夜紅譚

黒蝶

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第2章『変わりつつある体質』

第6話

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穂乃が白露を拾ってから数日が経った。
「そろそろ白露をみんなに紹介しておこう」
穂乃に声をかけると、どきどきした様子で頷く。
《おまえは何者なんだ》
「私は折原詩乃。穂乃の姉だ。妖や怪異たちからは夜紅って呼ばれてる」
それくらいしか名乗れない。
《夜紅…噂で聞いたことがある。たしか、妖や怪異の困りごとを解決しながら悪を成敗しているという…成程、それで雰囲気が違うのか》
「雰囲気?」
「まあ、そんなところだ。もうすぐつくから自己紹介してくれ」
穂乃は力が強すぎて、私が普通の人間とは別の何かに傾いたことに気づいていない。
白露は察したのか、黙ってついてきてくれた。
「みんなここに集まってるはずだ」
久しぶりの監査室に少し緊張しつつ、ゆっくり扉を開く。
「詩乃ちゃんと穂乃ちゃんと…あれ、知らない人がいる…」
《白露だ》
「あ、式神さんだっけ?僕は瞬。今は一応地縛霊…?」
「ちび、その説明じゃ困惑するだろ。岡副陽向だ、よろしく」
《あ、ああ…》
陽向に握手を求められ、白露は戸惑いながら手を握る。
「他に半怪異の先生と放送室にいる綺麗な声の女子生徒がいる」
《ほうそう?》
「放送っていうのは、大きめのマイクを使って伝達事項を知らせるために使われるものだ」
現代のものに疎いのだろうか。
「お姉ちゃん、あのね…白露、あんまり知らないみたいなんだ。インカムもよく分かってなかったし…」
「前の持ち主がやばい奴だったとか?」
《…そんなところだ。少なくとも、今みたいに自由に外を見てまわることは許されなかった》
「そっか。ねえ、穂乃ちゃん。ちょっと白露かりていい?」
「白露がいいなら」
「ついてこいよ、白露。別に嫌なことをしようとは思ってないけど、色々案内しとく」
《分かった》
陽向がいてくれてよかった。
これだけフレンドリーに近づいていけるのは陽向だからだろう。
コミュニケーション能力がとんでもない彼なら、戸惑う白露を案内しながら会話するくらい簡単かもしれない。
「ねえ、詩乃ちゃん。あの人も捨てられたのかな?」
「中途半端に処分されかけたみたいだ。あまり詳しくは話したくないみたいだから今は聞いてない」
「そっか…」
瞬は何かを感じ取ったのか、少し複雑そうにしている気がする。
「瞬君、何かあったの?」
「あ、ごめんね。その、あんまり言いたくなかったんだけど…この前のトンネルの噂が復活しかけてるみたいなんだ」
「どういうことだ?」
瞬は穂乃と私を交互に見て、とても言いづらそうだったものの話してくれた。
「トンネルに入るとどんな願いでも叶う。ただし、願い事によってはあの世行きになるらしいって…。内容は前より酷くなってると思う」
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