25 / 309
第4章『操り糸』
第21話
しおりを挟む
「遅くなってごめん」
「それは全然いいんですけど…先輩、大丈夫ですか?」
「ああ。点滴はもう終わったし、先生からも動いていいって言われた」
全力を出したら死ぬぞ、とは言われたが、調査を中止するつもりはない。
「お姉ちゃん、無理そうなら言ってね」
「ありがとう。…さて、みんなが集めた噂を総合して考えたいんだが…」
体に操り糸がくっつけられ、四肢を折られるというもの、糸がついている間寿命を吸われながら欲望のまま動くというもの…とにかくバリエーションが多かった。
「どの噂も操り糸の先にいる人物について説明がない。あとは糸が体に巻きつくことくらいか。…場所を絞るのは難しいな」
目撃情報が数件あったものの、場所がばらばらすぎる。
「こういうときってどうやって探してるの?」
「校内探索だな。今日はまだ先生忙しくて来られないし、どうチーム分けしようか」
「僕もいるよ」
ふと扉に視線をやると、瞬がにっこり微笑んでいる。
「ちび、なんでここに…」
「先生が忙しそうだから、体育の授業代わりに原因を突き止めてこいって」
瞬は室星先生の生徒だった。
悲惨ないじめに遭い自ら命を絶った後、色々あって今は友人のひとりだ。
夜仕事もよく手伝ってもらっていて、頼りにさせてもらっている。
「んじゃ、穂乃ちゃんは先輩かちびと組んだ方が、」
「…いや。穂乃、悪いけど今夜は陽向と一緒にいてくれないか?」
「私はいいけど…陽向君、嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ」
「ありがとう。なら決まりだな」
陽向が私に向かってやってくれましたねと口パクで話したのを完全スルーして、先に瞬と外へ出た。
「ひな君に無茶させないようにするため?」
「ああ。流石に穂乃の前で死ぬわけにはいかないたろ?」
陽向は穂乃の前では死なない程度に調査してくれる。
いくらほぼ不死の体とはいえ、もっと自分を大切にしてほしい。
「それに、目星がついているから」
「え、そうなの?」
「うん。多分だけど、このあたりにいる」
目撃情報の内容は姿形も場所もばらばらだが、ある特徴が見られた。
「マリオネットの目撃情報は、大きな姿見がある階段が近くにある。…あと出没していないのは2ヶ所あるけど、片方は今修繕工事で通れない。
旧校舎だから人通りも少ない。…だからこそ、ひとりくらい糸に繋いでもばれないんだ」
「そっか、だからひな君たちを新校舎に行かせたんだね」
「…瞬、悪いが手伝ってくれるか?」
「勿論!」
旧校舎3階の階段下に、大きな姿見がある。
そこにマリオネットがぽつんと置かれていた。
「…行こう」
「それは全然いいんですけど…先輩、大丈夫ですか?」
「ああ。点滴はもう終わったし、先生からも動いていいって言われた」
全力を出したら死ぬぞ、とは言われたが、調査を中止するつもりはない。
「お姉ちゃん、無理そうなら言ってね」
「ありがとう。…さて、みんなが集めた噂を総合して考えたいんだが…」
体に操り糸がくっつけられ、四肢を折られるというもの、糸がついている間寿命を吸われながら欲望のまま動くというもの…とにかくバリエーションが多かった。
「どの噂も操り糸の先にいる人物について説明がない。あとは糸が体に巻きつくことくらいか。…場所を絞るのは難しいな」
目撃情報が数件あったものの、場所がばらばらすぎる。
「こういうときってどうやって探してるの?」
「校内探索だな。今日はまだ先生忙しくて来られないし、どうチーム分けしようか」
「僕もいるよ」
ふと扉に視線をやると、瞬がにっこり微笑んでいる。
「ちび、なんでここに…」
「先生が忙しそうだから、体育の授業代わりに原因を突き止めてこいって」
瞬は室星先生の生徒だった。
悲惨ないじめに遭い自ら命を絶った後、色々あって今は友人のひとりだ。
夜仕事もよく手伝ってもらっていて、頼りにさせてもらっている。
「んじゃ、穂乃ちゃんは先輩かちびと組んだ方が、」
「…いや。穂乃、悪いけど今夜は陽向と一緒にいてくれないか?」
「私はいいけど…陽向君、嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ」
「ありがとう。なら決まりだな」
陽向が私に向かってやってくれましたねと口パクで話したのを完全スルーして、先に瞬と外へ出た。
「ひな君に無茶させないようにするため?」
「ああ。流石に穂乃の前で死ぬわけにはいかないたろ?」
陽向は穂乃の前では死なない程度に調査してくれる。
いくらほぼ不死の体とはいえ、もっと自分を大切にしてほしい。
「それに、目星がついているから」
「え、そうなの?」
「うん。多分だけど、このあたりにいる」
目撃情報の内容は姿形も場所もばらばらだが、ある特徴が見られた。
「マリオネットの目撃情報は、大きな姿見がある階段が近くにある。…あと出没していないのは2ヶ所あるけど、片方は今修繕工事で通れない。
旧校舎だから人通りも少ない。…だからこそ、ひとりくらい糸に繋いでもばれないんだ」
「そっか、だからひな君たちを新校舎に行かせたんだね」
「…瞬、悪いが手伝ってくれるか?」
「勿論!」
旧校舎3階の階段下に、大きな姿見がある。
そこにマリオネットがぽつんと置かれていた。
「…行こう」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
桜月真澄
ライト文芸
朧咲夜最終話
+++
愛してる。誰よりもーー
でも、だからこそ……
さようなら。
2022.5.7~5.31
Sakuragi presents
サレ夫が愛した女性たちの追憶
しらかわからし
ライト文芸
この小説は、某ブログで掲載していたものですが、この度閉鎖しアクアポリス様だけで掲載いたします。
