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第10章『かぼちゃの森』
第75話
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「い、いやいや!こんなの聞いてないですよ!?」
《…息はある》
「この状態で…?」
「おまえがそれを言うのか?いつも酷い死に方をしているのに」
若干あたふたしている陽向に苦笑しつつ、じっと暗闇に目を凝らす。
紅をさし、あたりに炎を撒き散らした。
「──燃えろ」
炎の壁を作り、これ以上近づけないようにする。
《ケケケケ!》
「先輩、あいつです!」
「白鷺学園で視たやつと同じだ」
それはたしかに何かに寄生して攻撃してくるタイプのものだったが、単体で動けているということはかなりの人間が喰われている可能性が高い。
「さっきの首、絶対に壊されないように気をつけろ」
「え、あ、はい!」
「白露、刀は使えそうか?」
《おそらく》
先程までは1体しかいなかったのに、今目の前にいるのは3体だ。
「私が左右の2体を相手するから、真ん中のやつを頼む」
《分かった》
左右の2体に向かって火炎刃を投げつける。
満月が近いからか、やはりいつものようにすんなり終わってくれない。
《キシャシャシャ!》
《キキキキ!》
「…まだ遊び足りないようだな」
火炎刃を投げつけ、それとほぼ同時に別の札を投げつける。
《エ、エア…》
《ギャア!》
2体同時に燃え尽きるのを見届けていると、背後から鋭い一太刀が命中した音が耳に入る。
振り向くと、刀を鞘におさめる白露と呆然とした様子の陽向が立ち尽くしていた。
「取り敢えず終わったな」
《ああ》
「い、いやいや!終わったって、そんなあっさり…ええ……」
《何をそんなに驚くことがある?》
「白露が刀使えるのは知ってるし、穂乃ちゃんの霊力を考えるとすごい技が出るのは分かる。
けど…先輩、さっきの紫の炎ってなんですか?あんなの見たことなかったんですけど…」
「紫の炎と書いて、紫炎だ」
普段は周囲を護る程度のものだが、炎に染みこませると毒性を持つ札だ。
高等部にいた頃から密かに特訓していたが、人前で使ったのは今が初めてだった。
「どういうものなんですか?」
「簡単に説明すると、炎の中でだけ効果を発揮する猛毒だ。仕組みはよく知らないけど、蔵の古い書物をもとに作った」
「やっぱり先輩の家ってお宝だらけなんですね…」
母のものだったらしい蔵には、まだまだ目を通していない道具や術について書かれた書物がある。
時々読み漁っているが、私では使えないものも多い。
「今度陽向にも何か持ってくるよ。接近戦で使えそうなやつがあったから」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
しばらく和やかな雰囲気に包まれていたが、インカム越しに緊迫した声が響いた。
『旧校舎2階、誰かいる?このままじゃ逃げ切れない…』
その直後、白露がその場から姿を消した。
「え、白露?」
「大丈夫だ。私たちも急ごう」
《…息はある》
「この状態で…?」
「おまえがそれを言うのか?いつも酷い死に方をしているのに」
若干あたふたしている陽向に苦笑しつつ、じっと暗闇に目を凝らす。
紅をさし、あたりに炎を撒き散らした。
「──燃えろ」
炎の壁を作り、これ以上近づけないようにする。
《ケケケケ!》
「先輩、あいつです!」
「白鷺学園で視たやつと同じだ」
それはたしかに何かに寄生して攻撃してくるタイプのものだったが、単体で動けているということはかなりの人間が喰われている可能性が高い。
「さっきの首、絶対に壊されないように気をつけろ」
「え、あ、はい!」
「白露、刀は使えそうか?」
《おそらく》
先程までは1体しかいなかったのに、今目の前にいるのは3体だ。
「私が左右の2体を相手するから、真ん中のやつを頼む」
《分かった》
左右の2体に向かって火炎刃を投げつける。
満月が近いからか、やはりいつものようにすんなり終わってくれない。
《キシャシャシャ!》
《キキキキ!》
「…まだ遊び足りないようだな」
火炎刃を投げつけ、それとほぼ同時に別の札を投げつける。
《エ、エア…》
《ギャア!》
2体同時に燃え尽きるのを見届けていると、背後から鋭い一太刀が命中した音が耳に入る。
振り向くと、刀を鞘におさめる白露と呆然とした様子の陽向が立ち尽くしていた。
「取り敢えず終わったな」
《ああ》
「い、いやいや!終わったって、そんなあっさり…ええ……」
《何をそんなに驚くことがある?》
「白露が刀使えるのは知ってるし、穂乃ちゃんの霊力を考えるとすごい技が出るのは分かる。
けど…先輩、さっきの紫の炎ってなんですか?あんなの見たことなかったんですけど…」
「紫の炎と書いて、紫炎だ」
普段は周囲を護る程度のものだが、炎に染みこませると毒性を持つ札だ。
高等部にいた頃から密かに特訓していたが、人前で使ったのは今が初めてだった。
「どういうものなんですか?」
「簡単に説明すると、炎の中でだけ効果を発揮する猛毒だ。仕組みはよく知らないけど、蔵の古い書物をもとに作った」
「やっぱり先輩の家ってお宝だらけなんですね…」
母のものだったらしい蔵には、まだまだ目を通していない道具や術について書かれた書物がある。
時々読み漁っているが、私では使えないものも多い。
「今度陽向にも何か持ってくるよ。接近戦で使えそうなやつがあったから」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
しばらく和やかな雰囲気に包まれていたが、インカム越しに緊迫した声が響いた。
『旧校舎2階、誰かいる?このままじゃ逃げ切れない…』
その直後、白露がその場から姿を消した。
「え、白露?」
「大丈夫だ。私たちも急ごう」
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