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第13章『聖夜の贈り物』
番外篇『聖夜の過ごし方』
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監査部の仕事を片づけた俺は、旧校舎保健室へと急ぐ。
「おまたせ」
桜良の体には思ったより負担がかかっていたらしく、先生が毎日診察してくれている。
「車椅子、まだ降りちゃ駄目だって言われた?」
「……うん。念のため、できるだけ乗っていてほしいって」
桜良は残念そうに俯く。
早く噂の件を解決して、今年はイルミネーションを見に行こうと約束していた。
だけど、車椅子で人が多い場所を突っ切るのは厳しい。
それが分かっているから桜良は落ちこんでいるんだろう。
「喉に負担がかかることは禁止。話すのはいいけど、歌うのは避けてくれって言われた」
「そっか。桜良のクリスマスソングが聞けないのはちょっと残念だな…」
「…ごめんなさい」
「まあ、そんなことも予想して予定をたてておいたんだけどね」
「それってどういう…」
「入ってみれば分かるよ」
桜良の体を支えながら放送室の扉を開ける。
急ごしらえではあったものの、先輩やちびたちが手伝ってくれたおかげでなんとか間に合った。
桜良はというと、車椅子に座ったまま吃驚した顔をしている。
「いつの間に…」
「監査部の仕事を片づけた後、すぐ飾りつけたんだ。あの場所には勝てないけど、これならクリスマスを楽しめるんじゃないかって」
桜良はひとつ息をして、いつもみたいにふっと微笑んだ。
「全然気づかなかった。でも、こういうのはすごく嬉しい」
「そっか。喜んでもらえてよかった。あとこれ、開けてみて」
洗い替えがほしいと話していたのを思い出して、今年はひざ掛けを贈ることにした。
「…あんな話、覚えていたの?」
「桜良とのことなら、どんな些細なことでもちゃんと覚えてる自信あるよ」
「そこの引き出し、開けて」
「…?うん」
言われるがまま開けると、そこには可愛らしいラッピングがちょこんと鎮座していた。
「あげる」
「プレゼント?俺に?」
「他にいないでしょ」
桜良は頬を真っ赤にしてぼそっと呟く。
そんなところも可愛い。
「ありがとう。後で開けるよ」
「今じゃないの?」
「うん。桜良と話していたいから」
「……なにそれ」
耳まで真っ赤にしている桜良にそっと口づける。
「愛してる」
「……も」
「え?」
「なんでもない」
桜良は顔を背けたけど、本当はさっきの言葉、はっきり聞こえてたんだ。
「桜良は相変わらず照れ屋さんだね」
「顔色が変わりやすいのかもしれない」
普段はクールで感情が隠れているのに、こういうときは顔にはっきり出ている。
私も…なんて言われて、心があったまった。
「おまたせ」
桜良の体には思ったより負担がかかっていたらしく、先生が毎日診察してくれている。
「車椅子、まだ降りちゃ駄目だって言われた?」
「……うん。念のため、できるだけ乗っていてほしいって」
桜良は残念そうに俯く。
早く噂の件を解決して、今年はイルミネーションを見に行こうと約束していた。
だけど、車椅子で人が多い場所を突っ切るのは厳しい。
それが分かっているから桜良は落ちこんでいるんだろう。
「喉に負担がかかることは禁止。話すのはいいけど、歌うのは避けてくれって言われた」
「そっか。桜良のクリスマスソングが聞けないのはちょっと残念だな…」
「…ごめんなさい」
「まあ、そんなことも予想して予定をたてておいたんだけどね」
「それってどういう…」
「入ってみれば分かるよ」
桜良の体を支えながら放送室の扉を開ける。
急ごしらえではあったものの、先輩やちびたちが手伝ってくれたおかげでなんとか間に合った。
桜良はというと、車椅子に座ったまま吃驚した顔をしている。
「いつの間に…」
「監査部の仕事を片づけた後、すぐ飾りつけたんだ。あの場所には勝てないけど、これならクリスマスを楽しめるんじゃないかって」
桜良はひとつ息をして、いつもみたいにふっと微笑んだ。
「全然気づかなかった。でも、こういうのはすごく嬉しい」
「そっか。喜んでもらえてよかった。あとこれ、開けてみて」
洗い替えがほしいと話していたのを思い出して、今年はひざ掛けを贈ることにした。
「…あんな話、覚えていたの?」
「桜良とのことなら、どんな些細なことでもちゃんと覚えてる自信あるよ」
「そこの引き出し、開けて」
「…?うん」
言われるがまま開けると、そこには可愛らしいラッピングがちょこんと鎮座していた。
「あげる」
「プレゼント?俺に?」
「他にいないでしょ」
桜良は頬を真っ赤にしてぼそっと呟く。
そんなところも可愛い。
「ありがとう。後で開けるよ」
「今じゃないの?」
「うん。桜良と話していたいから」
「……なにそれ」
耳まで真っ赤にしている桜良にそっと口づける。
「愛してる」
「……も」
「え?」
「なんでもない」
桜良は顔を背けたけど、本当はさっきの言葉、はっきり聞こえてたんだ。
「桜良は相変わらず照れ屋さんだね」
「顔色が変わりやすいのかもしれない」
普段はクールで感情が隠れているのに、こういうときは顔にはっきり出ている。
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