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第2章『変わりつつある体質』
第10話
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「……目が覚めたか」
次に目を開けたとき、見覚えのある真っ白なベッドの上にいた。
「ごめん。どうしても力尽きて寝てた」
「寝たことに関しては別にいいが、流石に無理しすぎだ」
「ごめん」
手に管が2本ついていて、気づかないうちにそんなに体力を使っていたのかと苦笑する。
「どのくらい力を使った?」
「分からない。あ、でも火炎刃は2回出した」
「……そうか」
先生が悲しそうな目をしているのは、私がどんどん人間離れしてきているからだ。
今までなら、火炎刃を一度出しては倒れていた。
特に満月近くになると霊力が激減してしまうため、使えないことも少なくなかったのだ。
それが二度使っても脱水や栄養失調が原因の点滴だけですんでいるのは、私の変化を物語っている。
「それがあの薬の効果なんだろうな」
「うん。それ以外は考えられないよ。血液検査の結果、教えてくれないか?」
「すぐ持ってくる」
ある一件で人間であることを捨てた私は、人間でも妖でも、ましてや怪異でもない中途半端な存在になった。
自分で選んだ道なので後悔はないが、いつか死霊や妖以外とは一緒にいられなくなる。
穂乃を側で護れなくなる日がくるかもしれない。
だが、今は白露がいてくれる。
根拠はないが、何故か妙な安心感があった。
「…若干進行してるな」
「そうだろうな。あれだけ火炎刃を振り回したのは久しぶりだったけど、そんなに疲れてないんだ」
「おまえが後悔してないなら何も言わないが、妹を残して消えようと思うな」
「…考えておく」
血液検査の結果はあまりよくなかった。
あまり飲み物を飲まないからかいつも水分不足で、様々な要因が重なり貧血になりやすい体質らしい。
今まで気にしたことがなかった。
「…もうちょっと調べてみないと」
「噂なら消えた」
「早いな。桜良がやってくれたのか?」
「いや。消え方が不自然だ」
噂が消滅するには、ある程度の時間がかかる。
別の噂が蔓延るか桜良が噂を変えてくれない限り、1日かからず消えることはまずない。
だが、それが今おこっている。
「…つまり、近々別の噂が動き出す可能性があるってことか」
「あくまで可能性だが、考えておくべきだろうな」
点滴が終わり、腕からチューブが抜かれる。
「あんまり無理するな。あと、頬の傷が痛むようならすぐ言うように。いいな?」
「分かった。ありがとう」
頬の傷といっても、絆創膏におさまる程度の傷でそんなに酷いものではない。
「…穂乃、大丈夫かな」
携帯を確認すると、朝ご飯を食べたと写真が届いていた。
一緒に写っている白露は少し困った様子だが、空になったふたり分の皿を見て安堵する。
もう少し白露とも交流してみようと思案した。
次に目を開けたとき、見覚えのある真っ白なベッドの上にいた。
「ごめん。どうしても力尽きて寝てた」
「寝たことに関しては別にいいが、流石に無理しすぎだ」
「ごめん」
手に管が2本ついていて、気づかないうちにそんなに体力を使っていたのかと苦笑する。
「どのくらい力を使った?」
「分からない。あ、でも火炎刃は2回出した」
「……そうか」
先生が悲しそうな目をしているのは、私がどんどん人間離れしてきているからだ。
今までなら、火炎刃を一度出しては倒れていた。
特に満月近くになると霊力が激減してしまうため、使えないことも少なくなかったのだ。
それが二度使っても脱水や栄養失調が原因の点滴だけですんでいるのは、私の変化を物語っている。
「それがあの薬の効果なんだろうな」
「うん。それ以外は考えられないよ。血液検査の結果、教えてくれないか?」
「すぐ持ってくる」
ある一件で人間であることを捨てた私は、人間でも妖でも、ましてや怪異でもない中途半端な存在になった。
自分で選んだ道なので後悔はないが、いつか死霊や妖以外とは一緒にいられなくなる。
穂乃を側で護れなくなる日がくるかもしれない。
だが、今は白露がいてくれる。
根拠はないが、何故か妙な安心感があった。
「…若干進行してるな」
「そうだろうな。あれだけ火炎刃を振り回したのは久しぶりだったけど、そんなに疲れてないんだ」
「おまえが後悔してないなら何も言わないが、妹を残して消えようと思うな」
「…考えておく」
血液検査の結果はあまりよくなかった。
あまり飲み物を飲まないからかいつも水分不足で、様々な要因が重なり貧血になりやすい体質らしい。
今まで気にしたことがなかった。
「…もうちょっと調べてみないと」
「噂なら消えた」
「早いな。桜良がやってくれたのか?」
「いや。消え方が不自然だ」
噂が消滅するには、ある程度の時間がかかる。
別の噂が蔓延るか桜良が噂を変えてくれない限り、1日かからず消えることはまずない。
だが、それが今おこっている。
「…つまり、近々別の噂が動き出す可能性があるってことか」
「あくまで可能性だが、考えておくべきだろうな」
点滴が終わり、腕からチューブが抜かれる。
「あんまり無理するな。あと、頬の傷が痛むようならすぐ言うように。いいな?」
「分かった。ありがとう」
頬の傷といっても、絆創膏におさまる程度の傷でそんなに酷いものではない。
「…穂乃、大丈夫かな」
携帯を確認すると、朝ご飯を食べたと写真が届いていた。
一緒に写っている白露は少し困った様子だが、空になったふたり分の皿を見て安堵する。
もう少し白露とも交流してみようと思案した。
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