愛と欲望、裏切りと再生をテーマに主人公自身が女性たちと交錯し、互いに影響をし合いながら変化していく、様子を描きました。暫く、公開を停止していたのですが、本日(2024年10月5日)より再公開させて頂きました。
表紙の画像はCANVA様からお借りしました。
腐っている侍女
桃井すもも
恋愛
私は腐っております。
腐った侍女でございます。
腐った眼(まなこ)で、今日も麗しの殿下を盗み視るのです。
出来過ぎ上司の侍従が何やらちゃちゃを入れて来ますが、そんなの関係ありません。
短編なのに更に短めです。
内容腐り切っております。
お目汚し確実ですので、我こそは腐ってみたいと思われる猛者読者様、どうぞ心から腐ってお楽しみ下さい。
昭和のネタが入るのはご勘弁。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
夜紅の憲兵姫
黒蝶
ライト文芸
烏合学園監査部…それは、生徒会役員とはまた別の権威を持った独立部署である。
その長たる高校部2年生の折原詩乃(おりはら しの)は忙しい毎日をおくっていた。
妹の穂乃(みの)を守るため、学生ながらバイトを複数掛け持ちしている。
…表向きはそういう学生だ。
「普通のものと変わらないと思うぞ。…使用用途以外は」
「あんな物騒なことになってるなんて、誰も思ってないでしょうからね…」
ちゃらい見た目の真面目な後輩の陽向。
暗い過去と後悔を抱えて生きる教師、室星。
普通の人間とは違う世界に干渉し、他の人々との出逢いや別れを繰り返しながら、詩乃は自分が信じた道を歩き続ける。
これは、ある少女を取り巻く世界の物語。
桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
設樂理沙
ライト文芸
水野俊と滝谷桃は社内恋愛で結婚。順風満帆なふたりの結婚生活が
桃の学生時代の友人、淡井恵子の出現で脅かされることになる。
学生時代に恋人に手酷く振られるという経験をした恵子は、友だちの
幸せが妬ましく許せないのだった。恵子は分かっていなかった。
お天道様はちゃんと見てらっしゃる、ということを。人を不幸にして
自分だけが幸せになれるとでも? そう、そのような痛いことを
仕出かしていても、恵子は幸せになれると思っていたのだった。
異動でやってきた新井賢一に好意を持つ恵子……の気持ちは
はたして―――彼に届くのだろうか?
そしてそんな恵子の様子を密かに、見ている2つの目があった。
夫の俊の裏切りで激しく心を傷付けられた妻の桃が、
夫を許せる日は来るのだろうか?
―――――――――――――――――――――――
2024.6.1~2024.6.5
ぽわんとどんなstoryにしようか、イメージ(30000字くらい)。
執筆開始
2024.6.7~2024.10.5 78400字 番外編2つ
❦イラストは、AI生成画像自作
高嶺のガワオタ
葉咲透織
ライト文芸
ニート満喫中の飛天の元に、幼なじみの次郎からバイトのヘルプに来てほしいという電話がかかってくる。特撮嫌いなのに、バイト先はヒーローとの写真撮影会の現場だった。ヒーロースーツ着用状態で助けたのは、清楚な美人で……!? 訳アリニートイケメンとガワオタお嬢様の青春ラブストーリー。
※個人ブログ、エブリスタでも公開しています。
【本編完結】繚乱ロンド
由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 11/19 『夫の疑問、妻の確信3』
本編は完結。番外編を不定期で更新。
11/15
*『夫の疑問、妻の確信2』
11/11
*『夫の疑問、妻の確信 1 』
10/12
*『いつもあなたの幸せを。』
9/14
*『伝統行事』
8/24
*『ひとりがたり~人生を振り返る~』
お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで
*『日常のひとこま』は公開終了しました。
7月31日
*『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。
6/18
*『ある時代の出来事』
6/8
*女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。
*光と影 全1頁。
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和6年1/7
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
星渦のエンコーダー
山森むむむ
ライト文芸
繭(コクーン)というコックピットのような機械に入ることにより、体に埋め込まれたチップで精神を電脳世界に移行させることができる時代。世界は平和の中、現実ベースの身体能力とアバターの固有能力、そして電脳世界のありえない物理法則を利用して戦うレースゲーム、「ネオトラバース」が人気となっている。プロデビューし連戦連勝の戦績を誇る少年・東雲柳は、周囲からは順風満帆の人生を送っているかのように見えた。その心の断片を知る幼馴染の桐崎クリスタル(クリス)は彼を想う恋心に振り回される日々。しかしある日、試合中の柳が突然、激痛とフラッシュバックに襲われ倒れる。搬送先の病院で受けた治療のセッションは、彼を意のままに操ろうとする陰謀に繋がっていた。柳が競技から離れてしまうことを危惧して、クリスは自身もネオトラバース選手の道を志願する。
二人は名門・未来ノ島学園付属高専ネオトラバース部に入部するが、その青春は部活動だけでは終わらなかった。サスペンスとバーチャルリアリティスポーツバトル、学校生活の裏で繰り広げられる戦い、そしてクリスの一途な恋心。柳の抱える過去と大きな傷跡。数々の事件と彼らの心の動きが交錯する中、未来ノ島の日々は一体どう変わるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる