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第10章『かぼちゃの森』
第73話
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「夜の校舎って危なかったんじゃ…」
「すごい怖かった。先生たちは誰もいないし、生徒も誰も通ってないし…。
けど、前から高等部の先輩たちが歩いてきたんです。4人くらいいたけど、あんまり覚えてません」
後輩の話は更に続く。
「そのとき、チャッキーさんみたいなキーホルダーを投げたり蹴ったりして遊んでました。
感じ悪いなと思いつつ、注意するのが怖くて逃げちゃったんです。それからすぐ悲鳴が聞こえました」
おそらくあの分裂していた怪異だろう。
「振り返らずに走ってたんですけど、女の子がうずくまってて…。声をかけた後から記憶がありません」
「そうか。相当怖い思いをしたんだろうな。…話してくれてありがとう」
もしかすると、陽向たちの前に現れたという少女と同じかもしれない。
「今日白井先生は休みらしいけど、保健室は使っていいって許可をもらった。
あんまり無理すると体に障るだろうから、今はゆっくり休んでほしい」
「は、はい。ありがとうございます」
「ありがとうございました」
ふたりを狙っているというわけではなく、自分を見た相手がどうしているか気になっているのかもしれない。
話す人間もいれば黙っている人間もいるだろう。
「いきなり保健室の許可なんてとってどうしたんだ?」
「目撃者がいて、憑かれそうになってたから休ませたかったんだ。たまたま廊下で会った別の後輩に引き止められて保健室に行ってみたら、大変なことになってた」
「…何があった?」
採血されながらする話ではないんだろうが、そのまま放っておくわけにもいかない。
ふたりの後輩の話をすると、先生はかなり深刻そうな表情でこちらを見つめる。
「何か問題でもあったか?」
「…いや。分身しているようだというのが気になってな」
「言われてみればそうか」
私たちが現状確認しているのは、焼き払った白鷺学園に現れたものと陽向たちに襲いかかったものの2体だけだ。
だが、もしそれ以外にも複製されたものが大量発生しているとしたら…そう考えるとかなりまずい。
「やっぱり製作者を捕まえるしかないんだろうな」
「おそらく」
今のところ、有力と思われるのは今年現れるジャック・オ・ランタンが製作者という説だ。
噂になるほど強力ならあり得ない話ではない。
だが、最近の事件を追っているとどうも別の誰かが背後にいるような気がしてならないのだ。
「折原、どうした?」
「なんでもない。…なあ、入り口で気まずそうに立ってるのに声かけないのか?」
ふと顔をあげた瞬間、瞬と目があった。
「ごめん。ノックしたんだけど…」
「大丈夫。私の話は終わったから」
次の講義もリモートで出席する準備はしてあるし、問題ないだろう。
屋上で教授の話を聞きながら、人形と製作者について気になる記事を片っ端から調べた。
「すごい怖かった。先生たちは誰もいないし、生徒も誰も通ってないし…。
けど、前から高等部の先輩たちが歩いてきたんです。4人くらいいたけど、あんまり覚えてません」
後輩の話は更に続く。
「そのとき、チャッキーさんみたいなキーホルダーを投げたり蹴ったりして遊んでました。
感じ悪いなと思いつつ、注意するのが怖くて逃げちゃったんです。それからすぐ悲鳴が聞こえました」
おそらくあの分裂していた怪異だろう。
「振り返らずに走ってたんですけど、女の子がうずくまってて…。声をかけた後から記憶がありません」
「そうか。相当怖い思いをしたんだろうな。…話してくれてありがとう」
もしかすると、陽向たちの前に現れたという少女と同じかもしれない。
「今日白井先生は休みらしいけど、保健室は使っていいって許可をもらった。
あんまり無理すると体に障るだろうから、今はゆっくり休んでほしい」
「は、はい。ありがとうございます」
「ありがとうございました」
ふたりを狙っているというわけではなく、自分を見た相手がどうしているか気になっているのかもしれない。
話す人間もいれば黙っている人間もいるだろう。
「いきなり保健室の許可なんてとってどうしたんだ?」
「目撃者がいて、憑かれそうになってたから休ませたかったんだ。たまたま廊下で会った別の後輩に引き止められて保健室に行ってみたら、大変なことになってた」
「…何があった?」
採血されながらする話ではないんだろうが、そのまま放っておくわけにもいかない。
ふたりの後輩の話をすると、先生はかなり深刻そうな表情でこちらを見つめる。
「何か問題でもあったか?」
「…いや。分身しているようだというのが気になってな」
「言われてみればそうか」
私たちが現状確認しているのは、焼き払った白鷺学園に現れたものと陽向たちに襲いかかったものの2体だけだ。
だが、もしそれ以外にも複製されたものが大量発生しているとしたら…そう考えるとかなりまずい。
「やっぱり製作者を捕まえるしかないんだろうな」
「おそらく」
今のところ、有力と思われるのは今年現れるジャック・オ・ランタンが製作者という説だ。
噂になるほど強力ならあり得ない話ではない。
だが、最近の事件を追っているとどうも別の誰かが背後にいるような気がしてならないのだ。
「折原、どうした?」
「なんでもない。…なあ、入り口で気まずそうに立ってるのに声かけないのか?」
ふと顔をあげた瞬間、瞬と目があった。
「ごめん。ノックしたんだけど…」
「大丈夫。私の話は終わったから」
次の講義もリモートで出席する準備はしてあるし、問題ないだろう。
屋上で教授の話を聞きながら、人形と製作者について気になる記事を片っ端から調べた。
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