去っていった後、先生が怪訝そうな顔で僕を見つめる。
「嫌なことをさせられているんじゃなくて、強風で仲間のマフラーや手袋がなくなっちゃったから助けてほしいって言われたんだ。
…雪だるまとはいえ、寒いなか防寒具もなかったら心まで凍るでしょ?」
「器用だな」
はじめは断ろうと思ったけど、なんだか昔の自分を見ているみたいで放っておけなかった。
「…今夜、星見られるかな?」
「大丈夫だろ。仕事も片づいたし、生徒がほとんどいないこの時期におかしな噂が流行ったりはしない。折原たちも休んでいるはずだ」
「あ、先生」
「あ、じゃない。声をかけていたの、気づかなかったのか?」
「ごめん。なんだかちょっと静かだからぼんやりしてた」
いつもなら、ひな君なり誰かの声がする。
それが全く聞こえないというのは不思議なことで、どう時間を使えばいいか分からなくなっていた。
「受験の子の付添はもうないの?」
「そもそも引き受けてない」
「なんで?」
「…飛行機だの車だの、そういうのは得意じゃないんだ。昔から」
意外だった。結構一緒にいるのに、先生についてまだ知らないことが多い気がする。
「僕も飛行機は苦手だけど、車もなの?」
「……エンジン音が大きい」
そう呟いた先生がなんだか可愛くて、ついからかってしまいそうになる。
だけど、足元をつんつんする小さな雪だるまを視て、そんなことも言っていられなくなった。
《……》
「また来たの?今夜は天体観測するから、申し訳ないけど…」
子犬みたいなきゅるきゅるした目で見られて、どうしても断れなくなる。
「しかたないな…はいこれ」
《感謝感謝》
「友だちと仲良くね」
小さな雪だるまが去っていった後、先生が怪訝そうな顔で僕を見つめる。
「嫌なことをさせられているんじゃなくて、強風で仲間のマフラーや手袋がなくなっちゃったから助けてほしいって言われたんだ。
…雪だるまとはいえ、寒いなか防寒具もなかったら心まで凍るでしょ?」
「器用だな」
はじめは断ろうと思ったけど、なんだか昔の自分を見ているみたいで放っておけなかった。
「…今夜、星見られるかな?」
「大丈夫だろ。仕事も片づいたし、生徒がほとんどいないこの時期におかしな噂が流行ったりはしない。折原たちも休んでいるはずだ」
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