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第13章『聖夜の贈り物』
第108話
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ふらふらしながら歩いていると、誰かにそっと寄り添われる。
「詩乃ちゃん、大丈夫?」
「瞬…?」
「すごい熱…無理に動かないで。取り敢えず先生のところまで連れていくから!」
瞬の手はとても冷たい。
だけど、どこからかぬくもりが伝わってくるような気がした。
「──」
「分かった。調べてみる」
次に意識がはっきりしたとき、腕には点滴チューブが繋がれていた。
瞬がばたばたと部屋を出たのを視線で追うと、先生が苦い顔をして私を見つめる。
「…毒気にあてられて危険な状態だった。一応相手の攻撃の影響だと説明してあるが、気づかれるか微妙なところだな」
「ごめん」
先生のことだ、みんなに心配をかけたくないという思いをくんでくれたのだろう。
だが、先生の表情はかなり曇っている。
「…昼間では個々にいろ。いいな?」
「何かあるのか?」
「今日の頁だ」
見せてくれたのは、先生が管理している未来予知日記。
【正午、空間にて夜紅死す】
「随分大雑把だな」
予知日記に書かれることは、大抵もっとはっきり書かれている。
それがこんなふうに曖昧な内容になるとは思っていなかった。
「おそらくだが、空間というのは普段閉め切られているあの場所をさしてる。
どこまで噂が広がっているか瞬に調べてもらっているから、今はここで待て」
「分かった」
今私が動けば余計に迷惑をかけることになるだろう。
「そういえば、昨日捕まった男が奇妙なことを言っているらしい」
「奇妙なこと?」
「自分は何も覚えていないだとか、女がどうのって騒いでいると警備員から聞いた」
嫌な予感がした。
もしその男が言っていることが本当で、犯人が別にいるとしたら。
「…簪」
「?」
「簪の欠片を探してほしいって頼まれたんだ。心無い人々に壊された、あの子に返したいって今年のブラックサンタが…」
「……厄介なことになりそうだな」
しばらく話していると、瞬が慌てた様子で戻ってきた。
「先生、生徒が突然カッターナイフを持って暴れだしたって…」
「予感的中か」
そう呟いた私を瞬がちらっと見る。
「詩乃ちゃん、起きたんだ」
「瞬が運んでくれたんだろ?ありがとう。助かったよ」
「あんまり怪我しないで。穂乃ちゃんが悲しむし、僕たちも見ていて辛いから」
「……ごめん」
残念ながら、それは約束できない。
だって、おそらく今回の相手は悪霊だから。
「その生徒はなんて言ってた?」
先生の問いかけに、瞬は大きく息を吸って答える。
「自分でも、なんでこんなことしたのか分からないって。…あの涙は嘘じゃないと思う」
「詩乃ちゃん、大丈夫?」
「瞬…?」
「すごい熱…無理に動かないで。取り敢えず先生のところまで連れていくから!」
瞬の手はとても冷たい。
だけど、どこからかぬくもりが伝わってくるような気がした。
「──」
「分かった。調べてみる」
次に意識がはっきりしたとき、腕には点滴チューブが繋がれていた。
瞬がばたばたと部屋を出たのを視線で追うと、先生が苦い顔をして私を見つめる。
「…毒気にあてられて危険な状態だった。一応相手の攻撃の影響だと説明してあるが、気づかれるか微妙なところだな」
「ごめん」
先生のことだ、みんなに心配をかけたくないという思いをくんでくれたのだろう。
だが、先生の表情はかなり曇っている。
「…昼間では個々にいろ。いいな?」
「何かあるのか?」
「今日の頁だ」
見せてくれたのは、先生が管理している未来予知日記。
【正午、空間にて夜紅死す】
「随分大雑把だな」
予知日記に書かれることは、大抵もっとはっきり書かれている。
それがこんなふうに曖昧な内容になるとは思っていなかった。
「おそらくだが、空間というのは普段閉め切られているあの場所をさしてる。
どこまで噂が広がっているか瞬に調べてもらっているから、今はここで待て」
「分かった」
今私が動けば余計に迷惑をかけることになるだろう。
「そういえば、昨日捕まった男が奇妙なことを言っているらしい」
「奇妙なこと?」
「自分は何も覚えていないだとか、女がどうのって騒いでいると警備員から聞いた」
嫌な予感がした。
もしその男が言っていることが本当で、犯人が別にいるとしたら。
「…簪」
「?」
「簪の欠片を探してほしいって頼まれたんだ。心無い人々に壊された、あの子に返したいって今年のブラックサンタが…」
「……厄介なことになりそうだな」
しばらく話していると、瞬が慌てた様子で戻ってきた。
「先生、生徒が突然カッターナイフを持って暴れだしたって…」
「予感的中か」
そう呟いた私を瞬がちらっと見る。
「詩乃ちゃん、起きたんだ」
「瞬が運んでくれたんだろ?ありがとう。助かったよ」
「あんまり怪我しないで。穂乃ちゃんが悲しむし、僕たちも見ていて辛いから」
「……ごめん」
残念ながら、それは約束できない。
だって、おそらく今回の相手は悪霊だから。
「その生徒はなんて言ってた?」
先生の問いかけに、瞬は大きく息を吸って答える。
「自分でも、なんでこんなことしたのか分からないって。…あの涙は嘘じゃないと思う」
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