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第7章『十五夜の戯れ』
第49話
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「先輩、おはようございます!」
「おはようって時間でもないけどな」
陽向は今日も元気そうだ。
高等部の監査部は相変わらず人手不足らしく、今日も警備の手伝いの話をしにきた。
「先輩、ちょっと苛ついてます?」
「なんでそう思うんだ?」
「なんか表現しづらいんですけど、こう…一瞬殺気っぽいのが出てたから?」
何故か疑問形で返されてしまったものの、心当たりがあるのでなんとも言えない。
「怒ってないよ。久しぶりの警備の仕事か…なんて感傷に浸ってただけだ」
「ならいいですけど…。そういえば、噂はまだあやふやなことばっかりですね」
「そうだな。…ただ、大学棟でもちらほら話を聞いたよ」
噂がこんなに広く流れ出したことはほとんどなかったはずだ。
もしかして、私が大学生になったからなのか?
「何もないことを祈りましょう」
「そうだな。…それで、その封筒には何が入ってるんだ?」
「これは、奨学金の合否です。先輩が受けたやつ…全額免除の方です」
私がいてもいいのか迷ったが、訊く前に封を切られてしまった。
「…よし、全額免除!」
「おめでとう。今度祝いをやらないとな」
「桜良にも自慢しちゃいます。俺が全額ってことは桜良も全額だろうから」
ふたりの進路を詳しく知っているわけではないが、もう試験もパスしたならあとは出席日数を稼げば終わりだ。
「おめでとう。勉強、ふたりとも頑張ってたもんな」
「いやいや、どうしても合格したかっただけですから」
警備の話がまとまったところで、一旦バイト先へ向かう。
今日は金曜日なので夜仕事には穂乃も参加する。
現に、先に旧校舎で待っていると連絡がきた。
「詩乃ちゃん、よかったらこれ持っていって」
「いいんですか?」
「前にあげた花も枯らさないように大切にしてくれたでしょ?そういう人に受け取ってほしいの」
「ありがとうございます」
早速もらった花を放送室に生けさせてもらおうと向かったが、桜良が見当たらない。
それどころか、穂乃も見当たらなかった。
一抹の不安を抱えたまま、インカムのスイッチを入れる。
「…桜良、今どこにいる?」
『こんばんは。今は資料室です。歴史について書かれているものが沢山残っているので、何かヒントはないかと思って…。もしかして、何か用事があったんじゃ…』
「花をもらったから、放送室に生けてもらおうと思っただけだ。後でいいから、受け取ってもらえると…」
放送室の外からなんだか騒がしい声が聞こえる。
「…ごめん、ちょっと行ってくる」
『詩乃先輩?』
インカムは繋いだまま、喧しい声の方に向かって駆け出す。
「なあ、あれだろ?」
「なんでこんなところで舞ってるんですか?」
「学校でそういう格好とか、ハロウィンかよ」
小馬鹿にしたように嗤う3人に話しかけた。
「…おい」
大学部の先輩だろうがそんなことはどうでもいい。
今は、肩を震わせている女性の助けになりたかった。
「なんだおまえ、後輩か?」
「なんでもいいだろ。その人を侮辱するような発言は慎め。それより、なんでこんな時間に定時制の生徒でもない人間がいるんだ」
「…ちっ、見張りかよ」
「そんなのあたしたちの勝手じゃん!うるさいなあ…」
どう言いくるめようか迷っていると、女性が一言呟いた。
《失せろ》
あたりが一気に明るくなり、あまりの眩しさに目を閉じる。
次に目を開けたときには私と女性以外誰もいなくなっていた。
「おはようって時間でもないけどな」
陽向は今日も元気そうだ。
高等部の監査部は相変わらず人手不足らしく、今日も警備の手伝いの話をしにきた。
「先輩、ちょっと苛ついてます?」
「なんでそう思うんだ?」
「なんか表現しづらいんですけど、こう…一瞬殺気っぽいのが出てたから?」
何故か疑問形で返されてしまったものの、心当たりがあるのでなんとも言えない。
「怒ってないよ。久しぶりの警備の仕事か…なんて感傷に浸ってただけだ」
「ならいいですけど…。そういえば、噂はまだあやふやなことばっかりですね」
「そうだな。…ただ、大学棟でもちらほら話を聞いたよ」
噂がこんなに広く流れ出したことはほとんどなかったはずだ。
もしかして、私が大学生になったからなのか?
「何もないことを祈りましょう」
「そうだな。…それで、その封筒には何が入ってるんだ?」
「これは、奨学金の合否です。先輩が受けたやつ…全額免除の方です」
私がいてもいいのか迷ったが、訊く前に封を切られてしまった。
「…よし、全額免除!」
「おめでとう。今度祝いをやらないとな」
「桜良にも自慢しちゃいます。俺が全額ってことは桜良も全額だろうから」
ふたりの進路を詳しく知っているわけではないが、もう試験もパスしたならあとは出席日数を稼げば終わりだ。
「おめでとう。勉強、ふたりとも頑張ってたもんな」
「いやいや、どうしても合格したかっただけですから」
警備の話がまとまったところで、一旦バイト先へ向かう。
今日は金曜日なので夜仕事には穂乃も参加する。
現に、先に旧校舎で待っていると連絡がきた。
「詩乃ちゃん、よかったらこれ持っていって」
「いいんですか?」
「前にあげた花も枯らさないように大切にしてくれたでしょ?そういう人に受け取ってほしいの」
「ありがとうございます」
早速もらった花を放送室に生けさせてもらおうと向かったが、桜良が見当たらない。
それどころか、穂乃も見当たらなかった。
一抹の不安を抱えたまま、インカムのスイッチを入れる。
「…桜良、今どこにいる?」
『こんばんは。今は資料室です。歴史について書かれているものが沢山残っているので、何かヒントはないかと思って…。もしかして、何か用事があったんじゃ…』
「花をもらったから、放送室に生けてもらおうと思っただけだ。後でいいから、受け取ってもらえると…」
放送室の外からなんだか騒がしい声が聞こえる。
「…ごめん、ちょっと行ってくる」
『詩乃先輩?』
インカムは繋いだまま、喧しい声の方に向かって駆け出す。
「なあ、あれだろ?」
「なんでこんなところで舞ってるんですか?」
「学校でそういう格好とか、ハロウィンかよ」
小馬鹿にしたように嗤う3人に話しかけた。
「…おい」
大学部の先輩だろうがそんなことはどうでもいい。
今は、肩を震わせている女性の助けになりたかった。
「なんだおまえ、後輩か?」
「なんでもいいだろ。その人を侮辱するような発言は慎め。それより、なんでこんな時間に定時制の生徒でもない人間がいるんだ」
「…ちっ、見張りかよ」
「そんなのあたしたちの勝手じゃん!うるさいなあ…」
どう言いくるめようか迷っていると、女性が一言呟いた。
《失せろ》
あたりが一気に明るくなり、あまりの眩しさに目を閉じる。
次に目を開けたときには私と女性以外誰もいなくなっていた。
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