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第8章『サバト再び』
第60話
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「──燃えろ」
取り憑いた何かに向かって炎を放つ。
相手の死角から撃ったにも関わらず、あっさり避けられてしまった。
《ひ、ひい!》
《ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ》
どうやらヤマノケタイプらしく、そう簡単に引き剥がせそうにない。
顔を見られないよう屋台で交換してもらった狐の面をつけ、盗賊たちの前に姿を現す。
「おまえたち、盗んだものをきちんと持ち主に返すと誓うか?」
《な、なんとかしてください!》
《分かった、悪かったから…!》
泥棒一味の態度を見て、仕方がないのでなんとかすることに決めた。
「下がっていろ。出られそうならこの境内から出て、早速盗品を返してこい」
《は、はい!》
ぼたぼたと流れる血の色は真っ赤で、正直見ていられない。
残念ながら、喰われた妖はもう手遅れだろう。
《ハイレタハイレタ》
「…それしか言えないのか?そんなに山奥でもないし、そいつは人間じゃない」
性別がない妖だっているし、一応境内なのに何故入れたんだろう。
気になることは多々あるが、今はそんな事を考えている余裕はない。
《ケ、ケケ!ハイレタハイレタ!》
「少し黙っていてくれないか?」
札を複数並べ、火炎刃をかまえる。
相手は怯えることなく真っ直ぐ突進してきた。
「──爆炎」
勢いよく炎が舞い、相手は苦しげな声をあげた。
だが、それでも引き剥がせない。
このままでは憑かれている側も危険だが、外側からしか攻撃できない私にはもう打つ手がなかった。
「先輩!」
陽向が暴走する妖に向かって拳をおみまいしたが、それでもまだ立っている。
「骨の1本や2本はやったと思うんですけど…」
「ヤマノケに近いものに取り憑かれているみたいなんだ。ただ、かなり深く入りこんでいるのか攻撃が届いていない」
「結構やばい感じですね…」
なんとかふたりで応戦してみるが、入りこんだものは一切出てくる気配がない。
「さっきよりマシマシにぶん殴っちゃまずいですよね」
「ヘタしたら相手に怪我させることになる」
何か手はないか考えていると、どこからか水鉄砲の水が飛んできた。
…穂乃に持たせているものだ。
「お姉ちゃん!」
「陽向、方針が決まった」
ありったけの札と火炎刃を用意し、穂乃と白露に声をかける。
「あいつを私たちで押さえるから、穂乃は水鉄砲を当ててくれ。もうそれしか手がない」
「わ、分かった!」
穂乃は緊張すると外しやすくなる。
誰でもそうなんだろうが、今もきっと手が震えているだろう。
「大丈夫。穂乃ならできる」
「うん!」
火炎刃を投げつけ、札で周囲を囲んだ。
境内への被害はできるだけ避けたい。
「陽向、いけるか?」
「やります!」
《ケケケ…ア?》
陽向は私の札を掴みながら、しっかり両手で相手の足を掴んだ。
「これで動けないだろ?」
取り憑いた何かに向かって炎を放つ。
相手の死角から撃ったにも関わらず、あっさり避けられてしまった。
《ひ、ひい!》
《ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ》
どうやらヤマノケタイプらしく、そう簡単に引き剥がせそうにない。
顔を見られないよう屋台で交換してもらった狐の面をつけ、盗賊たちの前に姿を現す。
「おまえたち、盗んだものをきちんと持ち主に返すと誓うか?」
《な、なんとかしてください!》
《分かった、悪かったから…!》
泥棒一味の態度を見て、仕方がないのでなんとかすることに決めた。
「下がっていろ。出られそうならこの境内から出て、早速盗品を返してこい」
《は、はい!》
ぼたぼたと流れる血の色は真っ赤で、正直見ていられない。
残念ながら、喰われた妖はもう手遅れだろう。
《ハイレタハイレタ》
「…それしか言えないのか?そんなに山奥でもないし、そいつは人間じゃない」
性別がない妖だっているし、一応境内なのに何故入れたんだろう。
気になることは多々あるが、今はそんな事を考えている余裕はない。
《ケ、ケケ!ハイレタハイレタ!》
「少し黙っていてくれないか?」
札を複数並べ、火炎刃をかまえる。
相手は怯えることなく真っ直ぐ突進してきた。
「──爆炎」
勢いよく炎が舞い、相手は苦しげな声をあげた。
だが、それでも引き剥がせない。
このままでは憑かれている側も危険だが、外側からしか攻撃できない私にはもう打つ手がなかった。
「先輩!」
陽向が暴走する妖に向かって拳をおみまいしたが、それでもまだ立っている。
「骨の1本や2本はやったと思うんですけど…」
「ヤマノケに近いものに取り憑かれているみたいなんだ。ただ、かなり深く入りこんでいるのか攻撃が届いていない」
「結構やばい感じですね…」
なんとかふたりで応戦してみるが、入りこんだものは一切出てくる気配がない。
「さっきよりマシマシにぶん殴っちゃまずいですよね」
「ヘタしたら相手に怪我させることになる」
何か手はないか考えていると、どこからか水鉄砲の水が飛んできた。
…穂乃に持たせているものだ。
「お姉ちゃん!」
「陽向、方針が決まった」
ありったけの札と火炎刃を用意し、穂乃と白露に声をかける。
「あいつを私たちで押さえるから、穂乃は水鉄砲を当ててくれ。もうそれしか手がない」
「わ、分かった!」
穂乃は緊張すると外しやすくなる。
誰でもそうなんだろうが、今もきっと手が震えているだろう。
「大丈夫。穂乃ならできる」
「うん!」
火炎刃を投げつけ、札で周囲を囲んだ。
境内への被害はできるだけ避けたい。
「陽向、いけるか?」
「やります!」
《ケケケ…ア?》
陽向は私の札を掴みながら、しっかり両手で相手の足を掴んだ。
「これで動けないだろ?」
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