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第12章『甘美な声』
第96話
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「桜良は授業、行かないのか?」
「はい。今日は念のため休むように室星先生から言われているし、自習が増えてきているので…」
「そうか」
そういえば、桜良ももう進路が決まっているのだった。
それなら特にやることもないし退屈だろう。
考えた末、普段使っていないワイヤレスイヤホンの右を渡す。
「よかったら聞いててくれ」
「分かりました」
興味を持ってもらえるかは分からないが、試しに講義を見ておいても損はないのではと思った。
『よって、こちらの数式は証明できないということになります。証明できないという証明をする過程を楽しんでください』
「……」
ノートをとりながらちらっと確認した桜良の表情は、優等生そのものだった。
食い入るように画面を見て、割と楽しんでいるように見える。
「どうだった?」
「初めて体験しました。あれが大学の講義…」
和やかな雰囲気にほっとしていると、足元に泥のようなものが集まってきていることに気づく。
「詩乃先輩?どうしたんですか?」
「なんでもない。…桜良はそこで目を閉じててくれ」
「…?分かりました」
幸い、桜良の角度からは見えない位置だ。
札を並べ、泥を燃やす。
…裏切った人間たちに対する恨み言は聞かなかったことにした。
「それには、色々な人の想いがこめられているんでしょうか」
「おそらく。勿論ただの呪いの塊も混ざっているんだろうけど、少女たちの悲しみも紛れているはずだ」
「今を安らかに過ごそうとした彼女たちを無理矢理起こした人を、許せません。絶対に」
桜良がここまで感情をむき出しにしているのを見るのは初めてに近い。
それだけ怒っているということだろう。
「そうだな。早く犯人を見つけてどうにかしないと…」
陽向が持ってきてくれた新聞記事と先生が置いていった儀式に関する切り抜きに目を通していると、気になる項目を発見した。
「…成程」
何故行方不明者が全員歌唱に関係していたのか、そのなかでも特に上手い人物をピックアップしていたのか…なんとなく答えが出た気がする。
「どうかしたんですか?」
「この儀式の生贄に選ばれた少女たちは、歌が上手いことが条件になっている。
今のところ男だけが狙われている理由は分からないけど、もしかするとこの条件に当てはまりそうな人が消えているのかもしれない」
その目的は復讐か、滅びを求めているのか。
どのみちこのまま放っておくことはできない。
「桜良、動けそうなら今夜は私と一緒に来ないか?」
「え…。でも、私が行くと足手まといになります」
「そんなことない。助けを求めてきた相手と向かい合って話せるのは、桜良だけだと思う」
桜良は少し考えるような仕草をした後、はっきり答えた。
「助けるって約束したんです。今どんな状況なのか、ちゃんと知りたい…。お願いします。連れていってください」
「はい。今日は念のため休むように室星先生から言われているし、自習が増えてきているので…」
「そうか」
そういえば、桜良ももう進路が決まっているのだった。
それなら特にやることもないし退屈だろう。
考えた末、普段使っていないワイヤレスイヤホンの右を渡す。
「よかったら聞いててくれ」
「分かりました」
興味を持ってもらえるかは分からないが、試しに講義を見ておいても損はないのではと思った。
『よって、こちらの数式は証明できないということになります。証明できないという証明をする過程を楽しんでください』
「……」
ノートをとりながらちらっと確認した桜良の表情は、優等生そのものだった。
食い入るように画面を見て、割と楽しんでいるように見える。
「どうだった?」
「初めて体験しました。あれが大学の講義…」
和やかな雰囲気にほっとしていると、足元に泥のようなものが集まってきていることに気づく。
「詩乃先輩?どうしたんですか?」
「なんでもない。…桜良はそこで目を閉じててくれ」
「…?分かりました」
幸い、桜良の角度からは見えない位置だ。
札を並べ、泥を燃やす。
…裏切った人間たちに対する恨み言は聞かなかったことにした。
「それには、色々な人の想いがこめられているんでしょうか」
「おそらく。勿論ただの呪いの塊も混ざっているんだろうけど、少女たちの悲しみも紛れているはずだ」
「今を安らかに過ごそうとした彼女たちを無理矢理起こした人を、許せません。絶対に」
桜良がここまで感情をむき出しにしているのを見るのは初めてに近い。
それだけ怒っているということだろう。
「そうだな。早く犯人を見つけてどうにかしないと…」
陽向が持ってきてくれた新聞記事と先生が置いていった儀式に関する切り抜きに目を通していると、気になる項目を発見した。
「…成程」
何故行方不明者が全員歌唱に関係していたのか、そのなかでも特に上手い人物をピックアップしていたのか…なんとなく答えが出た気がする。
「どうかしたんですか?」
「この儀式の生贄に選ばれた少女たちは、歌が上手いことが条件になっている。
今のところ男だけが狙われている理由は分からないけど、もしかするとこの条件に当てはまりそうな人が消えているのかもしれない」
その目的は復讐か、滅びを求めているのか。
どのみちこのまま放っておくことはできない。
「桜良、動けそうなら今夜は私と一緒に来ないか?」
「え…。でも、私が行くと足手まといになります」
「そんなことない。助けを求めてきた相手と向かい合って話せるのは、桜良だけだと思う」
桜良は少し考えるような仕草をした後、はっきり答えた。
「助けるって約束したんです。今どんな状況なのか、ちゃんと知りたい…。お願いします。連れていってください」
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