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第6章『階段の怪談』
第40話
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「ごちそうさまでした」
「白露も美味しかったか?」
《…ああ》
はじめは無言だった白露も、最近は少しずつ感想をくれるようになった。
「お姉ちゃん、旅行の予定が決まったんだけど、その…」
「何かあったのか?」
「美術館に行ってもいい?」
「反対する理由がない。体験コーナーもあるみたいだから行ってみるといい」
「でも…」
恐らく穂乃は金銭面のことを心配しているのだろう。
だが、普段節約して母の遺産にも手をつけていない為一切問題ない。
「旅行、楽しんでこい」
「ありがとう」
ひとまず穂乃のことは白露に任せて、今は階段での怪談の噂に集中させてもらおう。
穂乃を早く寝かせ、午前6時に駅まで送る。
「お土産買ってくるね!」
「私のことは気にしなくていいから、沢山楽しんでくれ。元気で帰ってきてくれることが1番だから」
「ありがとう。いってきます」
穂乃を見送ったその足で旧校舎へ向かうと、随分顔色がよくなった先生が待っていた。
「今日は眠くないのか?」
「…なんらかの原因で呪いが解けたみたいでな」
「そうか。よかった」
あくまで何も知らない風を装い、いつもどおり検査を受ける。
「最近貧血をおこさなかったか?」
「そういえば少し目眩がしたような…」
「鉄分不足だ。これでも飲んでおけ」
渡されたサプリを早速飲んで、色々負った傷を診てもらった。
傷痕が残ってしまうと言われている傷もあるが、今更気にしていない。
「階段の怪談の噂を検証するらしいな」
「検証はあくまで最終手段だ。けど、多分自分たちでやらないと相手の正体を掴めないだろう?」
「なら俺もやる。…『廃部されて数年経つ天文部の望遠鏡の修理』だ」
「ありがとう」
どんな文言で入ろうか考えていたが、それなら堂々と校内を歩き回っても大丈夫そうだ。
陽向たちにメッセージを送り、夜までバイト先へ向かう。
「詩乃ちゃん、また楽器の扱い上手くなったんじゃない?」
「そうでしょうか?」
「チューニングもそうだけど、試し弾きの技術が上がってる気がする。もう応用もマスターしつつあるよね」
「ありがとうございます」
バイト先はほとんど変えていない。
強いて言えば、しばらく休業する喫茶店の仕事が休みになっているくらいだ。
「詩乃ちゃん、これ今月分。確認しといて」
「明らかに多いです」
「夏のボーナスってことで。シフト多めに入ってくれて助かってるし、詩乃ちゃんいるとお客さん増えるから」
「ありがとうございます」
店長からの厚意をありがたく受け取り、挨拶をしてから店を後にする。
学校へ向かおうとした直後、陽向から連絡が入っていた。
【遊び半分で怪談をした生徒がひとり消えたそうです】
「白露も美味しかったか?」
《…ああ》
はじめは無言だった白露も、最近は少しずつ感想をくれるようになった。
「お姉ちゃん、旅行の予定が決まったんだけど、その…」
「何かあったのか?」
「美術館に行ってもいい?」
「反対する理由がない。体験コーナーもあるみたいだから行ってみるといい」
「でも…」
恐らく穂乃は金銭面のことを心配しているのだろう。
だが、普段節約して母の遺産にも手をつけていない為一切問題ない。
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「ありがとう」
ひとまず穂乃のことは白露に任せて、今は階段での怪談の噂に集中させてもらおう。
穂乃を早く寝かせ、午前6時に駅まで送る。
「お土産買ってくるね!」
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「ありがとう。いってきます」
穂乃を見送ったその足で旧校舎へ向かうと、随分顔色がよくなった先生が待っていた。
「今日は眠くないのか?」
「…なんらかの原因で呪いが解けたみたいでな」
「そうか。よかった」
あくまで何も知らない風を装い、いつもどおり検査を受ける。
「最近貧血をおこさなかったか?」
「そういえば少し目眩がしたような…」
「鉄分不足だ。これでも飲んでおけ」
渡されたサプリを早速飲んで、色々負った傷を診てもらった。
傷痕が残ってしまうと言われている傷もあるが、今更気にしていない。
「階段の怪談の噂を検証するらしいな」
「検証はあくまで最終手段だ。けど、多分自分たちでやらないと相手の正体を掴めないだろう?」
「なら俺もやる。…『廃部されて数年経つ天文部の望遠鏡の修理』だ」
「ありがとう」
どんな文言で入ろうか考えていたが、それなら堂々と校内を歩き回っても大丈夫そうだ。
陽向たちにメッセージを送り、夜までバイト先へ向かう。
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「そうでしょうか?」
「チューニングもそうだけど、試し弾きの技術が上がってる気がする。もう応用もマスターしつつあるよね」
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「ありがとうございます」
店長からの厚意をありがたく受け取り、挨拶をしてから店を後にする。
学校へ向かおうとした直後、陽向から連絡が入っていた。
【遊び半分で怪談をした生徒がひとり消えたそうです】
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