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第3章『雨に魅入られたもの』
第14話
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急いで入り口まで駆け下りると、がたがた震える少女がいた。
「あの…何かあったのか?」
「あ、雨、雨女が、友だちを…」
まさかこんな早い時間から活動するとは思わなかった。
他のみんなに知らせるべきか迷ったが、一旦ひとりで調べてみることにする。
「詳しく聞かせてもらえないか?」
「友だちと、おやつを買いに行って、そこで…」
少女は頭を押さえ、その場にうずくまる。
「大丈夫か?」
「あ…はい。ありがとうございます。私、なんでこんなところにいるんだっけ…」
「…友だちの話の途中だったんだ。覚えてないかな?」
「友だち?誰のこと?…ごめんなさい、もう行かないと。声をかけてくれてありがとう」
そのまま走り去ってしまった彼女の中から、明らかに記憶が抜け落ちている。
恐怖から誰かの存在を完全に忘れるとは考えにくい。
雨女の顔と共に忘れ去られてしまう人間が現れたとなるとかなり厄介だ。
「…さて、どうするか」
「何かあったのか?」
後ろを向くと、先生が両手いっぱいに教材を持って立っている。
「実は、もう雨女が現れたみたいなんだ」
「…高等部での噂の広まりが早いのが原因かもしれない」
「そうなのか?」
「ああ」
先生によると、授業をするクラスそれぞれで若干内容が異なる噂が流れているらしい。
それにより、雨女の噂の力は半端じゃなく強くなっているようだ。
「だけど、さっき話しを聞こうとした相手は、友人の存在ごと雨女を忘れていた」
「恐怖が原因ではなさそうだな」
先生も同じことを考えたのかと内心苦笑しつつ、噂について整理した紙を見せた。
「朝の時点ではこんな感じだったんだけど、何か追加事項はあるか?」
「…少し待ってくれ。先に教材を置いてくる。時間があるときにでも旧校舎へ顔を出してくれればいい」
「分かった」
と入ったものの、これから旧校舎へ行こうと思っていたところだ。
先生に負担をかけるわけには行かないので、いつもは使わない道を通る。
それにしても、これだけ噂が広まるのが早いのは久しぶりかもしれない。
「あれ、先輩?」
「陽向もさぼりか」
「まあ、そんなところです」
陽向はみんなに親切に振る舞っているが、心を許している相手は少ない。
それに、桜良が気味悪がられているのもあって最低限しか授業に出席していないのだ。
「そういえば、最近桜良が楽しそうなんです。俺以外とも関わってほしいって思ってたから、本当によかった」
「…そうか」
「すみません、本題なんですけど──」
それから陽向も先生同様、噂の広まり方が異常だと教えてくれた。
内容を見ていくうちに、ある違和感に気づく。
「これは…」
「あの…何かあったのか?」
「あ、雨、雨女が、友だちを…」
まさかこんな早い時間から活動するとは思わなかった。
他のみんなに知らせるべきか迷ったが、一旦ひとりで調べてみることにする。
「詳しく聞かせてもらえないか?」
「友だちと、おやつを買いに行って、そこで…」
少女は頭を押さえ、その場にうずくまる。
「大丈夫か?」
「あ…はい。ありがとうございます。私、なんでこんなところにいるんだっけ…」
「…友だちの話の途中だったんだ。覚えてないかな?」
「友だち?誰のこと?…ごめんなさい、もう行かないと。声をかけてくれてありがとう」
そのまま走り去ってしまった彼女の中から、明らかに記憶が抜け落ちている。
恐怖から誰かの存在を完全に忘れるとは考えにくい。
雨女の顔と共に忘れ去られてしまう人間が現れたとなるとかなり厄介だ。
「…さて、どうするか」
「何かあったのか?」
後ろを向くと、先生が両手いっぱいに教材を持って立っている。
「実は、もう雨女が現れたみたいなんだ」
「…高等部での噂の広まりが早いのが原因かもしれない」
「そうなのか?」
「ああ」
先生によると、授業をするクラスそれぞれで若干内容が異なる噂が流れているらしい。
それにより、雨女の噂の力は半端じゃなく強くなっているようだ。
「だけど、さっき話しを聞こうとした相手は、友人の存在ごと雨女を忘れていた」
「恐怖が原因ではなさそうだな」
先生も同じことを考えたのかと内心苦笑しつつ、噂について整理した紙を見せた。
「朝の時点ではこんな感じだったんだけど、何か追加事項はあるか?」
「…少し待ってくれ。先に教材を置いてくる。時間があるときにでも旧校舎へ顔を出してくれればいい」
「分かった」
と入ったものの、これから旧校舎へ行こうと思っていたところだ。
先生に負担をかけるわけには行かないので、いつもは使わない道を通る。
それにしても、これだけ噂が広まるのが早いのは久しぶりかもしれない。
「あれ、先輩?」
「陽向もさぼりか」
「まあ、そんなところです」
陽向はみんなに親切に振る舞っているが、心を許している相手は少ない。
それに、桜良が気味悪がられているのもあって最低限しか授業に出席していないのだ。
「そういえば、最近桜良が楽しそうなんです。俺以外とも関わってほしいって思ってたから、本当によかった」
「…そうか」
「すみません、本題なんですけど──」
それから陽向も先生同様、噂の広まり方が異常だと教えてくれた。
内容を見ていくうちに、ある違和感に気づく。
「これは…」
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