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第13章『聖夜の贈り物』
第105話
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「なんで?理由がいるわけ?」
「人間を傷つけるのに理由がないわけないだろ、それに、無差別に襲って快感を得ているわけでもなさそうだ」
これはあくまで主観的に見た結果だが、何かを探して焦っているように見えた。
「愉しいから。これでいい?」
チェーンソーではなく、ポケットから取り出したナイフで横一文字に切りつけられた。
「この前襲った猫は可愛く鳴いてくれたんだけどなあ……そうだ、おまえで実験させろよ」
やっぱりこいつが結月に手を出した犯人らしい。
再びナイフを構え、にっこり嗤った。
「可愛い悲鳴を聞かせてくれ!」
勢いよく投げつけられたナイフを避け、そのまま真っ直ぐ突進する。
今目の前にいる男に結月の姿は視えていない。
「今だ!」
結月は持っていた袋を宙に投げる。
それと同時に周囲にはっておいた札を発動させた。
「うわ!?」
小麦粉に着火したことにより、ぱちぱちと小爆発がおきる。
古くなったスプリンクラーが作動し、周囲が騒がしくなってきた。
「誰かいるのか?返事をしなさい!」
「いました、不審者です!」
「くそ、離せ!」
ばたばたしている間にその場を離れ、小走りで保健室へ向かう。
「ちょっと、その怪我…」
「後にしてくれ」
有無を言わさず走りきり、保健室に入る。
陽向が真っ青な顔で私の腕を見た。
「先輩、その傷……!」
「生きてる人間の方は多分これで解決した。あの犯人には疑問が残る点もあるけど、それより今は噂の大男のことを考えないと…」
「先に手当てしましょう。方針はその後でも大丈夫でしょ?」
「それもそうか」
あまり自覚していなかったが、洋服が焼けて腕には火傷の痕が点々としている。
自分だけで対処できそうになくて戸惑っていると、先生が中に入ってきた。
「何があった?」
「実は……」
先程の出来事を正直に話すと、先生は苦い顔をしていた。
「旧校舎は1階にしかスプリンクラーがついてないだろ?相手が人間だと分かった時点であそこを燃やすしかなかった」
「それはそうだが、何故怪我をしない方法を考えなかった?」
「誰かが傷つけられるくらいなら、私ひとりでいい」
「その考えは危ういって何度言えば分かるんだ」
「ごめん。けど、私はこれしか知らないんだ」
結果として結月にさらなる傷を負わせることは阻止できたし、視えないから襲われないというところはよかった。
ただ、怪我をしたことを穂乃につっこまれればなんて答えればいいか分からない。
それから、周りに心配をかけたくなかった。
「詩乃ちゃん、また怪我したの?」
「瞬もいたのか」
「何度も怪我したら痛いよ?」
「……そうだな。気をつける」
先生は桜良を起こさないようにと外へ連れ出してくれた。
瞬も一緒にいて、なんだかいつもよりにぎやかに感じる。
一瞬沈黙が流れたが、耳元に聞こえてきた声がそれを破った。
『お姉ちゃん、お、大男が…どうしよう……』
「人間を傷つけるのに理由がないわけないだろ、それに、無差別に襲って快感を得ているわけでもなさそうだ」
これはあくまで主観的に見た結果だが、何かを探して焦っているように見えた。
「愉しいから。これでいい?」
チェーンソーではなく、ポケットから取り出したナイフで横一文字に切りつけられた。
「この前襲った猫は可愛く鳴いてくれたんだけどなあ……そうだ、おまえで実験させろよ」
やっぱりこいつが結月に手を出した犯人らしい。
再びナイフを構え、にっこり嗤った。
「可愛い悲鳴を聞かせてくれ!」
勢いよく投げつけられたナイフを避け、そのまま真っ直ぐ突進する。
今目の前にいる男に結月の姿は視えていない。
「今だ!」
結月は持っていた袋を宙に投げる。
それと同時に周囲にはっておいた札を発動させた。
「うわ!?」
小麦粉に着火したことにより、ぱちぱちと小爆発がおきる。
古くなったスプリンクラーが作動し、周囲が騒がしくなってきた。
「誰かいるのか?返事をしなさい!」
「いました、不審者です!」
「くそ、離せ!」
ばたばたしている間にその場を離れ、小走りで保健室へ向かう。
「ちょっと、その怪我…」
「後にしてくれ」
有無を言わさず走りきり、保健室に入る。
陽向が真っ青な顔で私の腕を見た。
「先輩、その傷……!」
「生きてる人間の方は多分これで解決した。あの犯人には疑問が残る点もあるけど、それより今は噂の大男のことを考えないと…」
「先に手当てしましょう。方針はその後でも大丈夫でしょ?」
「それもそうか」
あまり自覚していなかったが、洋服が焼けて腕には火傷の痕が点々としている。
自分だけで対処できそうになくて戸惑っていると、先生が中に入ってきた。
「何があった?」
「実は……」
先程の出来事を正直に話すと、先生は苦い顔をしていた。
「旧校舎は1階にしかスプリンクラーがついてないだろ?相手が人間だと分かった時点であそこを燃やすしかなかった」
「それはそうだが、何故怪我をしない方法を考えなかった?」
「誰かが傷つけられるくらいなら、私ひとりでいい」
「その考えは危ういって何度言えば分かるんだ」
「ごめん。けど、私はこれしか知らないんだ」
結果として結月にさらなる傷を負わせることは阻止できたし、視えないから襲われないというところはよかった。
ただ、怪我をしたことを穂乃につっこまれればなんて答えればいいか分からない。
それから、周りに心配をかけたくなかった。
「詩乃ちゃん、また怪我したの?」
「瞬もいたのか」
「何度も怪我したら痛いよ?」
「……そうだな。気をつける」
先生は桜良を起こさないようにと外へ連れ出してくれた。
瞬も一緒にいて、なんだかいつもよりにぎやかに感じる。
一瞬沈黙が流れたが、耳元に聞こえてきた声がそれを破った。
『お姉ちゃん、お、大男が…どうしよう……』
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