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第13章『聖夜の贈り物』
第107話
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「穂乃、逃げろ」
「嫌」
「私は大丈夫だから、早く離れるんだ」
「嫌。ここをどいたらお姉ちゃんが傷つけられちゃうよ…」
穂乃は水鉄砲をかまえて相手を睨みつける。
「どうして痛いことをするの?」
《ミンナ、オデニジダ》
「それってどういう、」
《フクジュウダ!》
穂乃に向かって吐き出された虫を短刀で斬る。
「白露、穂乃を頼む」
《しかし、》
「いいから」
白露は私の考えを察知したらしく、大きく息を吐いて穂乃を後方へ連れていく。
「お姉ちゃん!」
「…おまえは痛いことをされても、誰にも助けてもらえなかったんだな」
《フク、ジュウ…》
「憎くもなるし、復讐したいと思う気持ちも少しは分かる。それでも、行動にうつしたらそれはただの化け物なんだ」
あの男が憎かった。正直、殺してやろうかと考えたことも一度や二度じゃない。
それでも、みんながいてくれたから今ここに立っていられる。
《復、讐…》
「したくて止められないのか?」
大男は持っていた袋の口を縛り、こちらに向かって投げつけた。
思わず受け取ってしまったが、中から何かが出てくるということはない。
《憎い、止めらレナい……》
さっきよりはまともに会話できそうだ。
「なんでそんな状態になったか、心当たりはないのか?」
《あの子の簪…》
「どこあたりでなくしたとか、特徴は分かるか?」
《小さい白い花、遊び半分で…》
「そうか。壊されたのか」
《欠片、探して》
それだけ言うと、大男の姿は消える。
大きな袋も消えたが、これで人間が襲われた理由は分かった。
だが、残ったものをどうにかしなければここから抜け出すことすらできない。
「穂乃、あの虫たちを一掃できるか?燃やしたら増殖する可能性が高いんだ」
「分かった、やってみる」
水鉄砲からはかなりの水圧のものが勢いよく噴射される。
矢で動きを封じていただけの虫たちに命中し、次々消えていった。
「お姉ちゃん、探すの?」
「勿論。簪なんてどこにあるか分からないけど、大切なものだったなら返してやりたい」
「それじゃあ私も探す。明日までに見つけられるかな…」
穂乃たちを先に行かせ、封じられていた部屋を見渡す。
大きなワードロープに何かが挟まっているのを見つけ、それを手に取る。
何かの切れ端のようだが、いまひとつ確認できない。
それから、置かれているもののなかで1番浮いていたのは古時計だった。
ほこりひとつかぶっていないそれは、なんだか不気味に感じる。
「…そういうことか」
時計に扉、所々についた白い粉…ここがどういう場所なのか、なんとなく理解した。
「嫌」
「私は大丈夫だから、早く離れるんだ」
「嫌。ここをどいたらお姉ちゃんが傷つけられちゃうよ…」
穂乃は水鉄砲をかまえて相手を睨みつける。
「どうして痛いことをするの?」
《ミンナ、オデニジダ》
「それってどういう、」
《フクジュウダ!》
穂乃に向かって吐き出された虫を短刀で斬る。
「白露、穂乃を頼む」
《しかし、》
「いいから」
白露は私の考えを察知したらしく、大きく息を吐いて穂乃を後方へ連れていく。
「お姉ちゃん!」
「…おまえは痛いことをされても、誰にも助けてもらえなかったんだな」
《フク、ジュウ…》
「憎くもなるし、復讐したいと思う気持ちも少しは分かる。それでも、行動にうつしたらそれはただの化け物なんだ」
あの男が憎かった。正直、殺してやろうかと考えたことも一度や二度じゃない。
それでも、みんながいてくれたから今ここに立っていられる。
《復、讐…》
「したくて止められないのか?」
大男は持っていた袋の口を縛り、こちらに向かって投げつけた。
思わず受け取ってしまったが、中から何かが出てくるということはない。
《憎い、止めらレナい……》
さっきよりはまともに会話できそうだ。
「なんでそんな状態になったか、心当たりはないのか?」
《あの子の簪…》
「どこあたりでなくしたとか、特徴は分かるか?」
《小さい白い花、遊び半分で…》
「そうか。壊されたのか」
《欠片、探して》
それだけ言うと、大男の姿は消える。
大きな袋も消えたが、これで人間が襲われた理由は分かった。
だが、残ったものをどうにかしなければここから抜け出すことすらできない。
「穂乃、あの虫たちを一掃できるか?燃やしたら増殖する可能性が高いんだ」
「分かった、やってみる」
水鉄砲からはかなりの水圧のものが勢いよく噴射される。
矢で動きを封じていただけの虫たちに命中し、次々消えていった。
「お姉ちゃん、探すの?」
「勿論。簪なんてどこにあるか分からないけど、大切なものだったなら返してやりたい」
「それじゃあ私も探す。明日までに見つけられるかな…」
穂乃たちを先に行かせ、封じられていた部屋を見渡す。
大きなワードロープに何かが挟まっているのを見つけ、それを手に取る。
何かの切れ端のようだが、いまひとつ確認できない。
それから、置かれているもののなかで1番浮いていたのは古時計だった。
ほこりひとつかぶっていないそれは、なんだか不気味に感じる。
「…そういうことか」
時計に扉、所々についた白い粉…ここがどういう場所なのか、なんとなく理解した。
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