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第10章『かぼちゃの森』
第77話
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「…ちゃん、お姉ちゃん!」
体が痛くて動けないし、目を開けられない。
「大丈夫だ。今は休ませてやれ」
「…ごめんなさい。私が弱いから、他のみんなにも迷惑をかけちゃって…」
「そんなに思いつめていたらみんな悲しむ。それに、誰だってはじめは戦い方がまずかったり力の制御ができない。
…そこから成長していこうと努力できるからいいんじゃないか?」
先生らしいアドバイスだ。
そういえば、あの巨大かぼちゃ男はどうなっただろう。
あと、陽向が持っていた生首の子は元の体に戻っただろうか。
気になることは色々あるものの、指先ひとつ動かせなかった。
「詩乃ちゃん、僕が落ち着けるようにって沢山話しかけてくれたんだ。ひな君もだけど…」
「…そうか」
「痛くない?」
「自力じゃできそうになかったから助かった」
瞬の声の響きがいつもと同じになっている。
今目に浴びているのは朝日、ということになるのだろうか。
「……朝、か」
「お姉ちゃん!」
重い瞼を持ちあげると、穂乃の泣きそうな顔が視界いっぱいにうつる。
「大丈夫なの?」
「これくらいなら慣れてる」
正直、必死だったからあまり覚えていない。
「…今夜で決着、つけないとな」
「そうなるな」
ハロウィンまでに噂をなんとかできなければ、今以上に人形がばらまかれることになる。
「折原妹、悪いがちょっと放送室へ届け物をしてくれないか?」
「分かりました…」
「私は大丈夫だから。後で追いつくよ」
「お姉ちゃんはそのままゆっくり休んでね」
「僕はひな君を探してくるよ」
先生の優しい口実に感謝しつつ、ふと横のベッドを見ると生首が意思を持ちはじめていた。
「どういうことが説明してもらおうか」
「拾ったんだ。陽向も同じように言ってただろ?」
「かなり喰われているようで、まだ視力すら回復していないようなんだ。
…少なくても、明日の夜までには怪異と関わった記憶も綺麗さっぱり消えるだろう」
「そうか…」
腕を動かそうとすると激痛がはしり、顔をしかめながらそちらに視線を向ける。
右腕に見覚えのない火傷の痕があった。
「…やっぱり覚えてないのか」
「ごめん」
「半分暴走しているようだったからな、無理もない。この前使えるようになったと話していた技を使った後、矢から完全に手を離す前に服に燃えうつった。
そのまま連撃した影響で腕まで焼けた…っていう説明で分かるか?」
たしかに矢がかなり減っているし、弓も少し焦げている。
「先生がいなかったら危なかったな」
「妹の前であんな姿を見せたのは初めてだったな」
「…気をつけてたつもりだったのに」
怒ると周りが見えなくなることがある。
自分でも分かっているから抑えているのに、昨夜はどうしても我慢できなかった。
次からは気をつけよう…なんて考えながら体をおこす。
やっぱり腕が痛むが、そうも言っていられない。
「今夜で必ずケリをつける」
体が痛くて動けないし、目を開けられない。
「大丈夫だ。今は休ませてやれ」
「…ごめんなさい。私が弱いから、他のみんなにも迷惑をかけちゃって…」
「そんなに思いつめていたらみんな悲しむ。それに、誰だってはじめは戦い方がまずかったり力の制御ができない。
…そこから成長していこうと努力できるからいいんじゃないか?」
先生らしいアドバイスだ。
そういえば、あの巨大かぼちゃ男はどうなっただろう。
あと、陽向が持っていた生首の子は元の体に戻っただろうか。
気になることは色々あるものの、指先ひとつ動かせなかった。
「詩乃ちゃん、僕が落ち着けるようにって沢山話しかけてくれたんだ。ひな君もだけど…」
「…そうか」
「痛くない?」
「自力じゃできそうになかったから助かった」
瞬の声の響きがいつもと同じになっている。
今目に浴びているのは朝日、ということになるのだろうか。
「……朝、か」
「お姉ちゃん!」
重い瞼を持ちあげると、穂乃の泣きそうな顔が視界いっぱいにうつる。
「大丈夫なの?」
「これくらいなら慣れてる」
正直、必死だったからあまり覚えていない。
「…今夜で決着、つけないとな」
「そうなるな」
ハロウィンまでに噂をなんとかできなければ、今以上に人形がばらまかれることになる。
「折原妹、悪いがちょっと放送室へ届け物をしてくれないか?」
「分かりました…」
「私は大丈夫だから。後で追いつくよ」
「お姉ちゃんはそのままゆっくり休んでね」
「僕はひな君を探してくるよ」
先生の優しい口実に感謝しつつ、ふと横のベッドを見ると生首が意思を持ちはじめていた。
「どういうことが説明してもらおうか」
「拾ったんだ。陽向も同じように言ってただろ?」
「かなり喰われているようで、まだ視力すら回復していないようなんだ。
…少なくても、明日の夜までには怪異と関わった記憶も綺麗さっぱり消えるだろう」
「そうか…」
腕を動かそうとすると激痛がはしり、顔をしかめながらそちらに視線を向ける。
右腕に見覚えのない火傷の痕があった。
「…やっぱり覚えてないのか」
「ごめん」
「半分暴走しているようだったからな、無理もない。この前使えるようになったと話していた技を使った後、矢から完全に手を離す前に服に燃えうつった。
そのまま連撃した影響で腕まで焼けた…っていう説明で分かるか?」
たしかに矢がかなり減っているし、弓も少し焦げている。
「先生がいなかったら危なかったな」
「妹の前であんな姿を見せたのは初めてだったな」
「…気をつけてたつもりだったのに」
怒ると周りが見えなくなることがある。
自分でも分かっているから抑えているのに、昨夜はどうしても我慢できなかった。
次からは気をつけよう…なんて考えながら体をおこす。
やっぱり腕が痛むが、そうも言っていられない。
「今夜で必ずケリをつける」
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