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第11章『そよ風の知らせ』
第87話
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《起きタア?》
「これは…」
目を開いて真っ先に視えたのは、ムンクの叫びのようなポーズで石化させられている人間たち。
《その子とハ、かくレンボしタ》
「この子が負けたのか?」
《私、強いカラ》
妖はにっこり微笑んでいるが、とてもそんな穏やかな表情を浮かべられる状況ではない。
いくつかある石像のなかに、須郷さんの弟も紛れこんでいた。
やはりあの日写真を拾ったのは偶然ではなかったのだ。
「…私とは何をするつもりだ?」
《キセカエ?それとモ、鬼ごッコ?》
噂のせいか、話し方が不自然に聞こえる。
『──い、聞こえますか?先輩!』
「私は友人が少ないけど、他にも一緒に遊んでくれる人たちがいるんだ。だから、さっきの場所まで帰してくれないか?」
それまでにこにこしていた表情は一変し、怖い顔で古びた洋館のような場所まで吹き飛ばされる。
《イヤダ!アナタモ遊ブノ!》
あまり気は進まなかったが、ひとまず洋館の中へ退避する。
このまま逃げ切れるとはとても思えないが、何か手がかりがないか探す。
《ドコへ行ッタ…》
相手は目が悪いのか、すぐ近くに隠れている私に気づいていないらしい。
息を殺し、なんとか隣の部屋へ移動した。
「…ごめん。電波が悪くてよく聞こえない。一度しか言わないから、誰か聞いててくれ」
《かくれんぼ?ヤッタア!》
がんがん音がしているが、相手が近づいているとは思わない。
というより、気配を消されているのかどこにいるか把握するのが難しくなっている。
「私が今いるのは、石碑に封印されていたであろう存在…噂の本体になりつつある存在の部屋だ。
大きな洋館で鬼ごっこをしている。捕まれば、他の人間たちと同じように石化させられてしまうと思う」
《キャハハハ!》
笑い声は聞こえてくるものの、やはり距離感を掴むのは困難だった。
誰かに繋がっていると信じ、そのまま語りかける。
「陽向たちのクラスの生徒たちをさらったのは、この子の母親の妖だ。
石碑を破壊した犯人を見つければ解放してくれるって言ってた。ただ、その前に噂をなんとかしないとここにいる人たちを助けられない」
おそらく、爆風をおこしている少女はただ遊びたいだけだ。
噂によってその想いが捻じ曲げられ、今は怨念を撒き散らしている。
「もし私が無事に戻れなかったそのときは、あとを頼んでもいいかな?」
目の前の階段が崩れ、時間がないことを悟る。
《みいつけたあ…》
「見つかったな。けど、まだまだこれからだろ?」
札を何枚か並べ、できるだけ近づかれないよう時間をかせぐ。
後ろをよく見ていなかった私は、足を滑らせ体が投げ出された。
「……!」
背中に衝撃がはしると同時に意識を飛ばした。
「これは…」
目を開いて真っ先に視えたのは、ムンクの叫びのようなポーズで石化させられている人間たち。
《その子とハ、かくレンボしタ》
「この子が負けたのか?」
《私、強いカラ》
妖はにっこり微笑んでいるが、とてもそんな穏やかな表情を浮かべられる状況ではない。
いくつかある石像のなかに、須郷さんの弟も紛れこんでいた。
やはりあの日写真を拾ったのは偶然ではなかったのだ。
「…私とは何をするつもりだ?」
《キセカエ?それとモ、鬼ごッコ?》
噂のせいか、話し方が不自然に聞こえる。
『──い、聞こえますか?先輩!』
「私は友人が少ないけど、他にも一緒に遊んでくれる人たちがいるんだ。だから、さっきの場所まで帰してくれないか?」
それまでにこにこしていた表情は一変し、怖い顔で古びた洋館のような場所まで吹き飛ばされる。
《イヤダ!アナタモ遊ブノ!》
あまり気は進まなかったが、ひとまず洋館の中へ退避する。
このまま逃げ切れるとはとても思えないが、何か手がかりがないか探す。
《ドコへ行ッタ…》
相手は目が悪いのか、すぐ近くに隠れている私に気づいていないらしい。
息を殺し、なんとか隣の部屋へ移動した。
「…ごめん。電波が悪くてよく聞こえない。一度しか言わないから、誰か聞いててくれ」
《かくれんぼ?ヤッタア!》
がんがん音がしているが、相手が近づいているとは思わない。
というより、気配を消されているのかどこにいるか把握するのが難しくなっている。
「私が今いるのは、石碑に封印されていたであろう存在…噂の本体になりつつある存在の部屋だ。
大きな洋館で鬼ごっこをしている。捕まれば、他の人間たちと同じように石化させられてしまうと思う」
《キャハハハ!》
笑い声は聞こえてくるものの、やはり距離感を掴むのは困難だった。
誰かに繋がっていると信じ、そのまま語りかける。
「陽向たちのクラスの生徒たちをさらったのは、この子の母親の妖だ。
石碑を破壊した犯人を見つければ解放してくれるって言ってた。ただ、その前に噂をなんとかしないとここにいる人たちを助けられない」
おそらく、爆風をおこしている少女はただ遊びたいだけだ。
噂によってその想いが捻じ曲げられ、今は怨念を撒き散らしている。
「もし私が無事に戻れなかったそのときは、あとを頼んでもいいかな?」
目の前の階段が崩れ、時間がないことを悟る。
《みいつけたあ…》
「見つかったな。けど、まだまだこれからだろ?」
札を何枚か並べ、できるだけ近づかれないよう時間をかせぐ。
後ろをよく見ていなかった私は、足を滑らせ体が投げ出された。
「……!」
背中に衝撃がはしると同時に意識を飛ばした。
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