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第4章『操り糸』
第25話
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「…起きたか」
いつの間にか腕から針が抜かれていて、寝起きの頭で思考を巡らせる。
「朝の血液検査」
「ああ、そういえばそういう話になってたな…」
「起こすのも悪い気がして、寝ている間に採らせてもらった」
先生の顔を凝視したものの、やっぱりくまはできていない。
「最近ずっと忙しそうだけど、体調が悪くなったりしてないのか?」
「俺はあまり睡眠を必要としないから、この程度なら問題ない。
瞬からマリオネットについて報告を受けたが、一対になっているようだという話は事実か?」
「うん。陽向たちから服の特徴を教えてもらったんだけど、間違いないと思う」
デザインは全く同じで、胸下のリボンや服のフリルまで同じ場所についていた。
そのうえ、髪の長さまで変わらないとなるとほぼ間違いないだろう。
「両方同時に倒さないといけないわけか」
「今のところ、出現時間がばらばらだから両方探すのは難しい」
「…今夜決着をつけたい。時間はあるか?」
「あるけど…先生は平気なのか?」
「生徒同士で殺し合いさせるわけにはいかないからな」
室星という人は本当にいい先生だ。
それに、瞬のことが心配なんだろう。
「今日はバイト終わりに監査室に顔を出すよ」
「それまでに検査結果を出しておく」
「ありがとう」
土曜日ということもあり、人はそんなに集まっていない。
大学棟へ顔を出すか迷ったが、ある約束をしていたのを思い出して小走りで向かった。
「伴田、おはよう」
「詩乃ちゃん、来てくれてありがとう」
高等部で知り合った伴田とは今でも交流が続いている。
彼女は高等部にいた頃から芸術系専攻だったため、時々絵を見せてもらっているのだ。
「相変わらず綺麗な絵だな。ここに描かれている少女の心は晴れそうだ」
「ありがとう。詩乃ちゃんにそう言ってもらえると心強いな」
一時期やめてしまおうか迷っていた時期もあったが、今は夢を叶えようと前を向いている。
「そういえば、変な噂を聞いたの。夜になると、ここにいるマリオネットが歩きだすって…」
はっと顔をあげると、そこには昨夜見たものと全く同じマリオネットがあった。
「おかしなこととか、変わったことはないか?」
「先輩によると、マリオネットがふたつ増えてるみたい。だから噂になってるのかな…」
間違いなく危険なものだ。
どうしたものか迷っていると、いつの間にか視界からマリオネットが一対消えていた。
「ありがとう。…伴田、また絵を見に来てもいいかな?」
「勿論!待ってるね」
そのまま急いで高校棟へ戻ろうとすると、背後から誰かに殴られる。
「あなたは──」
先日友人の記憶ごとマリオネットを忘れてしまった少女は、バットを振り上げ襲いかかってきた。
いつの間にか腕から針が抜かれていて、寝起きの頭で思考を巡らせる。
「朝の血液検査」
「ああ、そういえばそういう話になってたな…」
「起こすのも悪い気がして、寝ている間に採らせてもらった」
先生の顔を凝視したものの、やっぱりくまはできていない。
「最近ずっと忙しそうだけど、体調が悪くなったりしてないのか?」
「俺はあまり睡眠を必要としないから、この程度なら問題ない。
瞬からマリオネットについて報告を受けたが、一対になっているようだという話は事実か?」
「うん。陽向たちから服の特徴を教えてもらったんだけど、間違いないと思う」
デザインは全く同じで、胸下のリボンや服のフリルまで同じ場所についていた。
そのうえ、髪の長さまで変わらないとなるとほぼ間違いないだろう。
「両方同時に倒さないといけないわけか」
「今のところ、出現時間がばらばらだから両方探すのは難しい」
「…今夜決着をつけたい。時間はあるか?」
「あるけど…先生は平気なのか?」
「生徒同士で殺し合いさせるわけにはいかないからな」
室星という人は本当にいい先生だ。
それに、瞬のことが心配なんだろう。
「今日はバイト終わりに監査室に顔を出すよ」
「それまでに検査結果を出しておく」
「ありがとう」
土曜日ということもあり、人はそんなに集まっていない。
大学棟へ顔を出すか迷ったが、ある約束をしていたのを思い出して小走りで向かった。
「伴田、おはよう」
「詩乃ちゃん、来てくれてありがとう」
高等部で知り合った伴田とは今でも交流が続いている。
彼女は高等部にいた頃から芸術系専攻だったため、時々絵を見せてもらっているのだ。
「相変わらず綺麗な絵だな。ここに描かれている少女の心は晴れそうだ」
「ありがとう。詩乃ちゃんにそう言ってもらえると心強いな」
一時期やめてしまおうか迷っていた時期もあったが、今は夢を叶えようと前を向いている。
「そういえば、変な噂を聞いたの。夜になると、ここにいるマリオネットが歩きだすって…」
はっと顔をあげると、そこには昨夜見たものと全く同じマリオネットがあった。
「おかしなこととか、変わったことはないか?」
「先輩によると、マリオネットがふたつ増えてるみたい。だから噂になってるのかな…」
間違いなく危険なものだ。
どうしたものか迷っていると、いつの間にか視界からマリオネットが一対消えていた。
「ありがとう。…伴田、また絵を見に来てもいいかな?」
「勿論!待ってるね」
そのまま急いで高校棟へ戻ろうとすると、背後から誰かに殴られる。
「あなたは──」
先日友人の記憶ごとマリオネットを忘れてしまった少女は、バットを振り上げ襲いかかってきた。
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