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第5章『星逢いの空』
第32話
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放送室の前、一緒についてきた黒猫に声をかける。
「結月は手伝ってくれないのか?」
《仕方ないからつきあってあげるわ》
《ありがとうございます…!》
さざめは結月になついているように見える。
「取り敢えず放送室に行こう」
《そうね》
結月はそう言って少女の姿に変身した。
さざめはかなり驚いていたが、夜の旧校舎の雰囲気が苦手なのか足早についてくる。
「桜良、入っていいか?」
「詩乃先輩…?」
扉を開けた桜良は何かを察知したのか、すぐに私たちを招き入れてくれた。
「あの、その子は一体…」
《さざめです》
「実はこの子について頼みたいことがあってきたんだ」
預かってほしいことを話す前に事情を説明した。
羽衣を持っていることから、星合の空の噂と関連がある可能性があること。
羽衣を壊されてしまい、空へ戻れなくなっていること。
材料は手に入れられるものであるものの、滅多に手に入らない高級品であること。
「それは大変ですね。そんな高級品を手に入れられるんですか?」
「それはもう目処がたってるから大丈夫なんだ。ただ、今夜すぐには手に入れられない」
結月とさざめが話している間に、確定している事実をひとつ告げる。
「七夕の夜までに間に合わせられないと、多分住んでいた場所に戻れなくなる。…下手をすれば消滅するかもしれない」
この学園の中庭に住んでいる妖にも、今回に近い危機が迫ったことがある。
慣れているとはいえ、今回は材料を集めなければならない。
「危険な状態ということですね」
「ああ。それに、天女を狙ってくる奴等がいるんだ。本当は私が護ってやりたいけど、迂闊に外に連れ出せばそれだけ危険が伴う」
「…つまり、ここで匿っていれば大丈夫ということですか?」
「頼めるか?」
「あまり話すのが得意ではないので、陽向と一緒でもいいですか?」
「勿論だ」
桜良はすぐ陽向に連絡して、来てもらえることになったようだ。
「私は少し外すけど、何かあればすぐ連絡してくれ」
「分かりました」
《行っちゃうの?》
「心配しなくても、ここにいれば安全だ。じゃあいってくる」
すぐ外に出たのは、何かが近づいてきている気配がしたからだ。
すぐに紅をさし、火炎刃を作り出す。
「獲物は私だろ?こっちに来れば喰らえるかもしれないぞ」
できるだけ広い場所に出るため、旧校舎と新校舎の間のスペースまで駆け抜ける。
《異質で美味そうナヤつ、みーツケたア》
にたあと嬉しそうに笑う相手に向かって火炎刃を投げつけたが、威力が足りなかったのかあまりダメージを受けている様子はない。
《痛イナア…絶対食ベル!》
札の数をさらに足し、今度は足元を狙って思いきり投げた。
《ギャア!》
相手は悲鳴をあげ、その場で気絶する。
「…誰の差し金か訊きたかったのに、やりすぎた」
「結月は手伝ってくれないのか?」
《仕方ないからつきあってあげるわ》
《ありがとうございます…!》
さざめは結月になついているように見える。
「取り敢えず放送室に行こう」
《そうね》
結月はそう言って少女の姿に変身した。
さざめはかなり驚いていたが、夜の旧校舎の雰囲気が苦手なのか足早についてくる。
「桜良、入っていいか?」
「詩乃先輩…?」
扉を開けた桜良は何かを察知したのか、すぐに私たちを招き入れてくれた。
「あの、その子は一体…」
《さざめです》
「実はこの子について頼みたいことがあってきたんだ」
預かってほしいことを話す前に事情を説明した。
羽衣を持っていることから、星合の空の噂と関連がある可能性があること。
羽衣を壊されてしまい、空へ戻れなくなっていること。
材料は手に入れられるものであるものの、滅多に手に入らない高級品であること。
「それは大変ですね。そんな高級品を手に入れられるんですか?」
「それはもう目処がたってるから大丈夫なんだ。ただ、今夜すぐには手に入れられない」
結月とさざめが話している間に、確定している事実をひとつ告げる。
「七夕の夜までに間に合わせられないと、多分住んでいた場所に戻れなくなる。…下手をすれば消滅するかもしれない」
この学園の中庭に住んでいる妖にも、今回に近い危機が迫ったことがある。
慣れているとはいえ、今回は材料を集めなければならない。
「危険な状態ということですね」
「ああ。それに、天女を狙ってくる奴等がいるんだ。本当は私が護ってやりたいけど、迂闊に外に連れ出せばそれだけ危険が伴う」
「…つまり、ここで匿っていれば大丈夫ということですか?」
「頼めるか?」
「あまり話すのが得意ではないので、陽向と一緒でもいいですか?」
「勿論だ」
桜良はすぐ陽向に連絡して、来てもらえることになったようだ。
「私は少し外すけど、何かあればすぐ連絡してくれ」
「分かりました」
《行っちゃうの?》
「心配しなくても、ここにいれば安全だ。じゃあいってくる」
すぐ外に出たのは、何かが近づいてきている気配がしたからだ。
すぐに紅をさし、火炎刃を作り出す。
「獲物は私だろ?こっちに来れば喰らえるかもしれないぞ」
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にたあと嬉しそうに笑う相手に向かって火炎刃を投げつけたが、威力が足りなかったのかあまりダメージを受けている様子はない。
《痛イナア…絶対食ベル!》
札の数をさらに足し、今度は足元を狙って思いきり投げた。
《ギャア!》
相手は悲鳴をあげ、その場で気絶する。
「…誰の差し金か訊きたかったのに、やりすぎた」
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